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第25回:ポール・サイモン(後編)『リズム・オブ・ザ・セインツ』~『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』

~『サプライズ』の“サイモン節”にサプライズ~

 

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ポール・サイモン、アルバムのジャケットデザインも毎回個性的。

 

〈前編〉はこちら

 

 ポール・サイモンが2006年に発表した『サプライズ(Surprize)』はサプライズだった。これはシャレではない。本当に嬉しい驚きだったのだ。

 実のところポール・サイモンには、リズム嗜好になった86年の『グレイスランド(Graceland)』あたりから距離を置くようになっていった。やはりソロになった70年代の『ポール・サイモン(Paul Simon)』や『ひとりごと(There Goes Rhymin' Simon0』などのような、大雑把に言ってしまえば、サイモンとガーファンクル時代の流れをくむ音楽が好きだったのだ。
 しかしポール・サイモンは新しい音楽を創造する道を進む。
 『グレイスランド』のあと、90年には『ザ・リズム・オブ・ザ・セインツ(The Rhythm Of The Saints)』を発表。その後も『ザ・ケープマン(Songs From The Capeman)』、2000年になって『ユー・アー・ザ・ワン(You're The One)』と着実にアルバムをリリースしていった。

 そして2006年、僕が久々にポール・サイモンのCDを手に取ったが『サプライズ』だったのだ。赤ちゃんの顔が印象的なジャケット。このアルバムはブライアン・イーノが“ソニック・ランドスケープ”を制作。つまりサウンドにおいて全面参加。フォークや民族音楽のポール・サイモンと、電子音楽のブライアン・イーノという異色の顔合わせが話題だった。

 それでも聴くまでは、あまり期待はしていなかったのである。ポール・サイモンは、まるでパーティー衣裳を替えるかのように、自分のヴォーカル以外のサウンドを取り替えてきた。これまでのアフリカや南米の音楽から、今回は電子音楽へと。ザッツ・イット。それだけだと思っていたのだ。

 しかしこの『サプライズ』は僕にとってサプライズだったのである。
 まず、思った以上にサウンドがブライアン・イーノ色になっていることに驚いた。民族音楽からは真逆の方向だ。しかし、それでいながら、今まで以上にポール・サイモンらしい音楽になっていることに驚いた。

 嬉しいことに、僕はそこに70年代の“サイモン節”をすごく感じたのである。「シュア・ドント・フィール・ライク・ラヴ」などは「僕とフリオと校庭で」のようなノリ。 『サプライズ』は『ポール・サイモン』や『ひとりごと』を聴いていた10代の頃に戻ったかのように、よく聴いたものである。

 それでようやく気づいたのだが、ポール・サイモンのリズム嗜好、そしてアルバムによってサウンド・スタイルをごっそり取り替えていくやり方は、たんに表面的なものではなく、ポール・サイモン自身の音楽が成立するために根源的な方法なのだなあ、ということである。ちょうどレースのF1がエンジンを替えてさらに進化するように、新しいサウンドがサイモンの創造力を発火させる起爆剤になっている気がするのである。

 実際にポール・サイモンの発表する作品が、今日でもアルバム毎に緊張感とスリルがあるのは事実であろう。21世紀になって、かつての洋楽の偉大なアーティストたちが再び活躍しているけれども、ポール・サイモンほど昔に劣らず前向きでクリエイティブな活動をしている人は少ないと思う。
 この6月に発売になったばかりの新作『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』も“新しい作品”だった。今度は「現代作曲家ハリー・パーチの影響を受けパーチ楽器も使用」とか「“アフロ×エレクトロ”のClap! Clap!が参加」とか、またも僕の知らない衣裳をまとって登場したサイモンであるが、これまで以上にクリエイティブ、そしてここにも“サイモン節”が健在なのだからまいってしまう。

 ひっきょう、どのようなサウンド・スタイルであろうとも、ポール・サイモンの音楽は強固な存在なのだ。仮にロバート・フィリップ率いるキング・クリムゾンをバックに起用しても、“サイモン節”は健在なのではないか(笑)。

 

 

■アルバム解説

 

The Rhythm Of The Saints(『リズム・オブ・ザ・セインツ』)

ブラジルの土着的なリズムが情熱的に押し寄せるアルバム。しかしハイレゾではそれが繊細で綺麗に響く。低域の厚みも十分。ポール・サイモンのアルバムはハイレゾでとても充実したものになっていると思う。

 

You're The One(『ユー・アー・ザ・ワン』)

リズム路線がややお休みして、内省的なムードが漂う、どちらかというと昔のポール・サイモンに近いと言えるアルバムかもしれない……しかしここでもハイレゾの音は厚く、太い。

 

Surprise(『サプライズ』) 

エッセイにも書いたとおり、長年の愛聴盤がCDからハイレゾになった。44kHzという低めのスペックが逆にスピード感とワイルド感を殺していないところが好ましい。ブライアン・イーノの巧みな音作りがハイレゾでもやはり光る。

 

Stranger To Stranger(『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』)

6月に配信になったばかりの新作はエレクトロ路線の混入で、これまで以上にリズムがパワフルになった。ちょうど『明日に架ける橋』の「いとしのセシリア」のようにに、はち切れんばかりの生命力を感じる。ハイレゾは他のアルバムと同じく、厚く太い音なのは当然としても、このアルバムではさらに食い込みがよく、粒立ちのいい音が飛び出してくる。ハイレゾ時代ならではのアルバムだと思う。

 

 

Paul Simon ハイレゾ配信一覧はこちらから

 

 


 

 

【牧野 良幸 プロフィール】

1958年 愛知県岡崎市生まれ。

1980関西大学社会学部卒業。

大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。

近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。

 

マッキーjp:牧野良幸公式サイト

 
 

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数々の話題作を世に送り出してきたフライングドッグ。今回はその中でも80年代後半~90年代前半に焦点を当てて、3作品をピックアップ。それらのプロデューサー、ディレクターを務めた、現フライングドッグ代表取締役、佐々木史朗氏に制作秘話を語っていただいた。 取りあげるのはOVA『マクロスプラス』(’94~’95)、劇場作品『MEMORIES』(’95)、OVA『トップをねらえ!』(’88~’89)。当時の現場の雰囲気や、クリエーターたちの息吹を感じてほしい。

取材・構成/鈴木隆詩(ライター)

 


 

 

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制作時のエピソードを語る佐々木さん。

 

 

●菅野よう子が未来の音楽を作った『マクロスプラス』

──『マクロスプラス』のサウンドトラックは、アニメーションでは、菅野よう子さんが初めて一人で手がけられた作品ですね。

佐々木 そうですね。アニメのサウンドトラックでは、まず、溝口肇さんと一緒にやった『ぼくの地球を守って』(’93~’94)があって、その次が『マクロスプラス』です。

──佐々木さんは、菅野さんとどのようにして出会ったのですか?

佐々木 溝口さんのライブに伺って、ピアノを弾いていた菅野さんに「はじめまして」と。その時点で菅野さんはたくさんのCM音楽を手がけられていて、CM音楽界ではすでに有名人でした。才能に溢れた方だったので、『マクロスプラス』の音楽をお願いしようと思って、総監督の河森(正治)さんに菅野さんのCM音楽を聴いていただいたんです。でも、CMには基本的にバトル系の音楽はないじゃないですか。音楽性はすばらしいけど、バトル曲に関しては心配もあるというのが、河森さんの最初の反応で。僕は、他の候補を出すつもりは全くなかったので、ほとんどゴリ押ししたんですね(笑)。

──菅野さんと河森さんは、その後、一緒にいろいろな作品を手がけることになって。

佐々木 もう20年以上の付き合いですよね。『マクロスプラス』はナベシン(渡辺信一郎)が監督で、そこから『カウボーイビバップ』にも繋がっていくわけで。

──菅野さんにとっての『マクロスプラス』は、どのような作品だったのでしょうか?

佐々木 未来の音楽を作るというのが面白かったらしいです。2040年という設定で、バーチャルアイドルが流行っていて。今となっては、バーチャルアイドルはいろいろなアニメ作品に登場しますし、現実でも初音ミクが出てきたりしていますが、当時はかなり先駆的なアイディアでした。ライブでは3DCGを投影した映像が使われるという設定とか、時代をかなり先取りしていたと思います。菅野さんは、いろいろなタイプのシャロンの曲を楽しんで作っていましたね。

──シャロンの曲は4曲入りシングル「The Cream P・U・F」でまとめて聴くことができます。

佐々木 シャロンの曲には観客の洗脳というテーマが明確にあって、それを意識して作られています。山根麻衣と新居昭乃という、全くタイプの違う女性シンガーが、ひとりのキャラとして歌うという形式も珍しいですね。また、シャロンの曲では「Information High」という曲のみ、元電気グルーヴのCMJKさんが作・編曲を担当しており、歌はメロディー・セクストンという女性シンガーが担当しています。

──新居昭乃さんは劇中歌「VOICES」も歌われています。

佐々木 「VOICES」はヒロインのミュン・ファン・ローンが歌手を諦める前に歌っていた曲ということで、物語の重要なモチーフになっていました。昭乃ちゃんは当時うちのアニメの主題歌を何曲も歌ってもらっていたし、菅野さんとも知り合いだった事もあって歌ってもらう事になりました。

──サウンドトラックの演奏はイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団です。

佐々木 イスラエルフィルは、世界的な指揮者ズービン・メータとの関わりも深い有名なオーケストラです。僕らとしては、エモーショナルでいいオーケストラなので使ってみたいという菅野さんの要望もあって、テルアビブまで出かけることにしたんですね。実はレコーディングの少し前に現地で爆弾テロが起きて。今だったら中止になっていたと思うんですけど、当時は緩やかだったというか、結局、現地に向かいました。空港のチェックが非常に厳しかったのを覚えています。

──菅野さんは、オケのメンバーに非常に好かれたそうですね。

佐々木 鳴りのいいスコアを書くので評判が高いですし、本人のキャラクターもあいまって、基本的にどのオケにも好かれていましたね。英語はペラペラというわけじゃないんですけど、雰囲気だったりジェスチャーだったり、言葉以外のものを使って伝えるのがうまいというか、コミュニケーション力はとても高い方です。感覚的かつ本能的で、「どひゃ~」とか「わ~っ」とか擬音語を使って説明するのも、昔も今も変わってないです。

──レコーディングはいかがでしたか?

佐々木 ハードディスクレコーディングがない時代ですし、レコーディングしたホールはマルチテープが使える環境でもなくて、2チャンネルの一発録りでした。もともとオーケストラは、そういう録り方をしていたんですけど。それと、先ほども言った通り、イスラエルフィルは情熱的なオケなので、演奏している時の鼻息が荒いんですよ。ハイレゾでは、オケの鼻息も聴いていただきたいなと(笑)。

──当時ならではの音色もあり、オケの鼻息もありと(笑)。

佐々木 『マクロスプラス』の音楽は、時間もお金もたっぷりかかりましたけど、画期的なものになりました。菅野さんのおかげで『マクロスプラス』が今までにない新しいフィルムになったとも言えるし、手前味噌ですが、この作品によって、アニメの音楽は変わったと思っています。庵野(秀明)さんが原画をやっていて、試写を観に来た時に音楽を誉めていただいたり、業界内からの反響はすごかったですね。

 

MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK(ハイレゾ)

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●3人の作曲家がこだわり抜いて音楽を作った『MEMORIES』

──『MEMORIES』のサウンドトラックは?

佐々木 『AKIRA』(’88)をやらせていただいた繋がりで、大友(克洋)さんの新しい映画の音楽の制作を、という話がありまして。オムニバスなので、音楽も作品ごとに違う作曲家で、というのがオーダーでした。

──それぞれの作品の作曲家は、どのようにして決まったのでしょうか?

佐々木 『大砲の街』(大友克洋監督)は、こちらに話が来る前から決まっていました。菅野さんに『彼女の想いで』(森本晃司監督)をお願いして、『STINK BOMB/最臭兵器』(岡村天斎監督)は三宅純さんという、CM界の巨匠にやっていただくことになりました。映画版の『彼女の想いで』はオペラの『蝶々夫人』を土台にした作品で、劇中にオペラシーンも出てくるので、それも新たに録って。『最臭兵器』はコメディで、ハードなアクションも出てくるという幅の広い作品だったので、ユルさと激しさの両面を三宅さんにいろいろなジャンルの音楽で表現していただこうと思ったんです。

──さらにプロローグとエンディングを石野卓球さんが担当しました。

佐々木 卓球さんが大友さんの大ファンだということで、快諾していただけました。別のレコード会社からリリースされている方なので、最初はスタッフ同士の話し合いで別名義での参加ということになっていたんです。でも、『MEMORIES』がどれくらい面白いのかとか、その全貌がだんだん分かってきて、石野卓球名義でも構わないという話になって。エンディングの「IN YER MEMORIES」は各作品のサントラをサンプリングしたおもしろい楽曲で、これも当時、庵野さんに「いい仕事してる」って言ってもらいましたね(笑)。

──『彼女の想いで』のサントラは、演奏がチェコ・フィルハーモニー管弦楽団ですね。

佐々木 なぜチェコフィルだったかというと、もちろん弦や金管がすごくうまいオケだというのもあるんですが、5.1chに対応する必要があったからなんです。プラハのドヴォルザーク・ホールはマルチテープで録音できる設備があるので、5.1chに落とせる。それで、日本から西野薫さんという歌姫を伴って、菅野さんたちと一緒にプラハに出かけました。これは、僕は同行していないんですが。

──『最臭兵器』の制作はいかがでしたか?

佐々木 これは国内でのレコーディングで、三宅バンドという感じで、錚々たるミュージシャンが集まっておこなわれました。ドラムが村上“ポンタ”秀一さんと宮本大路さん、ハープが朝川朋之さん、ピアノはポンタさんのバンドPONTA BOXの佐山(雅弘)さん、トランペットはエリック・ミヤシロさん、トロンボーンは村田陽一さん、ベースは(渡辺)等さんと(高橋)ゲタ夫さん、ギターは窪田晴男さんと伊丹雅博さんという知る人ぞ知る豪華メンバーです。なんというか、独特な雰囲気の現場でしたね。

──独特というのは?

佐々木 三宅さんご自身の感覚が、まずは独特で。オシャレで先端を行く音楽をやるんですけど、脱力した感じも得意なんですよね。『最臭兵器』のサウンドトラックは、エレクトリックになったあたりのマイルス・デイビス風のテーマがまずはあって、それに加えてマーティン・デニー風の南国音楽で脱力感を出していただいたり。とにかく、いろいろな音楽が聴けるのが『最臭兵器』なんです。

──『大砲の街』に関しては?

佐々木 これに関しては直接制作にタッチしていないんです。おそらく大友さんと音楽を担当された長嶌寛幸さんが話し合いを重ねて、映像に合わせてオールシンセで音楽を付けていったんだと思います。

──『大砲の街』は全編1カットという、特殊な演出による作品でした。場面が切り替わることなく、カメラが移動していって、物語が進んでいくという。

佐々木 そうですね。フィルム・スコアリング(映像に合わせて音楽を作っていく)をしなければいけない作品だったので、大変だったのではないかと思います。『MEMORIES』のサウンドトラックは、各作曲家さんのこだわりと尽力を感じていただきたいですね。これもお金をかなりかけることになってしまって(笑)、いいものができたと思います。

 

KATSUHIRO OTOMO PRESENTS
『MEMORIES』ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK(ハイレゾ)

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●低予算のスタートから、最後はゴージャズになった『トップをねらえ!』

──『トップをねらえ!』は、今回ピックアップした3作品の中では、一番古い作品ですね。

佐々木 庵野さんの初監督作品です。いろいろなところで話してますけど、OVAということもあって、予算のないところからのスタートでして、音楽も基本的にはシンセで作って、そこに生の弦のカルテットを足すという、なんちゃってオーケストラだったんです。だからこそ、メロディをしっかりしないといけないとか、いろいろな課題がありまして、音楽をお願いした(田中)公平さんには、ご迷惑をおかけしました。

──このインタビューで庵野さんのお名前がすでに何度か挙がってますが、音楽へのこだわりは強い方ですよね。

佐々木 各楽曲に対して、こういうのがほしいと明確なビジョンを持って指示を出される方ですね。たとえば「時の河を越えて…」という曲は小松左京の『さよならジュピター』だったり、過去作品へのオマージュが多く含まれているんです。この曲をパクれというわけじゃなく、あくまでイメージ指定で(笑)。そうすると、公平さんはただ指示通りにやるのではなく、いろいろと考えを盛り込んでくるといった感じで。最初は意思の疎通がうまく行かない部分もありましたが、話数が進み、だんだんお互いの仕事のやり方が分かってくると、うまくキャッチボールできるようになっていきました。

──日高のり子さんと佐久間レイさんが歌ったボーカル曲も、既存曲へのオマージュになっていて。

佐々木 あの頃、庵野さんはおニャン子クラブにハマっていたんですよ(笑)。「トップをねらえ!~FLY HIGH~」はうしろ髪ひかれ隊を意識しているし、「元気でね」は「じゃあね」を意識して、でも、決してパロディという事ではなく。

──遊び心ですよね。

佐々木 そもそもタイトルが『トップガン』と『エースをねらえ!』の合わせ技ですからね。でも、内容はパロディ作品かと思いきや、実はちゃんとしたSFで。最初はとりあえず4話まで作る予定だったのが、6話まで作れることになったんです。しかも売れたので、お金をかけてもいいことになって。4話までは16ミリフィルムだったのが、5話と6話は35ミリなんですよね。

──もちろん音楽にも予算が回ってきて。

佐々木 生のオーケストラが使えるようになりました。ですから、サウンドトラックも後半に行くにつれてゴージャスになっています。あ、ここからお金を使えるようになったんだ、と思って聴いていただければと(笑)。

──『トップをねらえ! 音楽集』の配信版は、当時リリースされた2枚のサントラCDを新たに編集したものです。

佐々木 CDにはドラマパートも収録されていたので、音楽だけを抜き出して編集したのが配信版です。ラスト近くに、交響詩「GUNBUSTER」という曲が収録されていますが、これも聴きどころですね。それまでの曲のメロディが次々に出てきてドラマを振り返る、10分越えの長い曲です。

──最後に、今回語っていただいた3作品に共通するものがあるとすれば、なんでしょうか?

佐々木 音楽でフィルムを盛り上げていく快感が強くあった作品ということですね。『トップをねらえ!』は最初はコミュニケーションがうまくいかなかったのが、映像と音楽のキャッチボールができるようになって、シーンに音楽を当ててぴったりハマった時の快感が本当に大きかった作品です。また、こんな作品をやりたいという思いが、『マクロスプラス』や『MEMORIES』に繋がっていって。それぞれの作品の監督も、音楽に対する感覚が面白くて。そういう方々とたくさん仕事ができたのは幸せでしたね。

 

トップをねらえ!音楽集(ハイレゾ)

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【プロフィール】

佐々木史朗(ささきしろう):株式会社フライングドッグ代表取締役。1982年にビクター音楽産業株式会社に入社。営業部門で3年勤務した後、アニメーション制作のセクションへ。以来、アニメ畑を歩み続ける。2007年にJVCエンタテインメント株式会社内にアニメ専門レーベル、フライングドッグが創立。2009年には社名を変更し、株式会社フライングドッグとなる。

 

 


 

FlyingDog作品 配信一覧はこちら

 

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今年初めより、「読む音楽」をコンセプトに様々なインタビュー・連載を掲載してきた「mora readings」。その始まりの一年間を締めくくるべく、連載陣からジャンルレスに「2015年マイベスト3」を選んでいただきました。「2015年、これが心を打った!」と思うものを(時には音楽にかぎらず)大いに語っていただいております。ぜひご一読ください。

 

>>スタッフ編はこちら

 


 

松尾潔(音楽プロデューサー)

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「2015 音楽の本ベスト3」

1. 『音楽談義』
[著]保坂和志・湯浅学

2. 『ミシェル・ルグラン自伝』
[著]ミシェル・ルグラン [共著]ステファン・ルルージュ[訳]髙橋明子[監修]濱田髙志

3. 『日本歌謡ポップス史 最後の証言』
[編著]中山久民

 

3冊には順位はつけられません。買った順、読んだ順です。ここでは『音楽談義』についてお話しさせていただきますね。

2014年の暮れ、オープンしたばかりの紀伊國屋書店の西武渋谷店を冷やかしで覗いたのですが、そのとき新刊コーナーで目について購入したのが『音楽談義』。とはいえ年明けに読んだので2015年の本とした次第。

1956年生まれの小説家・保坂和志さんと、1957年生まれの音楽評論家・湯浅学さんの対談集です。1968年生まれのぼくは、洋楽好きで理屈っぽいイトコの兄さんたちの気のおけない会話を横で聞いているような、そんな親しみを感じながら読み進めました。

湯浅学さんとは、ぼくがまだ学生ライターだった90年代初頭に何度か呑んだ記憶があります。『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』誌のライター新年会で一緒に鍋をつついたっけ。音楽にかぎらず博覧強記の御仁ですが、なによりも彼の文体にはシビれっぱなしでした。ぼくくらいの世代のサブカルチャーの書き手で、彼の影響を受けている人は結構多いと思いますよ。根本敬さんたちとの「幻の名盤解放同盟」での活動も印象深いですね。近年お書きになった小説も読んでいますが、湯浅節としか呼べないグルーブを感じます。

いっぽう、不勉強ながら保坂和志さんの小説はほとんど読んだことがないのです。ただ彼のエッセイにはいくつか触れていて、ある時期の洋楽ロックに精通されていることは知っていました。

この本は音楽談義と銘打ってはいるものの、かつて若者と呼ばれたオトナふたりの青春回想記のような側面もありますね。もちろん文学についての言及もあって読みどころは多いですが、ぼくに刺さったパンチラインとして以下引用しましょう。

保坂:なぜAKBのファンはあんなにでかい顔をしているのよ? ファンというより評論家とか社会学者とか、AKBが好きだとでかい顔でいうじゃない?
湯浅:メインなカルチャーだからじゃない? それは昔から変わらない。

湯浅さんの言葉はいつの時代でも秀逸なアフォリズムたり得ることを痛感。

 

【プロフィール】

1968 年生まれ。福岡県出身。
音楽プロデューサー/作詞家/作曲家

早稲田大学在学中にR&B/HIPHOPを主な対象として執筆を開始。アメリカやイギリスでの豊富な現地取材をベースとした評論活動、多数のラジオ・TV出演を重ね、若くしてその存在を認められる。久保田利伸との交流をきっかけに90年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。その後プロデュースした平井堅、CHEMISTRYにミリオンセラーをもたらして彼らをスターダムに押し上げた。また東方神起、Kといった韓国人アーティストの日本デビューに関わり、K-POP市場拡大の原動力となる。

その他、プロデューサー、ソングライターとしてEXILE、JUJU、由紀さおり、三代目J Soul Brothersなど数多くのアーティストの楽曲制作に携わる。シングルおよび収録アルバムの累計セールス枚数は3000万枚を超す。 2008年、EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲・プロデュース)で第50回日本レコード大賞「大賞」を、2011年、JUJU「この夜を止めてよ」(作詞・プロデュース)で第53回日本レコード大賞「優秀作品賞」を受賞。 NHK-FM の人気番組『松尾潔のメロウな夜』は放送6年目をかぞえる。

近著に『松尾潔のメロウな日々』『松尾潔のメロウな季節』(スペースシャワーブックス)。

 


 

牧野良幸(イラストレーター)

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「2015年ハイレゾベスト3」

1位 J.S. Bach: Das Wohltemperierte Clavier
アンドラーシュ・シフ

自分の中ではグールドと並ぶバッハの本命、シフのECM録音 『平均率クラヴィーア曲集 第1巻&第2巻』がハイレゾでリリースは嬉しかった。ずっと聴いていられる。ほかに『パルティータ」『ゴールドベルグ変奏曲』も出た。

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2位 The 70's Collection
トッド・ラングレン

マニアックだからハイレゾでは出ないと思っていた、トッド・ラングレンの70年代のアルバムが一挙にハイレゾ化された。『Something/Anything?』は、部屋のステレオ・システムではなく、ハイレゾ・ウォークマンでヘッドフォンで聴くのが好み。

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3位 Tug Of War
ポール・マッカートニー

今年はやっぱりポールかな。前半は来日して武道館公演、後半はこのアルバムのニュー・ミックス版がハイレゾで出た。前からいいアルバムとは思っていたけど、ハイレゾで聴くと、まるで今年発表になった新作のように好きになれた。

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【プロフィール】

1958年 愛知県岡崎市生まれ。1980関西大学社会学部卒業。 大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。

 


 

日高央(ミュージシャン/音楽プロデューサー)

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「ザ・スターベムズ的LIVEベスト3」

① 6/19(金) Day Believe Dreamer Vol.1
渋谷eggman 初の自主企画+Ba.の潤が正式メンバーになって演奏やバンド感が一気にタイトになった嬉しい一夜。いつも呼んで貰ってばかりだったHawaiian6を呼べたのも嬉しかった。

② 11/14(土)〜11/15(日) CLICK OR TREAT 2015
下北沢Shelter2デイズ 無料配信+会場限定シングルのレコ発ということに加え、ファイナルにKEMURIを呼んだり、初のワンマンをしたりと、初物尽くしで全部が印象深いツアー。いくつになっても初挑戦は良い。やんないでガタガタ言うより全然良い。

③ 12/22(火) Day Believe Dreamer Vol.2 新宿redcloth
Gt.西くんのホームに初参戦ってことと、年に自主企画を2本も打つのも初の試みで印象深し。朋友のFrontier BackyardとASPARAGUSも大盛り上がりで、その余波でウチもモッシュ・ダイブの嵐。理想的なLIVEに近付けた夜。このノリを全国に持ってくのが2016年の抱負。よろしく。

 

【プロフィール】

1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

 


 

佐藤純之介(音楽制作プロデューサー)

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「2015年 アニメベスト3」

1. おそ松さん

2. 終物語

3. 食戟のソーマ

アニメ音楽の制作プロデューサーという職業柄、自分が携わっていなくとも、 放送中のアニメには大抵目を通しておりますが、その中でも特に印象に残ったのがこの3作品。1位の『おそ松さん』ではED主題歌、3位の『食戟のソーマ』では劇伴のお手伝いさせていただいておりますが、 その事を除いて1視聴者として毎週放送を特に楽しみにしていたのがこの3つのアニメです。

 

1. おそ松さん
第1話冒頭からマシンガンの様に乱射される圧倒的なギャグとパロディの応酬に30分がわずか5分程に感じてしまう程の衝撃を受けた。原作『おそ松くん』では没個性化することで物語を綴っていた六つ子達は21世紀に強烈な個性を得て暴れる様は 爽快感すら感じ、矛盾の数々も「これでいいのだ」の精神でフラグ回収してしまう強引さに脱帽。今の時代に必要なのは「失敗を恐れない強引さ」なのかもしれない。

2. 終物語
化物語から続くシリーズの続編。主人公阿良々木暦(CV.神谷浩史)による明快且つ早口で複雑な用語を含んだ文学的なセリフ回しは一言も聞き漏らさないでいようとするユーザーを無意識のうちにどっぷりと物語の世界観に引き込んでしまう。未来派やロシア構成主義、コラージュを意識したような特殊なアニメ演出、魅力的でエロティシズムに溢れる女性キャラクター達に翻弄される主人公の描写……。これはアニメというよりは、耽美なアート作品ではないだろうか。作品の続きが早く知りたい。来年公開の劇場版作品が非常に楽しみである。

3. 食戟のソーマ
原作漫画に忠実に物語が進行している、つまり”ネタバレ"している状況にも関わらず、人物描写や演出のおかげで毎週ワクワクしながら見ることが出来た。コミックスで読んだ時の印象のまま生き生きと表現されているし、何より主人公たちが作る料理が非常に美味しそうに見える、非常に優秀な「飯テロ」アニメであった。連載している週間少年ジャンプのテーマである「友情」「努力」「勝利」を忠実に演出、手に汗握る展開が多く、大人でも楽しめた。是非2クール目を作って欲しい作品。

 

佐藤さんが制作に携わった『おそ松さん』ED主題歌

SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~

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今年初めより、「読む音楽」をコンセプトに様々なインタビュー・連載を掲載してきた「mora readings」。その始まりの一年間を締めくくるべく、スタッフサイドも「2015年マイベスト3」を選ばせていただきました。有数の目利きである評論家、バイヤー、ライターの方々もゲストにお迎えし、「2015年、これが心を打った!」と思うものを一挙紹介。ぜひご一読ください。

 

>>連載陣編はこちら

 


 

天辰保文(音楽評論家)

mora readingsでのお仕事:エルヴィス・コステロのハイレゾ作品レビュー

 

「ステレオタイプというか、誰もが考えるような大人ばかりじゃないから、世の中は楽しいのだと、思わせてくれるBest3」

 

『ビフォア・ディス・ワールド/ジェイムス・テイラー』(ユニバーサル)
子供の心を何処かに持つ大人たちに。この人とのインタビューが、ぼくにとっての2015年の最大の出来事だった。その前日、遠足を控えた小学生のように寝られなかった。

(購入はこちらから)

 

『ブルーノート・カフェ/ニール・ヤング』(ワーナー)
87年から88年にかけてのライヴをアーカイヴ・シリーズで。こんなにも強烈なロックをいまごろ、それも何かのついでのように出してくるんだもの、この人ったら。

(購入はこちらから)

 

『オウ・マイ・グッドネス/ドニー・フリッツ』(ディスク・ユニオン)
こういう友人が、一人でも持てたら、もう満足の人生だなあと、思ったりもする。呟くような素朴な歌声に、ただただ、泣ける。
※配信なし

 

【プロフィール】

1949年、福岡県生まれ。音楽評論家。音楽雑誌の編集を経て1976年独立、それ以降、新聞や雑誌を通じてロックを中心とする評論活動を行っている。レコードやCDのライナーノートも多数手掛ける。著書に「ロックの歴史~スーパースターの時代」、「ゴールドラッシュのあとで」、「音が聞こえる」等がある。

 

 


 

北中正和(音楽評論家)

mora readingsでのお仕事:ボブ・ディランのハイレゾ作品レビュー

 

「激動の世界の静かな出会いのベスト3」

 

谷川俊太郎+谷川賢作『家族の肖像』
2015年は谷川ソングにはまった年でした。もう10年以上前に発表されたアルバムですが、いまだに古びない輝きとせつなさいっぱいの名作です。
※配信なし

Bassekou Kouyate & Ngoni Ba 『Ba Power』
2015年のワールド・ミュージックで最も話題になったマリ共和国の弦楽器ンゴニ奏者バセク・クヤーテのグループの最新アルバム。ロックとも親和性があります。
※配信なし

映画『禁じられた歌声』
マリ共和国北部で数年前に起こった過激派の占拠をテーマにした映画です。暴力的な描写に走らないで、寛容の大切さを淡々と描いているところに共感しました。

 

【プロフィール】

音楽評論家。東京音楽大学非常勤講師。DJ。新聞、雑誌、放送、ネットなどで日本を含む世界各地の音楽を研究、紹介している。最近インタビューして印象に残ったのは、ジェイムス・テイラーと谷川俊太郎。近年はウェブマガジン『ERIS』で日本の古代の音楽に研究にも取り組んでいる。著書『ロック』『にほんのうた』『毎日ワールドミュージック』他、編著書に『世界は音楽でできている』『細野晴臣 エンドレス・トーキング』『事典 世界音楽の本』他多数。

公式サイト『wabisabiland』: http://homepage3.nifty.com/~wabisabiland/

 

 


 

ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

mora readingsでのお仕事:BOØWYのディレクター(当時)・子安次郎さんへのインタビューなど

 

えっと、今年は劇場型スタイルによるご飯屋エンタテインメントにハマった1年でした。食のエンタメ=美味しさは当たり前であって、コンセプト設定、料理を出すバランス&タイミング、トークによる絶妙なおもてなしがライブやコンサートと肩を並べるカタルシスがあるなと気がつかされたのでした。肉マイスター田辺晋太郎氏とご一緒したお店がほとんどですが、予約の取れないお店として有名な吉祥寺 肉料理=肉山、市ヶ谷に店舗を移された最強の焼肉屋=炭火焼肉なかはら、美味しさはもちろん歯に衣着せぬ接客もツボな東十条のやきとん=埼玉屋は殿堂入りとして、今年インパクトを受けた劇場型のご飯屋さんをジャンルを超えてセレクトさせていただきました。

 

1. 81【広尾/レストラン】
通常レストランでは使わない御影石をテーブルに起用し、店内は黒で統一。生と死をテーマに、分子ガストロノミー料理が強烈な印象を与えてくれた劇場型レストラン。厨房はステージであり、12名限定のコの字カウンターはアリーナ最前席。名物な逸品“カルボナーラの再構築”など、良質な素材による驚きの創造と破壊表現はまさにアート。料理に合わせてお酒のペアリングはもちろん、専属DJがセレクトする店内BGMにも感動しました。 http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130703/13186404/

2. かぶと【池袋/うなぎ】
おまかせコースで天然物と養殖の食べ比べに舌鼓。天然物は何度か通わなければ頂けないという代物だが格別な逸品。串焼き、白焼き、蒲焼きを蒸すのではなく焼きで、オススメな日本酒を頂きながら味わう至福のひととき。ひとくせもふたくせもある店主から「この味がわからなかったら死んじまいな!」と罵倒されながら会話を楽しむのも一興。まだ動いている鰻の心臓をお酒で流し込んだり、大豆の香りがしっかり伝わる豆腐も美味でした。 http://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13016660/

3. きになるき【渋谷/和食】
店内では常にライブ映像が流れ、常連に愛されているお店。カウンター10席な小料理屋。高級感はないが、店主が築地から毎朝仕入れる素材の良さに定評があり、日々工夫した料理を楽しませてくれる。レアな焼酎とあわせて、甘いしょうゆで頂くまぐろの刺身が高級店の寿司屋なみに絶品。なのにリーズナブル。おすすめのコース料理&呑み放題が5000円。これも気配りがあってトーク上手な大将がひとりでやられている努力のたまものですね。 http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13168864/

 

【プロフィール】

東京都出身。Yahoo!ニュース、J-WAVE、ミュージックマガジンなどで活躍中。著書は『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社) Twitterアカウント: @fukuryu_76

 

 


 

金田謙太郎(ヴィレッジヴァンガード、インフォガレージその他)

mora readingsでのお仕事:ウェディングソング特集のセレクトとエッセイの寄稿

 

「なんでもベスト3」
悩みに悩んで悩みすぎたので、ジャンル分けや縛りを諦めて、頭に浮かんだ順で、今年グッと来たものベスト3です。

 

(映画) 『マッドマックス 怒りのデスロード』
「映画とは写真が動いたもの。テレビとはラジオに絵がついたもの」とは名著『歩くような速さで』での是枝裕和監督の言葉ですが、「活動写真」であろうとする事、映画の快楽のコアを徹底的に真摯に突き詰めたらこれほどの傑作になるとは!という驚きと喜びを与えてくれた事にただただ感謝して映画館に通うこと25回。原典にあたったり原点に立ち返るには情報が溢れに溢れていてアップアップしている僕のようなライトな映画ファンにとってはこれこそが「原典」と言い切りたくなってしまいます。が、これを期にちゃんと原典にあたります……。『メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロード』も併せて。

 

(ゲーム) 『UNDERTALE』
「In this RPG, you don’t have to kill anyone.」の謳い文句は伊達じゃない。「敵を倒して自らが成長してゲームを進める」というRPGのルールを更新するべく、特に一部の90年代日本産RPGによる果敢なトライ&エラーがもたらした素晴らしき成果のひとつ(制作者は日本のRPGのファンであることを公言している)。すべての敵を許す事(和解する事)も、あるいは全ての敵を殲滅することも出来、どちらにも相応のリスクとリターンがあるというシビアさがありつつも可愛らしくファンタスティックなルック。厨二に淫さない節度ある世界観も好み。BGMも素晴らしい。ここ数年、海外のインディーズゲームはとてもおもしろい。

 

(書籍)『ROOKIE YEARBOOK ONE』
ことポップカルチャーにおいては、いつだって若い方が正しい。これは絶対のルール。今年のベストブックである素晴らしい素晴らしい『ヤング・アダルトU.S.A.(長谷川町蔵・山崎まどか著)』にて紹介された、無数の素晴らしくてナイスチョイスなあれこれの中でも飛び抜けてツボを付かれた1冊。この本においては中年は余計な事を書いてはいけない気がする。編集長のタヴィ・ケヴィンソンと10代の少女たちによるこの本のコラージュ、写真、インタビュー、対談、要はこの本を構成する何もかにもに静かに驚嘆静かに通読が正しいと思うのです。

 

【プロフィール】

ヴィレッジヴァンガード下北沢店およびインフォガレージのスタッフとして、音楽カルチャー全般の企画・販促等を行う。バイヤーとしてはSotte Bosseや→Pia-no-jaC←の作品をヒットさせ、コンピレーションアルバム「DISNEY ROCKS!」シリーズのプロデュースや、スクウェア・エニックスによるゲームミュージックのアレンジコンピレーションアルバム「SQ」シリーズの協力も手がける。

 

 


 

一志順夫(mora readings)

 

「BEST ALBUM」
セルソ・フォンセカ『LIKE NICE』

(購入はこちらから)

ブラジルのSSW4年ぶりの新作。名盤『スローモーション・ボサノバ』と比べると地味ではありますが、滋味溢れる歌とサウンドを聴くと恰も鄙びた温泉での湯治気分に浸れました。

 

「BEST MOVIE」
○『海街diary』

『海街diary』サウンドトラック
通常ハイレゾ

「映画は女優で観る」派なので、4人の豪華女優陣競演は贅沢三昧、是枝監督の現代版「細雪」といっても過言でない抑制された演出に平伏。

 

「BEST LIVE」
ディアンジェロ IN ZEPP TOKYO 2015/8/18

(最新アルバム『Black Messiah』 購入はこちらから)

JB~EW&F~プリンスといったブラックエンターテイナーの伝統芸と真髄を余すところなく体現した怒涛のパフォーマンスにただただ圧倒。3月の再来日も楽しみです。

 


 

長谷弘一(mora readings)

 

「今年時間を費やした音楽ではないベスト3」

① 金曜ドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』 TBSテレビ
② 『集団的自衛権と安全保障』(豊下楢彦・古関彰一) 岩波書店刊
③ FIFAクラブワールドカップJAPAN 2015 FCバルセロナ

 

①については、今年もドラマ多数観ましたが、個人的には“のだめ”ではない、ダークな上野樹里が好きで、『アリスの棘』も良かったのですが今年度はこのドラマにはまりました。まだ最終回のHDを削除できてません。意外に小栗くんも好きなんですよね(笑)

②については、安部政権とんでもないという昨今、集団的自衛権がいかに憲法を曲げようとしているか、安部総理がいかに嘘をついているかを、極めてわかりやすく解説した新書です。数回読みました。若い方に読んで頂きたいです。

③最近のネタですが、ナマのバルセロナは言葉にできない凄さでした。メッシのプレイは人間業とは思えませんが、このクラブは明らかにスペイン代表より強いと思います。異次元のフットボールを実現しています。個人のスキルと組織力に感服した次第です。

 

ドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』オリジナル・サウンドトラック
通常ハイレゾ

 


 

安場晴生(mora readings)

 

「2015これを見るまでは死ねなかったベスト3」

1.熱海殺人事件@紀伊国屋ホール
2.スター・ウォーズ/フォースの覚醒
3.聖飢魔Ⅱ@氣志團万博2015

 

つかこうへい事務所は1982年「蒲田行進曲」をもって解散。大学に入学した1983年当時、大阪芸術大学は、いのうえひでのりさんの劇団☆新感線、京都大学は辰巳琢郎さんのそとばこまち、同志社大学はマキノノゾミさん、岡村俊一さんの第三劇場。こぞってつか芝居をカバーしていました。そして生瀬勝久、渡辺いっけい、筧利夫、キムラ緑子、古田新太といった大学生スターがつか芝居で跳梁跋扈していました。関西学生演劇の「熱海殺人事件」は何ヴァージョンもみていてDNAとして刷り込まれていますが、本物を見るのは初めてです(一応、阿部寛ヴァージョンは亜流としておきます)。

2015年紀伊国屋ホール。66歳風間杜夫さんと62歳平田満さんのいのうえひでのりさん演出「熱海殺人事件」。「間だの芸だのいらない。芝居はF1レース。0.01秒間違えると死ぬという真剣勝負を観に、客は来る。金を払って車庫入れを観に来る客はいない」というつかさんの言葉を裏切らない、圧倒的な熱海殺人事件でした。

 

STARWARS EP7は、あのテ―マとタイトルバックだけで感涙。

 

聖飢魔Ⅱは閣下が棺桶から登場した瞬間に感涙。前が見えないww ほんま生きててよかったです。

 

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック
通常ハイレゾ

 

ベストアルバム『XXX -THE ULTIMATE WORST-』
購入はこちらから

 

 

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新連載「Younger Than Yesterday~ハイレゾで蘇る巨人たちの足跡~」は洋楽を中心にハイレゾで楽しむことのできる「名盤」の数々を各分野で活躍する音楽ライター、評論家の方々に語っていただくシリーズです。歴史的文脈や古今東西の作品との見えないつながりなど、専門家ならではの「深い」楽しみ方を貴方にご提供。ぜひダウンロードした音源とともに、テキストをお楽しみください。

 


 

~この一枚を聴く~

The Best of The Cutting Edge 1965-1966
The Bootleg Series, Vol.12

通常・36曲通常・111曲
ハイレゾ・36曲ハイレゾ・111曲

 

 ボブ・ディランは正規のアルバムとは別に25年ほど前からブートレッグ・シリーズというアルバムを出し続けている。未発表曲や別録音の数々を次々に蔵出ししているシリーズである。

 その最新盤の第12集『ザ・カッティング・エッジ 1965-1966』は、市販されているスタンダード・エディション(CD2枚組)、デラックス・エディション(6枚組)の他に、18枚組という気の遠くなりそうな通販限定セットもある。

 未発表曲や別録音は残りものだから、一般論として、熱心なファンには興味深くても、正規盤よりおもしろいことはまれ、というのが常識だろう。しかし天才ボブ・ディランにその常識は通用しない。

 なにしろ彼は、デビュー以来ずっと、とんがった音楽を大量に作り続けてきた人である。中でも1965-1966年は「ライク・ア・ローリング・ストーン」「雨の日の女」をはじめ、ロックの歴史を変えることになる作品が格別に多かった時期として知られている。その時代の未発表音源がごっそり発表されたのだから、聴かずにはいられない。

 代表曲の「ライク・ア・ローリング・ストーン」1曲の別テイクだけでCD1枚分の約65分もある。最初はワルツになるかもしれなかったこの曲が、スタジオ・セッションを続けていくうちに、どんどん変化していく。

 歴史的な名曲が、どのようにして発表されたヴァージョンになっていったのかを、具体的にたどれるのだからたまらない。リズムの組み合わせを工夫するたびに、曲の印象ががらりと変わる。あまりの変化にただただ驚いて、なるほど天才の感覚とはこういうものなのかと思う。

 スタジオでは、発売されたヴァージョンをレコーディングした後も、新たなテイクが次々に録られていく。現場ではみんなテンションが上がっているので、いま録ったものが最良とは必ずしも即座に冷静に判断できないからだ。それに、いまのはよかったと思っても、もっといい演奏ができるかもしれないという思いに限度はない。

 もっともっとという気持ちにかられることは、何もレコーディングの現場にかぎったことではなく、どんな仕事にもあることだろう。だから人は前に進めるとも言えるし、それで壮大な無駄を重ねてしまうこともあるとも言える。

 コンピュータ制御で楽器のパートごとに音を作っていく現在主流のレコーディングとちがって、このときは全員「セーノ」で演奏するスタジオ・ライヴ・レコーディングである。長引けば疲れが出て、ミスが起こりやすい。新しいアイデアに熱中できるのも最初のうちだけのことが多い。 「ライク・ア・ローリング・ストーン」の場合は、テイク15まで録音を続けたが、スタジオで完演できたのはわずかで、曲の雰囲気にふさわしいとして採用されたのは結局テイク4のヴァージョンだった。

 この事実を知ると、なにかもう人という生き物の業のようなものさえ感じる、といえば大げさすぎるか。

 この曲のレコーディングには、他にもいろいろなドラマが隠されている。

 特に有名なのは、アル・クーパーがハモンド・オルガンで参加することになったいきさつだ。まだかけだしのミュージシャンだった彼は、当日、あこがれのボブ・ディランのレコーディングの見学を許されて、スタジオに来たにすぎなかった。

 しかしオルガン奏者がピアノの前にすわったのを見た彼は、プロデューサーに無断でスタジオの中に入りこみ、オルガンを弾いた。プロデューサーは彼にやめさせようとしたし、録音も消そうとしたが、ボブ・ディランがその音を気に入ったために、採用されることになった。

 アル・クーパーの横紙破りの行動と、ディランの判断がなければ、「ライク・ア・ローリング・ストーン」全編を通じて流れるオルガンの音はなかったわけだ。歴史に「もし」は禁物と言われるが、仮にオルガンを他のミュージシャンが演奏したとしても、別の音やフレーズが弾かれて、ちがう印象の作品に仕上がったにちがいない。

 『ザ・カッティング・エッジ 1965-1966』をハイレゾの生々しい音で聴いていると、まるで自分がタイム・スリップして、1965年のニューヨークのレコーディング・スタジオのブースで見物しているような気分が味わえる。

 高音質のハイレゾが歌声の豊かさを味わったり、繊細な生楽器の響きをたどったり、凝った音作りの音楽を分析的に聴いたりするのに向いていることは言うまでもない。

 しかしボブ・ディランのこのアルバムの音楽は、それとは対照的な方法で作られている。歌声はざらついて荒々しく、演奏はスタジオ・ライヴの一発録りが多く、完成度より気迫が勝っている。

 ロックは電気楽器のノイズ成分まで含めて成立する音楽なので、その美学は古典的な意味での音楽の「美しさ」とは、必ずしも一致しない。別の角度から見れば、ロックはそのノイズ成分に価値を与えて、音楽の「美しさ」の範囲を広げた音楽とも言える。今回聴いて気付いたのは、ハイレゾがロックのそうした生々しさを見事に引き出す力も持っているということだった。

 このアルバムの音楽が生まれた60年代中期は、世の中に目を向けると、東西の冷戦が緩和する一方で、ベトナム戦争が拡大し、公民権運動が新たな進展をみせ、学園闘争やヒッピーの動きが急浮上するなど、社会が大きく揺れ動いた時期だった。南北格差の拡大や、戦後のベビーブーマー、いわゆる段階の世代の成長にともなって、産業構造の変化がはじまり、消費化社会が到来しつつあった。若者だけが変化を求めたのではなく、時代が変化を必要としていたのだ。

 変化には希望だけでなく、痛みや混乱もつきものだ。ボブ・ディランのこの時期の音楽は、まるでそんな現実に呼応するかのように、混沌として幻想的だった。また、世の不条理に対する怒りやいらだちの感情も表れていた。

 それを具体的な音にしたのが、彼のざらついた歌声だったり、マイク・ブルームフィールドの鋭利なエレクトリック・ギターだったり、アル・クーパーの辛口のオルガンだったりした。
 音を極力加工しない状態のままの演奏をハイレゾで聴くと、そんな響きがストレートに増幅されて伝わってくるような気がする。

 それにしても『ザ・カッティング・エッジ 1965-1966』は聴きどころの多いアルバムだ。

 ボブ・ディランのコンサートに一度でも足を運んだことのある人や、ライヴ・アルバムを聴いたことがある人は、彼がコンサートのたびにメロディを大きく変えてうたっていることをご存知だろう。有名な曲でも、自分が覚えている歌詞が出てくるまで、どの曲がうたわれているのかわからないことがしょっちゅうある。

 毎晩ライヴをやる自分に飽きないために、彼はメロディを変えているのだろうとぼくは思っていたが、今回、さまざまなテイクを聴きくらべると、レコーディングのときもそうだったことがわかった。

 ライヴほど大幅に変わることはさすがに少ないが、それでもキーがちょっと上がるだけで、曲の印象が劇的に変化する。「ジョアンナのヴィジョン」のテイク7や「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」のテイク4などは、オリジナルで発表されたものとはまったくちがうアップ・テンポなロックンロール・ヴァージョンだ。「廃墟の街」にいたっては、2日間ちがいのレコーディングで声までちがっている。

 途中でまちがえて終わる曲は、聴く前は、未完成な曲を聴いて何が面白いのだろうと甘く見ていたが、絶え間ない試行錯誤が彼の音楽を推し進めていく過程を追体験してみると、ますます彼のすごさが実感できるようになった。

 他にもザ・ホークス(ザ・バンド)との初期のセッション、ジョン・セバスチャンの参加曲など、珍しい録音がめじろ押しで、つい伝記本に手が伸びたりする。ああ、時間がいくらあっても足りない。

 


 

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ボブ・ディランのハイレゾ音源はこちらから

 


 

【執筆者プロフィール】

北中正和(きたなかまさかず)

音楽評論家。東京音楽大学非常勤講師。DJ。新聞、雑誌、放送、ネットなどで日本を含む世界各地の音楽を研究、紹介している。最近インタビューして印象に残ったのは、ジェイムス・テイラーと谷川俊太郎。近年はウェブマガジン『ERIS』で日本の古代の音楽に研究にも取り組んでいる。著書『ロック』『にほんのうた』『毎日ワールドミュージック』他、編著書に『世界は音楽でできている』『細野晴臣 エンドレス・トーキング』『事典 世界音楽の本』他多数。

公式サイト『wabisabiland』
http://homepage3.nifty.com/~wabisabiland/

 

 

 

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