最新のトピックスへ Facebook Twitter

牧野良幸のトピックス

Tweet(ツイート)    

makino01.jpg

 

第10回:ロジャー・ウォーターズ『Amused to Death』

~DSDで濃厚にプログレを聴く~

 

 ピンク・フロイドの元メンバー、ロジャー・ウォーターズのソロ作品『Amused to Death』(邦題『死滅遊戯』)がハイレゾで配信された。それもFLAC(192kHz96kHz)だけではなくDSDの配信もある。近年のハイレゾ界では間違いなく注目作品と言えよう。

 『Amused to Death』は1992年の作品。ピンク・フロイドのアルバムに匹敵すると言われるほど評価の高いアルバムだ。「ピンク・フロイドの真髄はロジャー・ウォーターズ」と思ってしまうのは僕だけではあるまい。

 その『Amused to Death』が2015年、ピンク・フロイドのエンジニアだったジェームズ・ガスリーによりオリジナル・テープから再ミックスされたのが今回のハイレゾである。さっそく僕もDSDとFLACで聴いてみた。プレーヤーはDSDも再生できるSONYのHAP-S1(※リンク先外部サイト)である。

 虫の音から始まる導入。庭先では犬が吠えている。つけっぱなしのテレビの音。どこか不気味な世界だ。このアルバムの聴き所であるジェフ・ベックのギターが現れるまでもなく“プログレ度”が全開である。

 アルバムの紹介は他に譲るとして、DSDのことを書こう。FLAC(192kHz/24bit)に比べてDSDは音に厚みをもたらす気がした。リン、リン、リンという虫の音でさえ、実体のある音のような気がするのである。

 虫の音で興奮するのは、いかにもオーディオ・マニアの妄想に思われるかもしれないが、バンドの音になると、妄想ではなく確実に、DSDの特徴である厚みのある音を感じるてもらえるだろう。現代でも高音質として人気の高いLPレコードのようにアナログの風味なのだ。時折あらわれるソフルフルな女性ヴォーカルも厚味があり、まろやか。ドラムも弾力感がある。

 『Amused to Death』はスティーヴン・キング的なダークな雰囲気なので、DSDの“とろり”としたアナログ感は重要だ。そのぶ厚いフロントの音場がリスナーの左右にまで広がるのだから、“プログレ度”は満点である。聴ける環境の方はぜひDSDで聴いていただきたいと思う。

 いやあ、プログレをまた濃厚に聴く時代になるとは思わなかった。こうなると『Amused to Death』と並ぶ傑作『The Pros and Cons of Hitch Hiking』や『RADIO K.A.O.S.』もハイレゾ、それもDSDで聴きたくなってくるのである。

 

makino_roger.jpg

 


 

■今回ご紹介した作品はこちら!

『Amused to Death』
(2015年リマスター盤)
 

 

ロジャー・ウォーターズ 配信一覧はこちら

ピンク・フロイド 配信一覧はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 

Tweet(ツイート)    

makino01.jpg

 

第9回:マライア・キャリー「Dreamlover」

~ハイレゾもボディコン娘から手ほどき~

 

 90年代の初頭、マライア・キャリーをよく追いかけたものである。といっても、アメリカまで行って“追っかけ”をしていたわけではない。いくら当時「ボディコン娘」と言われて、僕をノックアウトしていたとしても、太平洋を渡るわけはない。

 とへたなギャグを書いて、つかみはオッケー。本題に入ろう。

 追いかけたのはマライア・キャリー本人ではなく音楽のほうである。当時マライア・キャリーの人気は絶大であった、彼女のシンデレラ・ストーリーはよく知られていたけれども、彼女の人気の理由は並外れた歌唱力。7オクターブとも5オクターブとも言われる音域は、3分間ポップスにも“聴きどころ”を作ったのであった。

 今回の「Dreamlover」はサードアルバム『Music Box』のオープンにングを飾る曲である。始まるや、いきなりマライアのハイトーンが名刺代わりにあらわれる、「ハァー、アア〜」。続いて天使のようなバックヴォーカルが「ウゥウ、ウウウ〜、ベイビ〜」ときて、マライアが歌い始める。いい曲なんだよなあ。

 しかしマライア・キャリーの魅力は広い音域だけだはない。今思えばマライア・キャリーのおかげでR&Bのテイストを知ったような気がするのだ。ビミョーな“息づかい”や“タメ”をメロディにまぜる歌い方。簡単に言えばセクシャルに歌うということかもしれない。

 もちろんマライア・キャリーよりもソウルフルに歌うシンガーはいくらでもいた。しかしブリティッシュ・ロックやアメリカン・ロックを好んで聴いてきた僕には、マライア・キャリーほど親しみやすい歌手はいなかった。ボディコンのお姉さんから、ブラック・ミュージック、ブルー・アイド・ソウル、ダンス・ミュージックの手ほどきをしてもらったわけだ。

 そこでマライア・キャリーのハイレゾの話だけど、僕の場合「Dreamlover」はSONYのハイレゾ・ウォークマンNW-ZX1で聴くのを好んでいる。ヘッドホンで聴いても耳元で音が柔らかく広がるのがハイレゾだ。「Dreamlover」も軽快なダンスビートは相変わらずだけど、ハイレゾだと音が大人びているというか、まろやかになったような気がする。

 現在「Dreamlover」、そして収録アルバムの『Music Box』のハイレゾのおかげで、昔のように“マライア熱”が起きている僕である。気持ちがいいから何度でも聴いてしまうのだ。ボディコン娘に今度はハイレゾの手ほどきをしてもらっているわけだ。

 

mariah.jpg

 


 

■今回ご紹介した作品はこちら!

Music Box/MARIAH CAREY

 

マライア・キャリー ハイレゾ配信一覧はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
 

Tweet(ツイート)    

makino01.jpg

 

第8回:ヴァレリー・アファナシエフ『ベートーヴェン:悲愴・月光・熱情』

~ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2「月光」~

 

 あ~あ、とうとうピアノがまともに弾けずに人生を終わるのだなあ。
 還暦が視野に入ってきて、そう思う今日この頃である。

 僕の部屋にはピアノタッチの電子ピアノがずっと置いてあるのだけれど、ここ10年くらい蓋を開けたことはない。その前だってろくに練習していないわけだから、今現在の僕のピアノの腕前はゼロである。

 思えば30歳の時、子どもが生まれる寸前に「今買わなければ、もう買えない」と、貯金を全部はたいて頭金にしてローンを組み、その電子ピアノを買ったのだった。高校生の時、ブルグミュラーまで練習したピアノを再び始めようと思ったわけである。

 計画では30歳から毎日コツコツと練習するつもりだった。そうすれば「60歳になった頃にはベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタさえも弾けるのではないか?」と思っていた。他人に聞かせるわけではない。指が回ればいいという程度なら弾けるようになるのではないかと。

 しかし音楽というものは、聴くのは楽しいが、演奏するのはキビシイ。たとえ家庭のピアノでも実にキビシイ。「毎日コツコツ」ができなくて、数年で練習をやめてしまった。

 こうしてベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタを弾く夢は消えた。色気を出して楽譜を買ってみた「悲愴」の、ゆっくりした第2楽章さえ弾けない。結局、高校生の時、なぐさみで練習していた「月光」の第1楽章、それもその最初の部分だけが、唯一僕が奏でることのできたベートーヴェンとなった(「エリーゼのために」は抜いておく)。

 そんなわけで、もうベートーヴェンは“聴く側”と割り切って、今回の「ハイレゾ一本釣り」は三大ソナタから「月光」である。演奏はヴァレリー・アファナシエフ。“奇才”といわれるアファナシエフも、ついにハイレゾで聴けるようになったかと感慨深い。それもDSD配信である(他にFLACもあり)。

 「月光」の第1楽章。かつて自分も練習していたせいで、昔から一流ピアニストの演奏を聴いても、楽譜や鍵盤のタッチなどが思い出されて、どこか“資料”として聴いてしまうところがあった。しかしアファナシエフの弾く第1楽章は、そんなことを考えさせないほど引き込む演奏だ。

 左手の伴奏はまるで時計の振り子のように素朴である。しかしこれが深く水の底に潜っていくよう。聴き慣れた有名な旋律も一音一音が心の内に留まっていく。まるで“音楽の庭”のなかをゆっくりと巡っているようだ。DSDだから、なおさら染み入ってくる。クリアでありながらも暖かい響きなのだ。

 実のところ、この「月光」でさえ、アルバムのなかでは(アファナシエフにしてはだが)オーソドックスな演奏である。同時収録の「悲愴」と「熱情」は、よりアファナシエフの“奇才”ぶりが発揮されているので、こちらもぜひ聴いてみてもらいたい。こういう演奏を聴くと、ピアノへの未練もなくなるのである。

 

makino_piano.jpg

 


 

今回ご紹介した作品はこちら!

「鬼才」と言われるピアニストの名演をハイレゾで!

ヴァレリー・アファナシエフ
『ベートーヴェン:悲愴・月光・熱情』

DSDFLAC

 

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
 

Tweet(ツイート)    

makino01.jpg

 

第7回:佐野元春「COMPLICATION SHAKEDOWN」
(アルバム『VISITORS』収録)

~ハイレゾで新たな衝撃作になってもおかしくない~

 

 洋楽にくらべると、日本の音楽シーンで革新的なレコードはそんなに多くはないと思う。そんな中で確実に革新的だった1枚が、佐野元春の『VISITORS』である。

 『VISITORS』は1984年の発売。当時はアルバム『VISITORS』より、まず1曲目の収録曲「COMPLICATION SHAKEDOWN」が僕の目に飛び込んできたのだった。「目に飛び込んできた」と書いたのは、文字どおり僕の家の13インチのカラーテレビに「COMPLICATION SHAKEDOWN」のプロモ・ビデオが流れたのである。

 何の番組かは忘れた。しかしその時の衝撃は忘れようがない。歌詞といい、ビートといい、「なんだ、これは!?」というものだった。僕の人生において数回言うことになる「これが日本人の歌か?」という言葉を、その時も思い浮かべたのである。

 そして今、佐野元春のアルバムが多数ハイレゾ化されている。『VISITORS』もFLACの96.0kHz/24bitで配信中だ。さっそく31年前にテレビで受けた衝撃を思い出しながら、「COMPLICATION SHAKEDOWN」のハイレゾを聴いてみた。

 しかしハイレゾの「COMPLICATION SHAKEDOWN」は予想以上に凄い音だった。 厚く、パワフル、そして切れ味がいい。変なたとえだが、水揚げされた筋肉質の魚(音)が、あちこちでバンバン飛び跳ねている感じだ。

 いくら『VISITORS』が革新的だったと言っても、また「COMPLICATION SHAKEDOWN」のプロモ・ビデオにぶっ飛んだと言っても、当時こんな凄いサウンドで聴いたとは、ちょっと思えない。

 僕のオーディオ装置は31年前より、かなりグレードが上がっているが、それを差し引いても、こんなにパワフルな「COMPLICATION SHAKEDOWN」は想定外だ。ひょっとしてハイレゾで、どえらいものに生まれ変わってしまったんじゃないだろうか。ヒップ・ホップ、ニューヨークのアート・シーン、あの血沸き肉躍る時代を、新たに体現しているかのようだ。

 このことは「COMPLICATION SHAKEDOWN」だけではなく『VISITORS』全曲に言える。アルバムの中ではポップな「TONIGHT」も、ハイレゾでは音に圧倒されて、トンガリ曲のように思えてしまうし、「NEW AGE」も昔以上に精神がチクチクと刺激されてしまう。これはもう、31年前の“オールディーズ”じゃない。『VISITORS』はハイレゾで新たに衝撃作になってもおかしくない。

 

makino-sano.jpg

 


 

今回ご紹介した作品はこちら!

ヒップホップの要素を取り入れた革新的アルバム!
『VISITORS』
(「COMPLICATION SHAKEDOWN」はM1に収録)

btn_buy.jpg

 

佐野元春のその他のハイレゾ商品はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 

Tweet(ツイート)    

makino01.jpg

 

第6回:キース・ジャレット『ケルン・コンサート』

~ハイレゾでより「とうとうと流れる」キースのピアノ~

 

 キース・ジャレットの名作『ケルン・コンサート』がハイレゾ化された。moraのラインナップを見て「ついに、これもハイレゾかぁ」と感慨もひとしおである。

 僕が『ケルン・コンサート』を初めて聴いたのは、1980年くらいだったと思う。その頃は大学を卒業して岡崎に戻り、バイト生活をしていた。そんな頃、友人が「コレ、凄いよ」と言ってレコードを聴かせてくれたのだ。

 僕にとってキース・ジャレットは、高校生の時に出た『宝島』(※リンク先非ハイレゾ音源)というLPを買って、そのアーシーな音楽に惹かれたピアニストだった。しかし友人の聴かせてくれた『ケルン・コンサート』は『宝島』とはまったく違う世界だった。

 ソロ・ピアノによる完全な即興演奏。あらかじめテーマやコード進行を決めてのアドリブではなく、その時の気分を演奏する完全な即興演奏。こんな演奏は初めてだったので、友人も聴かせてくれたのである。

 しかし『ケルン・コンサート』は、即興演奏自体に感動したのではない。キース・ジャレットは一度限りのやり直しのきかない演奏でありながら、魅惑的な音楽を紡ぎ出していた。あれだけのメロディを瞬時に浮かべるなんて凄い。そこに魅惑されたのだった。

 さっそく友人にカセットに録音してもらった。ECMのお題目であった「クリスタル・サウンド」に期待して、カセットはTDKの〈OD〉という高級テープを使ったことを覚えている。

 その頃、ステレオは壊れていたので、カセットはラジカセで聴いたのだっが、それでも『ケルン・コンサート』にはのめりこんだものだ。毎夜、寝床の中でヘッドフォンで聴いた。「音のランド・スケープ」と言ったらいいのか、ゆるやかに変わっていく風景を見て回る旅のようだった。

 そして2015年、96.0kHz/24bitの『ケルン・コンサート』である。愛機のSONY HDDプレーヤーHAP-S1で聴いてみた。

 『ケルン・コンサート』は調子の良くないピアノを使って演奏したことは有名な話である。金属的なピアノ音が、演奏を独特のものにしているのだが、キースはペダルを踏んで音に厚味を出しているところが多い。ハイレゾではまず、そのペダル音による残響のテクスチャーが繊細に聴こえるように思えた。

 また独特のピアノ音や残響音を、ハイレゾではダイナミックな音像で再現しているようにも思う。そして繊細なタッチはより繊細に。ハイレゾ(プラスB&W804のスピーカー)で聴く『ケルン・コンサート』は、思っていた以上にオーディオ・ライクな聴き方ができるなあ、というのが正直な感想だ。ハイレゾでより「とうとうと流れる」キースのピアノになった気がする。

 

makino_jarrett.jpg

 


 

今回ご紹介した作品はこちら!

伝説の「完全即興」ソロ・コンサートの記録!
『The Köln Concert(Live)』

btn_buy.jpg

 

キース・ジャレットのその他のハイレゾ商品はこちら

 


 

【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
 
mora TOPIC トップへ
moraに戻る
Facebookページへ
mora公式Twitterページへ
ページトップへ
▲ページの先頭へ戻る