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津田直士のトピックス

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moraのお送りするDSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』が配信中。単なる名曲のピアノ演奏作品ではなく、ひたすら"心の安らぎ"にフォーカスし、未だかつて世の中に存在しなかったほど優しいタッチで演奏された全12曲です。あえて曲間の無音部分が無い "ギャップレス再生"を活かした作品作りを行い、結果として「安眠」に適した……「最後まで聴けずに眠ってしまう可能性の高いアルバム」が完成。moraではこれを記念して同作のプロデューサーである津田直士さんへのインタビューを実施。後編ではボーカリストとして参加した「MIA CRYSTAL」さんを迎え、制作中の様子について語っていただきました。

>>前編はこちら

 


 

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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FLAC / DSD

 


 

――それで、今回のアルバムに合ったボーカリストの方というのは……?

津田 はい。究極に優しい、というピアノのスタイルは決定しているわけですから、そのピアノの持つ雰囲気に合う声や表現力を持っているボーカリストを……と考えて、すぐに最適なシンガーが浮かびました。 それが『MIA CRYSTAL』さんです。 彼女は『井上水晶』というシンガーソングライターとしても活動していて、僕は一年ほど前からその声にずっと惹かれていたんですね。 それに、以前ライブを観た時の優しくて穏やかな人柄も印象に残っていて、最適だな、と感じたので、すぐに連絡をとって内容を説明したところ、快く引き受けてくれました。

――今日はMIAさんもいらしてるので、ぜひ参加して下さい。

MIA こんにちは。よろしくお願いします。

――透明感があってとても暖かい声が印象的でした。

MIA わあ、ありがとうございます。

津田 デモレコーディングしてみたら僕のイメージにぴったりだったので、すぐに制作をスタートしました。

――MIAさん、いかがでしたか?レコーディングに参加されて。

MIA そうですね、私はいつもシンガーソングライターとして自分の作品を表現しているので、今回はまず最初に「ああ、歌詞がないんだ」と思いました。

津田 あはは、そうだよね。 「どう歌いましょう?ア~ですか?ウ~ですか?」って訊いてたもんね。

MIA ああ、そうでした! それと、津田さんがイメージしている声を、自分なりにどう発声してどう表現すれば良いのか、試行錯誤しました。

津田 僕はね、試しに歌ってもらった瞬間、「ああ、声はイメージ通り、ぴったりだな」って思った。 あとは強さをどうするか、メロディーをどう歌うか、だったよね。考えたのは……。

MIA そうなんです。それに、あの声って、自分の歌い方のレパートリーをもとにして、新たに探して見つけた声だったんです。

 

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津田直士さん(左)とMIA CRYSTALさん(右)。

 

――歌う上で「安眠」というテーマはいかがでしたか?

MIA はい。そこは安眠というより、津田さんから「お母さんが赤ちゃんを優しく抱っこする感じで」と言われたイメージを大事に表現してみたんですが、それが幸いちゃんと「安眠」につながったようでした。

――レコーディング中の苦労とか、ありましたか?

津田 「安眠」というテーマのために、今回はちょっと特殊なやり方でレコーディングしたんです。 今回、曲間がないですよね? それと同じ意味で、メロディーとメロディーのすき間がほとんど無いように工夫してボーカルをレコーディングしたんです。

MIA そう、そう。試行錯誤の結果、『互い違いレコーディング』をあみ出しましたよね。

津田 ね。あと、眠くなったり(笑)

MIA あー!ありましたね。(笑) もちろん、ずっとではないですけれど……。 「ムーンリバー」を始めとして、今回レコーディングしたのが、私の好きな曲ばかりだったんです。 私自身、クラシックピアノを長い間やっていましたし。 だから、歌いながら「何て美しいメロディーなんだろう……」って感動してレコーディングに臨んでいたんです。でも、場所によっては歌い方や表現を工夫しながら何度も歌い直したりすることもあって、そんな時に何故か妙に眠くなったりして……(笑)

津田 あはは、実は今回のアルバム、ピアノの調律が444Hzと、普通より少し高めなんです。 そうすると聴いた人がとてもリラックスできる周波数が出るんですよね。 さらにその上で、僕なりに安眠するような『究極に優しいピアノ』で演奏しているので、MIAちゃんが眠くなるのはしょうがない。(笑) 決してボーカルレコーディングなのにMIAちゃんの気が緩んでいる……というわけではないです。(笑)

――うちの制作担当者が「アルバム全部聴いてみる」って言って、実際に途中で眠っていましたから……(笑)

津田 あはは、そうでしたか。 僕も……レコーディングの後、音の細かい調整をする編集という作業をするんですが、その作業中は、本当にひたすら眠気との闘いでした。(笑)

――それにしても、津田さんのイメージ通りのボーカルがレコーディングできて良かったですね。

津田 そうなんです。先行してクラシック5曲でMIAちゃんのボーカルを聴いているうちに、他の曲をどうするか、イメージが湧いてきまして。

――そういえばクラシックの5曲が決まったところで、さっき話が止まってましたね。(笑)

津田 僕の究極に優しいピアノにMIAちゃんのボーカル……となると、クラシックだけではなく、ポップスのスタンダードナンバーもありだな、と思いまして、僕なりに心に優しい名曲を選んでみたんです。 早速これもまたピアノのデモレコーディングを試してみたら、クラシックの5曲と全く違和感のない音になったので、これはいけるな、と。

――MIAさんのボーカルも歌詞がないためか、全曲ちゃんと同じテイストですよね。

津田 はい、その通りです。 試しに何曲かメドレーとしてつないでみたら、とてもきれいな流れになりまして、安心しました。 そして、10曲が決まったところで曲順を考えまして、さらにオリジナルなピアノフレーズでつなぎたい……と思った2つの場所に僕のオリジナル曲を配置しまして、全体の流れが決定したわけです。

――津田さんのオリジナル曲も素敵でした。

津田 ありがとうございます。

――安眠に最も適したアルバムの完成ですね。

津田 はい。無事マスタリングも終わったあと、完成したアルバムを流しながら、MIAちゃんと乾杯したビールが美味しくて!!

――ビールも入って眠くなりませんでした?(笑)

MIA 嬉しくて、さすがに眠くはなりませんでした(笑) 大好きな曲がいくつもあったので、改めて収録した曲の素晴らしさを津田さんと語り合いましたね。

津田 あ、そうそう。 このアルバムは、安眠だけでなく、心を癒して優しくしてくれるアルバムでもあるので、それぞれ自由に楽しんで頂けたら、と思うのと、MIAちゃんが言ったようにメロディーがとても美しい名曲を僕なりにちゃんと選んで創りましたので、純粋に音楽を楽しんで頂けたら、なお嬉しいです。

――確かにそうですね。人間関係などで心が疲れた時などに聴くと、とても癒されそうですよね。

津田 はい。そんな風に聴いて頂けるのは、僕が最初創ろうと思ったアルバムのイメージそのものなので、とても嬉しいです。

――今回はお二人にたくさんお話しして頂き、本当にありがとうございました。

 


 

【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

FB(Fan Page) : https://www.facebook.com/tsudanaoshi
Twitter : @tsudanaoshi
ニコニコチャンネル:http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi

【連載】

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MIA CRYSTAL

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福岡出身。 3歳からクラシックピアノを習い始め、 6歳から作曲を学ぶ。 11歳から14歳まで中国・北京に暮らす。 その後、16歳からシンガーソングライターの道へ。 2012年6月に上映した、東映アニメーション映画 「虹色ほたる~永遠の夏休み~」の劇中歌として、 松任谷由実さんの「水の影」を歌う。 2014年、慶應義塾大学卒業。おもに関東圏でおこなうライブ活動の他、 テレビ・ラジオ出演、CMソングへの参加、 有名アーティスト楽曲のコーラスなどの経験を積みながら、オリジナルソングでのメジャーデビューを目指し、精力的に活動中。

 

 

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■津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介していきます。

 

File09. 「見上げてごらん夜の星を」(作曲:いずみたく)

 

※津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています

 

今回は いずみたくさんが生んだ名曲 「見上げてごらん夜の星を」をご紹介します。

この曲はもともと、同名の夜間高校生の青春を描いたミュージカルのために創られた作品で、初演は1960年。台本・演出の永六輔さんもまだ20代、いずみたくさんはこの作品がミュージカル処女作ということですから、戦後日本、最初期のエンターテインメント、ミュージカルの先駆けですね。
そんなミュージカルの劇中主題歌であるこの曲が、いずれ日本の名曲のスタンダードになるわけです。ミュージカルに懸けたお二人の意気込みとエネルギーに感動します。

素晴らしいミュージカルだからでしょう、日本のミュージカルのスタンダードとなり、何度か再演もされています。
その最初の再演が1963年、坂本九さんの熱い希望から実現した坂本九主演による公演で、この時オリジナルの「見上げてごらん夜の星を」がシングルレコード化され、高い評価を得て第5回日本レコード大賞の作曲賞を受賞します。

既に「上を向いて歩こう」が大ヒットしていた坂本九さんですが、この1963年は「上を向いて歩こう」がアメリカのビルボードで3週連続ヒットとなった記念すべき年でもあります。
その笑顔のそのものの、優しさ溢れる歌で多くの人の心を明るくした坂本九さんは、歌の他にも俳優や司会など幅広く活動する当時の大スターでありながら、福祉活動、慈善活動を積極的に行うなど、人格者としても尊敬される存在でした。
しかし残念ながら1985年の日本航空123便墜落事故に遭遇し、43才という若さでこの世を去りました。
残されたこの「見上げてごらん夜の星を」や「上を向いて歩こう」、「明日があるさ」など数々の作品はスタンダードとなって未だに歌い継がれています。

「見上げてごらん夜の星を」は、発表10年後のフォーリーブスによるカバーから平井堅や槇原敬之によるカバーなど、非常に多くのアーティストやシンガーによるカバー作品が発表されています。作曲をしたいずみたくさんも生涯で1万5000作もの作品を残した素晴らしい作曲家で、「太陽がくれた季節」や「世界は二人のために」、「ふれあい」などは、僕の大好きな作品です。

それでは早速、名曲としての魅力を確認していきましょう。
 (※以降、メロディーは移動ドで音階を表します)

まず最初は「ソーミーミミーミファソー…」と美しく上がるメロディーを、泣きたくなるような、甘く切ない和声が支えます。
聴いている人がなぜそういう気持になるのか?その理由は2つ目の和音にあります。

本来マイナーつまり「ラ・ド・ミ・ソ」であるべき和音が、メジャーつまり「ド♯」の音を含む「ラ・ド♯・ミ・ソ」という和音になっているからです。和音を構成する「ド・ミ・ソ」の次が「ド♯・ミ・ソ」になっているわけです。このコンビネーションが絶妙なんですね。
しかも、よく見るとここまでの4小節で常に「ド♯」が重要な役割を果たしています。

そして「ファ」よりひとつ高い「ラ」の高まりを持って「ラソファーファ」とメロディーが降りてきて 今度は「レーレ♯ーミー」と半音が印象的なメロディーで上がっていきます。
続いて下の「ラソ」から始まる安定感のある「ラソレーミファファーソミーー」というメロディーを、和声が暖かく包みます。
ところがそのあと突然、切ない感じの和声が響き(0:35)その和音に支えられながら「ドドシ」というメロディーが低い「ラ」へ降り、一気に高い「ラ」へと昇ります。ここはこの曲のクライマックスだといえるでしょう。
そして、このクライマックス、メロディーでいうと「(低い)ラー(高い)ラー ミファソーソファーー」 を支える和音は、テーマのメロディー、歌詞も「見上げてごらん」の「ん」にあたる部分と同じ和音です。

そう、最初のところで
~ 本来マイナーつまり「ラ・ド・ミ・ソ」であるべき和音が、メジャーつまり「ド♯」の音を含む「ラ・ド♯・ミ・ソ」という和音になっている ~
と説明したあの和音です。
どうやらこの曲で表現したかったいずみたくさんの心の震えは、この和声と深く連動したようです。

この曲では、長調なのに甘く切なかったり泣きそうだったり……といった、心に響く豊かな感情を 表現してくれる半音の持つ繊細さが、見事に活かされています。
そんな豊かな表情に満ちあふれているのはこの曲が、ミュージカルの主題歌として生まれたことと無縁ではないでしょう。

以上、8小節で表現される世界が「見上げてごらん夜の星を」の基本的な世界です。
短い中に無駄が一切なく、感動が凝縮された素晴らしい世界です。

さて、歌で1回、続いてインストルメンタルでこの世界が表現された後、展開部分が登場します。   
キーが4度上に転調し、さらにこれまで長調だった世界が短調の世界へ変わります。  
寂しそうなメロディーが悲しい表情の和声に包まれて繰り返されます。 鮮やかな世界の変化もまた、この曲がミュージカルのために生まれたからでしょう。

やがて3回目の繰返しでは、後半がごく自然に希望ある感じへと変化していき、元のキーへ戻ります。
再び基本のテーマが2回表現されて、「見上げてごらん夜の星を」は幕を閉じます。

その理由は『一時的な転調感』にあります。
(厳密に言えば、耳が転調していると感じる状態。楽譜上に転調の表記はない)
D(Bm)のキーが5度上のA(F♯m)のキーに変わっているのです。メロディーが切なく美しく高まるのに合わせて、和音も一時的な転調感すら駆使して切なさを伝えてくれます。

甘く切なく、そして希望に向かう優しさと清らかさがひとつの歌に凝縮された名曲「見上げてごらん夜の星を」は、その世界をミュージカルの主演を通して表現した坂本九さんの笑顔や想い出と共に、これからもずっと多くの人の心を暖めてくれるでしょう。

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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moraのお送りするDSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』が配信中。単なる名曲のピアノ演奏作品ではなく、ひたすら"心の安らぎ"にフォーカスし、未だかつて世の中に存在しなかったほど優しいタッチで演奏された全12曲です。あえて曲間の無音部分が無い "ギャップレス再生"を活かした作品作りを行い、結果として「安眠」に適した……「最後まで聴けずに眠ってしまう可能性の高いアルバム」が完成。moraではこれを記念して同作のプロデューサーである津田直士さんへのインタビューを実施。その狙いと選曲の理由などについてたっぷりとお話を伺ってきました。

 


 

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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「“空間が美しくなって、音が一切、思考や心の動きを邪魔しない”ピアノ曲ばかりのアルバムを創ってみたくなりまして……」作品について語る津田直士さん。

 

――12月末にリリースされた、津田直士プロデュースDSD音源アルバム第2弾『Anming Piano Songs』について、プロデュースされた津田直士さんにインタビューをさせて頂こうと思います。よろしくお願いします。

津田 はい、よろしくお願いします。

――前回のアルバム『Gradation』は「あなたのための映画音楽」というテーマでしたが、今回のテーマは、ずばり「安眠」なんですね。

津田 そうです。でも実は、最初は違うテーマで考えていたんです。moraのスタッフと打ち合わせを重ねていくうちにテーマが発展していって最終的に「安眠」に辿り着きました。

――そうだったんですか。

津田 ええ。『Gradation』が完成した後、すぐに僕の中で次に創りたいアルバムコンセプトが浮かんだんです。それは「究極に優しいピアノアルバム」だったんですね。

――それは一般的なピアノアルバムと、どこが違うんですか。

津田 僕が人生で一番たくさん聴いている、あるアルバムがありまして。 それは、ジョン・ルイスというジャズピアニストの「バッハ:プレリュードとフーガ」シリーズなんです。 僕は原稿を書く時や飛行機で移動する時、このアルバムを控えめの音量でずっと聴いているんです。 もともとバッハが大好きな上に、ジョン・ルイスのピアノ演奏もやはり大好きで……。 それに、このアルバムの曲が流れていると空間が美しくなって、でも音が一切、思考や心の動きを邪魔しないんですね。

――知りませんでした。聴いてみたいです。

津田 ぜひぜひ。でね、極端にいうと「常にそのアルバムを聴いている」のに近い状態が20年以上続いた結果、いつしか僕のピアノプレイも影響されていまして。 ジョン・ルイスのプレイを意識して自分のオリジナルピアノ曲やスタンダードナンバーを弾いていると、心がとても落ち着くんですね。自分のライブなどでも好評だったりして。 で、自分でも「空間が美しくなって、音が一切、思考や心の動きを邪魔しない」ピアノ曲ばかりのアルバムを創ってみたくなりまして……。

――なるほど!それは魅力的ですね。でもそういった演奏を収めたアルバムって珍しいのですか?

津田 そのアルバムがあまりにも好きだったので、他にもないか僕も探してみたんです。 でもね、なかった……。(笑) ピアノの語源って、ピアノフォルテ、じゃないですか。 ピアニッシモからフォルテッシモまで表現できる、ダイナミクスの大きさがピアノという楽器の魅力なわけですから当然、ピアノ演奏には通常そのダイナミクスが活かされているんですね。 僕だって、普段は「ダイナミクスがとても激しい演奏」が特徴な位で……感情がそのまま伝わるから、それは素晴らしいことなんですけど……。でも、それを敢えて抑えて、ひたすら優しく演奏した曲ばかりをアルバムにしよう、と考えたんです。 まあ、ある意味とてもニッチな作品ですけどね。(笑)

――はい。音を聴かないで説明だけを聞いていると、確かにかなり変化球な感じがしますね。

津田 あはは、そう、変化球ですよね。でも、実際僕が人生で一番聴いているのがジョン・ルイスの「バッハ:プレリュードとフーガ」なので、その意図がちゃんと伝わった人には、きっと意義のあるアルバムになるんじゃないか、って思いまして……。

――そのイメージをウチのスタッフとお話しされたわけですね。

津田 そうそう。A&Rの蔦壁さんと話していて、幸い大賛成されたんですが……。 よく話してみると、大賛成してもらえたのはそのイメージが「安眠」につながるのでは、という視点が蔦壁さんにあったからなんです。

――確かに心が安らぐ、ということは安眠につながりますよね。

津田 そう、実際のところ、確かに安眠そのものなんですよ。 僕ね、さっきも言ったように、飛行機で移動する時は必ずジョン・ルイスの「バッハ:プレリュードとフーガ」を聴くわけで、ボリュームを最小限にしていると、実にいい感じで安眠が……

――それは良いですね。しかも、安眠につながる音源って、moraでもランキング上位の作品がここ最近多いですから。

津田 そうみたいですね。で、安眠というテーマは僕のイメージがそのまま活かせるなと思い、その方向で考えていくことに決めまして……。 だから僕も、世に出ている安眠向けの作品をいろいろ聴いてみたんです。 そうしたらね、これはあくまで僕の個人的な……とても個人的な感想なんですけど、想像していたものよりも演奏が優しくなかったりして(笑) これで本当に安眠できるのかなぁ……?と思いまして。 で、こうなったら「最も安眠できる音源」にしてしまおう!って気合いが入っちゃって、蔦壁さんとも盛り上がりまして……。 そんなわけで「安眠が最重要テーマのアルバム」を創ることになったわけです。

――なるほど!

津田 それで、どんな曲を集めたら良いのか考えまして、まずはやはりクラシックの、しかも安眠だから子守唄的な曲だろう、と探し始めたんですが、僕のピアノ演奏にふさわしい曲、という観点を加えてみると、「ブラームスの子守唄」くらいしかピンとこない。 で、子守唄という前提をはずしてクラシック曲全般を見渡してみたら、真っ先に「G線上のアリア」が浮かびまして。

――アルバムの1曲目に収録されていますね。

津田 はい。やっぱり、何よりもまずは大好きなバッハから、と。 それに「G線上のアリア」は今までも僕なりのピアノアレンジで時々弾いていたので、あえて「究極に優しいピアノ」とか「安眠」を意識して弾いてみたら、とても納得のいく演奏ができたんですね。で、よし、これでいこう、と。 で、「G線上のアリア」が決まったら、サン=サーンスの「白鳥」やシューベルトの「アヴェマリア」 ショパンの「夜想曲」といった曲がすぐ見えてきまして。

――何となく、選ばれた曲には共通した傾向がありますね。

津田 ええ。 共通しているのは、メジャーキーでテンポがゆったりした、優しくて暖かい、でも心がちゃんと揺さぶられる曲、という感じですね。 実は、作曲家で選ぶなら本当はベートーベンやチャイコフスキーも大好きなんですけど、そういう曲調の作品が浮かばなくて……。

――「ブラームスの子守唄」を加えて5曲、それ以外に7曲が収録されていますが……

津田 そうなんですよね。ちょっとその辺を説明しますと、その5曲を選んだ段階で、簡単なデモテイクを録り始めたんです。選んだ曲がクラシックなので、譜面も含めてきっちりした曲の構成がオリジナルとして存在するわけなんですけど、それを「安眠」というテーマに沿ってどうアレンジし直すべきなのか……。 その辺りを考えながらデモ演奏を進めていくうちに、今回のアルバムの方針が見えてきたんです。

――どんな方針ですか?

津田 さっき話したような傾向で選んだ今回の作品には、オリジナルに沿って普通に演奏すると4分位のものが多くて。その場合、安眠だからあえて2倍の長さにするのもありかな、と考えまして。曲があまり早く変わってしまうとよろしくないな、と思ったので。 さらに、これは大事なアイデアなんですが、今回のアルバムでは、全ての曲をメドレーとして演奏し、アルバム全体が1曲のようにつながっているもの(ギャップレス再生)にしようと決めたんですね。

――最初にアルバムを聴いた時、確かにそこは「なるほど!」と思いました。

津田 あ、嬉しいです。 それでね、僕らしく、しかも究極に優しく弾いていると、2倍の長さにした時、何か物足りないな、と感じたんですね。 で、そこを何とかするために色々考えているうちに、突然閃いたんです。

――おお……! 何でしょう?

津田 ボーカリストの起用です。 ジョン・ルイスの作品や前回の『Gradation』にとらわれていて、すっかりインストルメンタルのイメージだけでアルバムをイメージしていたのですが、「安眠」というテーマなら、赤ちゃんに子守唄を歌うお母さんのように、優しいボーカルはとてもフィットするのでは、と気づきまして……。

――ああ! 確かにそうですね。

津田 ただ、ボーカルといっても、今回のアルバムの主旨にかなうスタイルや声を提供してもらえる人がいないと始まりませんから、まずボーカリストを誰にお願いするのか……どんなスタイルで歌ってもらうのか…… その辺りから改めて考え始めたわけです。

 

>>後編はこちら

 


 

【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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【連載】

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津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介しています。

 

File08. 「アヴェ・マリア」(作曲:シューベルト)

 

 

 pc_btn_play.pngマークをクリックすることで動画の該当部分に飛びます。
(津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています)

 

今回はフランツ・シューベルトが生んだ名曲 「アヴェ・マリア」をご紹介します。

この曲は歌曲集『湖上の美人』の6曲目、「エレンの歌 第3番」です。
1825年に生まれた曲ですから、31才という若さで1828年に亡くなったシューベルトにとっては晩年の作品ということになります。

シューベルトは600ほどの歌曲を生んだので、「歌曲の王」と呼ばれています。
歌曲以外では25才の時に作曲した「未完成交響曲」が有名ですが、他にも管弦楽曲や室内楽曲、ピアノ曲などを生んでいます。
そういった歌曲以外の作品を含めると、31才で亡くなるまでに1000曲以上の作品を生んだわけですから、圧倒的な作曲の才能を持っていたんですね。

それでは早速、名曲としての魅力を確認していきましょう。
(※以降、移動ドで音階を表します)

通奏低音と分散和音による美しいイントロから始まります。
《コード進行は D D7 G/D Gdim/D D》

ここpc_btn_play.pngでは(0:19)、Gdimという和音が何ともいえない感じを醸し出しています。

この和音は、
明るい感じのする和音:メジャーコード でもなく、
暗い感じのする和音:マイナーコード でもない、
『独特の感じ』を伝えてくれる和音です。
減三和音といって、短3度の音だけで構成された特殊な和音です。
しかも低音が半音でぶつかる感じで流れているので、さらに独特な感じがするのです。
後日ご紹介する、ショパンの「夜想曲」の2つ目のコードも、全くこれと同じ響きです。

さて、次に大切なテーマメロディーがスタートします。
「ドーーーシド」の「ド」が長く続きます。
「シド」を支える和音が心を少し揺らします。
《コード進行は D Bm6》
そう、「シド」を支えて心を少し揺らす和音が、Bm6です。pc_btn_play.png(0:29)

6という数字が表している『G♯』の音が、微妙に心を揺らすのです。
この和音に『G♯』の音が含まれていなかったら、この曲は成り立ちません。

今回、和音のことを説明することが多いのは、このようにこの曲が和音の使い方について卓越したものがあるからです。

我々ポップスの世界でも和音の使い方については色々工夫がなされていますが、クラシック音楽を、当時まだなかったジャズ的なアプローチの『コード進行』で分析すると、とてつもなく優れたコード進行に支えられている曲がたくさんあることに気づかされます。

さて、続けて見てみましょう。

「ミーーー」がまた長く続きます。
《D/A A》と澄みきった和音が支えます。

その後、メロディーが「レド」と下がると暗めの和音に包まれます。
コードはBm、つまりマイナーコードです。
このように『明るい感じ』と『暗い感じ』を巧みに取り混ぜて心を揺らしてくれるのが、クラシック音楽の魅力のひとつですね。

続いて「レーーミレドシラシ」と聖なる感じのメロディーから「ドーーー」と収まる。ここまではとても落ち着いた世界です。
ところが、この辺りpc_btn_play.pngから(0:49)、メロディーと和音がとても「切ない」感じの表情に変化します。

その理由は『一時的な転調感』にあります。
(厳密に言えば、耳が転調していると感じる状態。楽譜上に転調の表記はない)
D(Bm)のキーが5度上のA(F♯m)のキーに変わっているのです。メロディーが切なく美しく高まるのに合わせて、和音も一時的な転調感すら駆使して切なさを伝えてくれます。
《コード進行は D+5 D6 C♯sus4 C♯》

でもここpc_btn_play.png(1:00)でまた元のキーに戻ります。キーへ下がり、先ほどよりも悲しみが増えた感じを、少し低めのメロディーと和音が伝えてくれます。

そして短調のメイン和音「Bm」に落ち着くことで、より暗めの表情になります。
《コード進行は F♯dim F♯ Bm Bm6》
そしてまたキーはAへ転調。pc_btn_play.png (1:10)今回は転調感によって明るい表情へ変わります。

そして転調後のAのキーでもさらに5度上の「転調的なメロディーと和音」によって、光の差すような明るい表情になります。
《コード進行は A/C♯ B7/F♯A/E E7 A 》

ここpc_btn_play.png(1:23)でさりげなくキーがDに戻ります。

「レーレ レード♯ レーミ」とド♯が印象的なメロディーが展開して、「レーミドー …」と完全にキーはDに戻り、落ち着きます。ただし低音はAが続きます。(通奏低音)
《コード進行は A D/A 》

続けて低音がAで持続する感じが変化して、暗めの和音に落ち着きます。pc_btn_play.png(1:37)
《コード進行は A Bm Bm6 》

明るい感じから切ない感じに変わって「ソーファーー」と、高いメロディーを暗めの和音が支えます。pc_btn_play.png(1:47)
《コード進行は A F♯ Em 》

そしてここから、繊細な優しさから、泣きそうな感じに、でも最後は守られるような暖かい感じに包まれる、といった表情が鮮やかに音で表現されます。
《コード進行は G△7 G♯dim A 》

最後に、冒頭に登場した大切なテーマが歌われて、pc_btn_play.png(2:02)
イントロと同じ美しい分散和音と共に曲は終わりを告げます。pc_btn_play.png(2:11)

いかがでしょうか。
この「アヴェ・マリア」は、ある意味とてもシンプルなメロディーの曲かも知れません。

しかしたとえメロディーがシンプルでも、作者の心の震えがメロディーと和音できちんと表現されていると、それだけ聴く人の心を打ち、名曲として残っていくんですね。

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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File07. 「ムーンリバー」(作曲:ヘンリー・マンシーニ)

 

 

※先に動画を再生してからお読みください。津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています。

 

今回はヘンリー・マンシーニが生んだ名曲「ムーンリバー」をご紹介します。

「ムーンリバー」はオードリー・ヘプバーンの代表作のひとつ『ティファニーで朝食を』の主題歌です。劇中でオードリー・ヘプバーンが歌う姿を見ることもできます。アカデミー歌曲賞に加え、グラミー賞最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀編曲賞の3部門を受賞するなど、当時とても高い評価を得たこの作品はやがてスタンダードナンバーとなり、数えきれないほどのカバー作品が発表されていきます。

作曲したのはアメリカ映画音楽の巨匠、ヘンリー・マンシーニ。 同じくオードリー・ヘプバーン主演の「シャレード」や「酒とバラの日々」など、有名な作品がたくさんありますが、私は『刑事コロンボ』のテーマが大好きでした。

それでは早速、名曲としての魅力を確認していきましょう。
(※ 以降、移動ドで音階を表します)

まず最初は「ソーーーレドーー」と とても素直で美しいメロディーで始まります。 明るい和音で始まり、「レドーー」のところで和音が暗くなるところもポイントです。

続いて再び明るい和音にのせて、 「シーーラソファソーー」と、降りてくる 美しいメロディーが登場します。なぜなら、最初の「シ」は支える和音にとって『タブー』の音なのです。だからこそこのメロディーが光るのです。 

その『輝くメロディー』の直後、「ドーーレーー …」のメロディーに導かれるように、悲しみに満ちた和音が響きます。このように、輝くメロディーから憂いを帯びた世界に変わる、といった変化の美しさが名曲には共通して備わっているんですね。 そしてその変化が、聴いている人の心を優しく揺り動かしてくれるのです。

美しい変化は続きます。「ミドーーー」で少し寂しい感じになった直後に、まるで突然 「ソミーーー」で陽が差すかのように明るくなり、 「レドーーー」はそのまま穏やかだけど 「ソミーーー」では迷うような、どこか浮遊した感じに変化します。

そして結局、和音は再び暗めの雰囲気に落ち着くのですが、 その瞬間、直前で穏やかに動いていたメロディーが、下から上へ「ドーミーソー」と一気に昇ります。

和音だけではなく、このメロディーの動きの変化にも注目してもらえれば、と思います。「ドーミーソー」に続いて 「ドーシーーラ」と切なく下がるメロディーに合わせて和音はとても切なく響きます。

そして音程が1度(全音)下がって 「シーラーーソ」と同じようにメロディーが動くのですが、たたみかけるように反復するメロディーも、音程が1度下がったからなのか、切なさから愛のある感じに変化しています。 その雰囲気に合わせるように、和音も愛のある感じに変化しています。

そして「ラーーソ」ともはや優しさが溢れるような落ち着きを取り戻したメロディーを、ちゃんと優しい和音が包んでいます。この一連のメロディーと和音のコンビネーションの素晴らしさも、この曲が名曲であることを物語っています。

その後しばらく、「ソーーーレドーー」の素直なメロディーから「シーーラソファソーー」輝くメロディー、「ドーーレーー …」と悲しみに満ちた和音までが繰り返されますが、続く「ミドーーー」で少し寂しい感じになった次のメロディーは「ミーーソーードーー…」と、高く高くメロディーが昇って、切ない感情の高まりを 豊かに表現します。 この感情を支えている和音は、ちょうど先ほど (「ドーミーソー」に続いて「ドーシーーラ」と切なく下がるメロディーに合わせて和音はとても切なく響きます。) と書いたところの「ドー」を支えている和音なのです。

つまりこの和音は切なさの表情を醸し出す和音のひとつなのですが、優れた作曲家はこのような和音の表情をメロディーに合わせて巧みに使い分けているわけです。

そして、「ミーーソーードーー…」の「ド」よりさらに高い「レ」から始まることによって、 「レドソーーー」と降りてくるメロディーがさらに強い感情を表現しますが、もはやその感情は切なさから、そして悲しみから、まるで決別するかのような強さに満ちています。 悲しみから希望に変化していく予兆を感じさせているわけです。

その、強さと共に降りてきたメロディーはこのキー(調)の中で最も明るいエネルギーを持つ、ホームの和音(トニックコード)に守られながら、次のメロディーにつながっていきます。そのメロディーは、「シラソファソーー」と、降りてくるメロディーです。

実はこのメロディー、最初の一音の長さこそ短めですが、曲の最初の方に登場する、あの『輝くメロディー』と同じなのです。 この曲の最大のポイントである『輝くメロディー』が、僅かに形を変えて、別の役割を担ってここに再び登場しているのです。

悲しみと決別した今、『輝くメロディー』は平和な和音に支えられながら、大切だからでしょうか、2回繰り返されます。

そして最後にメロディー「ド」で落ち着いたあと、 「ファレーーー……ミードーーー……」 と優しさに溢れたメロディーが、このキーで一番優しさに満ちた和音に包み込まれながら、曲は終わります。

いかがでしょうか。 こうして世界的なスタンダードナンバーの美しさ、素晴らしさを見ていくと、名曲である理由がちゃんと存在していることがわかりますね。 そして、このような「名曲の理由」というのは、決して理論や頭で作れるものではなく、作曲した人の心の震えや豊かな感情が、そのまま音となって生まれた瞬間にだけ訪れる奇跡の結果なのです。 

名曲を聴くと心が浄化され豊かになるのは、生んだ人の美しい心と聴く人の心がそのままつながるから……なのかも知れません。

 


 

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Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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