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牧野良幸のトピックス

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第13回:「旅の宿」よしだたくろう

~ハイレゾで、ふたたび拓郎に影響されそうな~

 

 moraのハイレゾ配信は、邦楽、洋楽、ジャズ、クラシック、アニソンと賑やかである。ずらりと並ぶジャケットを見ていると、つくづくハイレゾも一般的になったものだなと感慨深い。

 そのなかでも僕の場合、特に感慨深いのは邦楽だ。日本のアーティストが外国のアーティストとまったく同等に輝いている。ハイレゾに限らず、今の日本の音楽界には洋楽も邦楽もない、ということをつくづく感じる。

 こんなことを書くと、若い人たちは「何を当たり前のことを」と思われるかもしれない。しかし僕がレコードを聴き始めた70年代初頭までは、音楽の良し悪しは別として、邦楽は洋楽より一歩下がったところに見られていた。ポップスであれクラッシックであれ、日本人のレコードは、ジャケットを見ただけで、申し訳ないけれど「ダサいなあ」と思っていたのだ。

 そんな状況を変えたのが吉田拓郎だった(当時は“よしだたくろう”)。1972年の「結婚しようよ」の大ヒットである。当時、僕は中学三年生でビートルズに夢中だったにもかかわらず、まるで日本にもビートルズがデビューしたかのような興奮を覚えた。吉田拓郎はそれまでの、洋楽中心だった日本の音楽マーケットと、リスナーの心を一新したと思う。

 今回取り上げた「旅の宿」も同じくらい衝撃的だった。「ゆかたの〜キミィは〜」とか「俳句でもひねって〜」とか、日本の歌謡界から最も離れたところにいる男(テレビ出演の拒否など)が歌うには、ずいぶんと日本風で、逆にそれが吉田拓郎の大胆不敵さを感じて、中学生には“大人びた行為”と思えたものである。

 そして僕たち中学生が(というか日本中の若者が)もっとも拓郎の影響をうけた“大人びた行為”といえば、ギターであった。昨日まで、教室でバカ話をしていた級友が、突如ギターを弾きだした。おまえは剣道ばかりだったろ、音楽に興味があったの? 野球部のお前が、なんでギターを弾き始めるの?

 ギターを弾きだす男子は、それこそタケノコのようにあらわれた。給食後の休憩時間ともなると、下駄箱の横で、花壇の前で、女子の目を気にしながら「ゆかたの〜キミィは〜」と歌うのである。もちろん僕もギターを始めた。しかし初歩的なハードルであるFのコードでつまづき、タケノコの一つにさえなれなかった。以後はずっと音楽は“聴くだけ”の男である。

 今ハイレゾで「旅の宿」を聴くと、そんな頃を思い出す。アルバム『元気です。』収録の「旅の宿」はシングル・ヴァージョンと違って、ギターとハーモニカだけのシンプルな演奏である。ハイレゾでは解像度も申し分なく、ギターのアルペジオの装飾音がグッと身に染みる。

 やっぱり拓郎はいい。ハイレゾで聴いていると、この歳でふたたび吉田拓郎の影響を受けそうである。今度こそギターに挑戦してみようか、とも思う。女子は周りにいないけれど。

 

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よしだたくろう『元気です。』
(FLAC|96.0kHz/24bit)

「たどり着いたらいつも雨降り」「旅の宿」など収録

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【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 

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第12回:「マイ・ウェイ」フランク・シナトラ

~ハイレゾを聴きながら、妄想で歌い上げる「マイ・ウェイ」~

 

 「マイ・ウェイ」は、カラオケで歌ったら最高に盛り上がる曲である。と同時にヘタクソが歌えば大やけどをする曲でもある。中途半端な歌唱力でマイクを握ったら、場がシラケるのを通り越して、憎しみの目で見られる可能性が高い。よほど自信のないかぎり、シロウトは「マイ・ウェイ」には手を出さない方が身のためであろう。

 しかし「マイ・ウェイ」を聴くのなら話は別だ。僕みたいなシロウトでも、どんどん聴いていい。というか何度も繰り返し聴きたくなるのが「マイ・ウェイ」である。実際には歌わないが、頭の中で「マーイ、ウェーイ!」と歌い上げる自分を妄想してしまう。自己陶酔を極めるために、何度も繰り返して聴く。人前で歌わないのだから、せめて頭の中だけでは歌わせてほしい。

 その「マイ・ウェイ」、沢山のカヴァーがあるにもかかわらず、今も昔もフランク・シナトラの歌唱で聴くのが好きだ。どこまで歌い上げてもイヤミに聞えないのは、さすがシナトラ。歌手自身に風格があっての「マイ・ウェイ」なのである。

 「マイ・ウェイ」は1969年のヒット曲ということで、シナトラにしてはどこかフォーク・ロック調のアレンジで始まる。しかしストリングスやビッグ・バンドが加わると、やはりショー・ビズ的な風味となる。

 これがシナトラらしいし、「マイ・ウェイ」を不滅のものにしたアレンジとも思うのだが、オーディオ的には同時期のロックと比べると聴き所に乏しい。10代の頃、45回転ドーナッツ盤を聴いている時、僕はいつもそう思っていた。どこか枯れたサウンドで、大円団で味わう陶酔度は120%でも、オーディオ的には「まあ、いいか」だったのだ。

 しかしベスト盤『Ultimate Sinatra』のハイレゾ(FLAC 44.1kHz/24bit)に入っている「マイ・ウェイ」を聴いて、長年の思いも消え去ったのだった。解像度が云々と言うより、音に確固たる“芯”が入った感じだ。シナトラの円熟したヴォーカルに対抗できるほど、伴奏も胸板の厚い音になった気がする。

 ハイレゾの「マイ・ウェイ」を聴いていると、ドーナッツ盤の時以上に陶酔しまくりである。今夜も頭の中で思い切り「マイ・ウェイ」を歌い上げている。妄想を極めるのにも、ハイレゾは効果があるのだなあと知った。

 

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ヒット曲・名演を収録した『アルティメット・シナトラ』
(FLAC|44.1kHz/24bit)

お求めやすい全26曲入り
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全105曲(!)入りのコンプリート盤!
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【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 

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第11回:カーペンターズ『シングルズ 1969-1981』

~ハイレゾで僕のメインストリームの音楽に~

 

 カーペンターズは大好きである。しかしカーペンターズを自分の音楽趣味のメインに位置づけると、どこか気恥ずかしく思ってしまうところがあった。やはり「ビートルズやストーンズ、ツェッペリンを聴いてます」と言った方がカッコよかったから。不当な扱いとは分かっていても、いつもは脇に置いて、聴く時だけ「カーペンターズ、大好き」が常だった。

 そんなカーペンターズの『シングルズ 1969-1981』がハイレゾで出たものだから、オーディオ的興味もあって、正面からじっくり聴いてみた。低音の厚味と弾力性が増して、筋肉質なボトムになった印象を受けた。リチャードの施したリマスターの効果もあると思うが、ハイレゾが忠実に再現している気がする。

 「それでは70年代に愛した、カーペンターズの優しい音場が感じられないのではないか」と危惧する方もいるかと思う。でも僕の聴いた感じでは、低域のパワーパップに比例するように、カレンの歌声もふくよかさが増しているし、リチャードのアレンジがより繊細に耳に入ってくるようになった。カーペンターズの世界はそのままに、音が彫刻的に洗練されたと受け止めたい。

カーペンターズの曲はもともと経年劣化するものではないだけに、ハイレゾで聴くとますます名曲として輝く。ビートルズやツェッペリンの曲と比べても遜色ない風格というかフォルムを持ったような気がした。

 「スーパースター」は僕にとって特別に思い出深い曲である。1971年にヒットしたのでシングル盤を買った。初めて聴いたカーペンターズだった。まだビートルズを聴く前で、洋楽のヒットチャートを追いかける中学二年生だった。

 「スーパースター」はカーペンターズにしては珍しく暗い影がただよう曲だ。イントロのオーボエから、ポップスというより、どこかの国の民謡とでも思える古風さがあった。キャッチーなヒット曲を追いかけている中学生にはなじみにくい。なけなしの小遣いをはたいて「失敗したなあ」と思った。

 しかし何度も針を落とすうちに「スーパースター」は輝きだした。良く聴くとメロディは綺麗だし、最後は盛り上がる。そういう流れをつかんだとたん大好きになったのである。

 それでもお気に入りのヒット曲として聴いていたにすぎない。今回ハイレゾで聴いてみると、先に書いたように押しも押されぬスタンダード、それも堂々と自分のメインストリームで聴く音楽と言えるようになった気がする。ハイレゾが彼らの本当の姿を届けてくれたのだろうか。

 

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「イエスタデイ・ワンス・モア」「スーパースター」など名曲の数々を収録!

Carpenters
『シングルズ 1969-1981』


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カーペンターズ 配信一覧

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 

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第10回:ロジャー・ウォーターズ『Amused to Death』

~DSDで濃厚にプログレを聴く~

 

 ピンク・フロイドの元メンバー、ロジャー・ウォーターズのソロ作品『Amused to Death』(邦題『死滅遊戯』)がハイレゾで配信された。それもFLAC(192kHz96kHz)だけではなくDSDの配信もある。近年のハイレゾ界では間違いなく注目作品と言えよう。

 『Amused to Death』は1992年の作品。ピンク・フロイドのアルバムに匹敵すると言われるほど評価の高いアルバムだ。「ピンク・フロイドの真髄はロジャー・ウォーターズ」と思ってしまうのは僕だけではあるまい。

 その『Amused to Death』が2015年、ピンク・フロイドのエンジニアだったジェームズ・ガスリーによりオリジナル・テープから再ミックスされたのが今回のハイレゾである。さっそく僕もDSDとFLACで聴いてみた。プレーヤーはDSDも再生できるSONYのHAP-S1(※リンク先外部サイト)である。

 虫の音から始まる導入。庭先では犬が吠えている。つけっぱなしのテレビの音。どこか不気味な世界だ。このアルバムの聴き所であるジェフ・ベックのギターが現れるまでもなく“プログレ度”が全開である。

 アルバムの紹介は他に譲るとして、DSDのことを書こう。FLAC(192kHz/24bit)に比べてDSDは音に厚みをもたらす気がした。リン、リン、リンという虫の音でさえ、実体のある音のような気がするのである。

 虫の音で興奮するのは、いかにもオーディオ・マニアの妄想に思われるかもしれないが、バンドの音になると、妄想ではなく確実に、DSDの特徴である厚みのある音を感じるてもらえるだろう。現代でも高音質として人気の高いLPレコードのようにアナログの風味なのだ。時折あらわれるソフルフルな女性ヴォーカルも厚味があり、まろやか。ドラムも弾力感がある。

 『Amused to Death』はスティーヴン・キング的なダークな雰囲気なので、DSDの“とろり”としたアナログ感は重要だ。そのぶ厚いフロントの音場がリスナーの左右にまで広がるのだから、“プログレ度”は満点である。聴ける環境の方はぜひDSDで聴いていただきたいと思う。

 いやあ、プログレをまた濃厚に聴く時代になるとは思わなかった。こうなると『Amused to Death』と並ぶ傑作『The Pros and Cons of Hitch Hiking』や『RADIO K.A.O.S.』もハイレゾ、それもDSDで聴きたくなってくるのである。

 

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■今回ご紹介した作品はこちら!

『Amused to Death』
(2015年リマスター盤)
 

 

ロジャー・ウォーターズ 配信一覧はこちら

ピンク・フロイド 配信一覧はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 

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第9回:マライア・キャリー「Dreamlover」

~ハイレゾもボディコン娘から手ほどき~

 

 90年代の初頭、マライア・キャリーをよく追いかけたものである。といっても、アメリカまで行って“追っかけ”をしていたわけではない。いくら当時「ボディコン娘」と言われて、僕をノックアウトしていたとしても、太平洋を渡るわけはない。

 とへたなギャグを書いて、つかみはオッケー。本題に入ろう。

 追いかけたのはマライア・キャリー本人ではなく音楽のほうである。当時マライア・キャリーの人気は絶大であった、彼女のシンデレラ・ストーリーはよく知られていたけれども、彼女の人気の理由は並外れた歌唱力。7オクターブとも5オクターブとも言われる音域は、3分間ポップスにも“聴きどころ”を作ったのであった。

 今回の「Dreamlover」はサードアルバム『Music Box』のオープンにングを飾る曲である。始まるや、いきなりマライアのハイトーンが名刺代わりにあらわれる、「ハァー、アア〜」。続いて天使のようなバックヴォーカルが「ウゥウ、ウウウ〜、ベイビ〜」ときて、マライアが歌い始める。いい曲なんだよなあ。

 しかしマライア・キャリーの魅力は広い音域だけだはない。今思えばマライア・キャリーのおかげでR&Bのテイストを知ったような気がするのだ。ビミョーな“息づかい”や“タメ”をメロディにまぜる歌い方。簡単に言えばセクシャルに歌うということかもしれない。

 もちろんマライア・キャリーよりもソウルフルに歌うシンガーはいくらでもいた。しかしブリティッシュ・ロックやアメリカン・ロックを好んで聴いてきた僕には、マライア・キャリーほど親しみやすい歌手はいなかった。ボディコンのお姉さんから、ブラック・ミュージック、ブルー・アイド・ソウル、ダンス・ミュージックの手ほどきをしてもらったわけだ。

 そこでマライア・キャリーのハイレゾの話だけど、僕の場合「Dreamlover」はSONYのハイレゾ・ウォークマンNW-ZX1で聴くのを好んでいる。ヘッドホンで聴いても耳元で音が柔らかく広がるのがハイレゾだ。「Dreamlover」も軽快なダンスビートは相変わらずだけど、ハイレゾだと音が大人びているというか、まろやかになったような気がする。

 現在「Dreamlover」、そして収録アルバムの『Music Box』のハイレゾのおかげで、昔のように“マライア熱”が起きている僕である。気持ちがいいから何度でも聴いてしまうのだ。ボディコン娘に今度はハイレゾの手ほどきをしてもらっているわけだ。

 

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■今回ご紹介した作品はこちら!

Music Box/MARIAH CAREY

 

マライア・キャリー ハイレゾ配信一覧はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
 
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