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定期連載のトピックス

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「良い音で卓上で踊れ!」というテーマを掲げて始まったこのコラムの第2回(イェィ)!今回は僕なりの「ボーカル論」を少々紹介したいと思います。

というのも、前回のコラムで一番反響を頂いたのが、冗談半分で書いたつもりの「カワイイ女の子」という箇所だったため(笑)、周りが「こりゃあ本当にカワイイ女の子をフューチャーした曲を作らないと収集つきませんなぁ〜」という雰囲気になり「じゃあ実際にスタジオで作業を始める前にpal@pop的なボーカルに対する考え方など述べるところから始めてみては?」ということになったのです(あくまでカワイイ女の子が見つかるまでの時間稼ぎではありません…)。

というわけで「pal@pop的ボーカル論」です。…といっても2つです。


<その1〜【ヘンな声】が売れる〜>

僕が「イイな」と思うボーカルの基準はまず「オリジナリティーのある声かどうか?」です。売れてるアーティストはみんなオリジナリティーのある声をしていて、聴いた瞬間にすぐ誰が歌ってるか分かります。彼らの声は単に「良い声」というだけではなく、実はものすごく「ヘンな声」です。これは自分で彼ら(売れてるアーティスト)の歌声をモノマネして、それを録音して聴いてみると分かるのですが、思ってる以上にものすごくヘンな声を出さないと彼らの声に似てこないのです。

なかなかデビューできなかったり売れなかったり伸び悩むボーカリストの多くが「オリジナリティーの欠如」という問題を抱えていますが、まずはそこに気づくべきだと思います。カッコつけて「良い声」で歌おうとするのではなく「ヘンな声」で歌わないとダメなのです。全ての人に気に入られようとカッコつけて歌った声は、友達や知人には届くかもしれませんが、知らない人には全く届きません。キラわれるような、鼻(耳)につくような「ヘンな声」が知らない人に届くのです。ラジオやテレビで流れた瞬間、その曲の良し悪しよりもまず、その「ヘンな声」の違和感、存在感に耳がいくわけです。実際、売れてるアーティストには応援してくれるファンと同数またはそれ以上のアンチがいます。もし売れるアーティストを目指すのであれば、全ての人に気に入られるように歌うのではなく、「10人中9人にキラわれる……でも1人には確実に気に入ってもらえる!」……そんな歌声を心がけると良いでしょう。


<その2〜声の種類は大きく分けて2種類〜>

売れてるアーティストの声は大きく2つに分けることができます。

まずは、倍音が少なく、800〜2000hz辺りに声のピークが集中する「ツルツル・サイン(Sine)波系」。
そして、3500〜8000hz辺りに豊かな倍音が広がる「キラキラ・ノコギリ(Saw)波系」。

勝手に命名してますが(笑)、「ツルツル系」のアーティストだと、平井堅、槇原敬之、など、「キラキラ系」だと桑田佳祐、ミスチルなどが代表格になります。


平井堅「告白」


 

槇原敬之「もう恋なんてしない」


 

桑田佳祐「明日晴れるかな」



MrChildren「足音 〜 Be Strong」



なんとなく分かりますでしょうか?男性アーティストばかりになってしまいましたが、女性アーティストにも当てはまるので聴き比べてみてください。


「ツルツル系」の声は母音が強く聴こえるので、日本語が伝わりやすいです。歌詞が評価されるヒット曲に多いです。逆に言葉の印象が強すぎてアーティストとしての個性の印象が弱くなってしまう傾向があるので、俗に言う「一発屋」のアーティストも「ツルツル系」が多いです。また、クラシカルギター、ピアノといったアコースティックなオケとの相性は良いですが、シンセなどデジタルなオケとの相性は悪く混ざりにくいので、オケから歌が浮いてしまいがちです。

「キラキラ系」の声は子音が力強く聴こえるので、英語によく合います。いわゆるカッコいい「ハスキー声」は全部「キラキラ系」です。日本語が弱いので「歌詞がイイ!」系の大ヒット曲は生まれにくいですが、声自体が「カッコいいアーティスト像」を作り上げてくれるので、曲以上にアーティスト自身を好きになるファンが多くなる傾向があります。息の長いアーティストの多くが「キラキラ系」です。また、デジタル、アコースティック、どんなオケにもよく馴染むので、洋楽のようにサウンドと一体化した曲を楽しむことができます。サウンドも評価されるアーティストのほとんどが「キラキラ系」です。


自分の声のオリジナリティーを模索しているボーカリストの人は、まず自分の声が「ツルツル系」なのか「キラキラ系」なのか考えてみると良いでしょう。自分の声が目指すアーティストと同じ系統かどうか…?歌詞を大事にするボーカルになるのか…?サウンドで売るアーティストになるのか…?など、いろいろなヒントになると思います。



(続く)

 

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pal@pop プロフィール
 
作詞・作曲・編曲・演奏、MIX、マスタリングなど全てを自身で手掛ける。エレクトロを基調とした繊細かつハイブリッドなサウンドメイキングと深大な「ことば」に対する愛情を武器に日本語の響きにこだわった独特のグルーブ感、浮遊感のある楽曲を生み出す。pal@pop名義のプロデュースワークと、高野健一名義のシンガーとしての活動を、平行して精力的に行う。手がけたアーティストはゴスペラーズ、ノースリーブス、HALCALI、RSP、Tiara、牧野由依他多数。CX「とくダネ!」「Mr.サンデー」など多くの番組テーマソングも手掛ける。
 
 
 
 
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pal@pop「ハイレゾ時代のDTDM」バックナンバーはこちらから



 

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 初回スペシャル! ロング版 

 

第1曲目:大橋純子「たそがれマイ・ラブ」(1978)

 

 moraユーザーのみなさん、はじめまして。

  音楽プロデューサーの松尾潔です。作詞や作曲もします。要するに「うた」をつくることを仕事にしています。そんなぼくが連載を始めることになりました。テーマを日本のうたに絞って文章を書くのは実に久々のこと。というか、初めてのWEB連載です。まあユルく長く続けられればと思っていますので、どうかよしなにお付き合いくださいね。

 さてタイトルにある「歌謡POP」。耳慣れない? それはごもっとも。連載を始めるにあたってぼくが造ったコトバなんですから。moraスタッフからは「メロウなJ-POP」という仮題をいただいたのですが、J-POPというタームの登場以前に世に出た曲たち、つまり当時「歌謡曲」と呼ばれていたものを取りあげることも多くなりそうなので改題した次第。

 2015年のいま「歌謡曲」というコトバを使う時、そこには「J-POPというタームでは規定できない日本語大衆歌謡」というニュアンスが強いように思われます。世代によっては「歌謡曲」と「演歌」はニアイコールなのかもしれませんね。それってゆゆしき事態だなとぼくは危惧してるわけですが。こんな現状をふまえて「(J-POP登場以前の)歌謡曲+現行J-POP」という意味で「歌謡POP」なる造語にたどり着きました。ま、その意味するところは連載を進めるうちにはっきりおわかりいただけることでしょう。

 

 さて1曲目に取りあげるのが大橋純子「たそがれマイ・ラブ」。1978年、いやここは昭和53年と呼びたい気分ですが、とにかく40年近く前のヒットであります。連載タイトルの意味と意図を説明するにあたって、これ以上ふさわしい曲はない! 作詞は阿久悠、作曲と編曲は筒美京平。まずはこの黄金コンビの手によるメロウ・チューンから語らないことには始まりません。

 「たそがれマイ・ラブ」が世に出た時、ぼくはちょうど10歳でした。小学5年生の夏です。えらくオシャレな、大人っぽい印象を受けましたが、同時に小5男子でも口ずさんでしまうようなキャッチーさを兼ねそなえた曲でもありました。

 その年の正月に放映が始まった画期的な歌番組『ザ・ベストテン』で初めて観た大橋純子は、小柄ながらショートヘアと顔からこぼれそうな大きな目が印象的な美女。ああ大人のオンナのひとだなあと。繰り返し言いますけど、何しろこっちは10歳ですから。現在なら「中原淳一が描く美少女がそのまま成長して生身の姿でマイクを握った感じ」とか何とかもっともらしく表現できますが、当時はそんな語彙も知識もないからさ。

 

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(↑「たそがれマイ・ラブ」発売当時のレコードジャケット)

 

 いま調べてみると当時純子さんはまだ28歳だったんですね。28歳といいますと、つい先月、石原さとみさんが28歳になったというニュースが出てたばかりですな。昨年のドラマ『きょうは会社休みます。』で「30歳処女」という役柄を好演して評判をとった綾瀬はるかさんは、実際に今年30歳だというし、それっていまの30歳が幼すぎるのか、昭和の28歳が老成していたのか。日本は変わったのか、変わらないのか……あ、失礼、風呂敷広げすぎました。

 もとい「たそがれマイ・ラブ」。もうイントロからいいんだなあ。さすがは日本が誇るメロウ・マエストロ、筒美京平。弾力性に富んだギターリフや反復性が癖になるリズムパターンがその数ヶ月前に出たカーリー・サイモンの「You Belong To Me」(オリジナルはマイケル・マクドナルド在籍時のドゥービー・ブラザーズ。77年作)の影響下にあることは、この辺の洋楽事情をかじったファンなら容易に指摘できそうなポイントですが、当時はほら、そんな知識もないからさ。

 ブルー・アイド・ソウル文脈で語られることも多いマイケル・マクドナルドがカーリーと共作し、御大アリフ・マーディンがプロデュースした「You Belong To Me」は、おそらくはカーリー・サイモンにとって最もR&Bフィーリングに満ちたレパートリー。90年代にアニタ・ベイカー、21世紀に入ってからもジェニファー・ロペスという超大物ディーバたちがカバーしたこともよく頷けるメロウな名曲です。

 でも、そんな背景や音楽的出自を抜きにしても「たそがれマイ・ラブ」のほうが多くの日本人にはグッとくるはず。コード進行やメロディ展開の妙も大きいですが、最たる理由はやはり何といっても大橋純子さんの美声につきるでしょう。もしかするとその美しさは日本で生活することではじめて判別できるものかもしれません。炊きたての白米のかがやきを見たときに感じる美しさと同種というか。

 豊かな声量で知られた純子さんがこの曲では控えめに歌っているのも、哀しい愛の結末を暗示するうえでたいへん効果的(当時ご本人はそのことに納得がいかなかった旨の発言があったにせよ、です)。フェラーリがあえて低速走行するような優美さが漂います。余談ながら、1998年にMISIAがデビューするにあたってぼくはブレーンのひとりとして参加しましたが、そのとき頭のなかにははっきりと大橋純子の存在がありました。

 

 そして、「たそがれマイ・ラブ」は歌詞ですよ歌詞。夏と冬の2部構成で綴られる、男女の機微。歌謡曲の詞世界としては類型的ともいえるテーマですが、これを阿久悠は現在のJ-POPと比べると驚くほど言葉みじかく、しかし色あざやかに描ききるのです。映像を喚起するチカラといったら、もう途轍もなくて。どことなく捨て鉢な、あるいはデカダンな女主人公の腹の据わりかたはきわめてオ・ト・ナ。つまり至高のメロウ。もう阿久悠劇場と言いきってしまいたい。

 日本中の女子小中学生に振り付けの真似をさせたピンク・レディーの「UFO」で4度目のレコード大賞をとった阿久悠が、同じ年にこんな「どメロウ」な楽曲も残しているという事実は、いま音楽プロデューサーや作詞家を名乗るぼくの目には超人的所業として映ります。もっと正直にいうとひどく打ちのめされます。きっと間違いなく、映画をつくる心持ちで作詞に向きあっていたんでしょう、阿久さんは。

 この曲の原題が「ベルリン・マイ・ラブ」ということを知ったのは、ぼくが音楽プロデュースの仕事を始めてからのこと。道理で2番の歌詞のなかで白い粉雪が舞い踊るのが「石畳」なのかと。横浜元町じゃなかったのかと。のちに小説家として『瀬戸内少年野球団』(篠田正浩監督によって映画化もされた)などの傑作を残す阿久悠の念頭にあったのは伯林=ベルリンが舞台の森鴎外『舞姫』なのか、ボブ・フォッシーのミュージカル『キャバレー』なのか、はたまたMGM映画の古典『グランド・ホテル』なのか……止まらぬ妄連想を持てあますのもリスナーズ・プレジャーのうち。これぞ名曲にめぐり逢えた証なり。

 

 ちなみにぼくは「たそがれマイ・ラブ」のカバーにこれまで2度挑戦しています。まず1999年に嶋野百恵さん、2005年には稲垣潤一さんで。おふたりとも個性的な声質と素敵な歌心をもった歌い手さんですが、プロデューサーのぼくの力量が足りなかったせいでオリジナルのクオリティには遠くおよびませんでしたね。忌憚なくいえばしくじりました。猛省しております。

 そのしくじり、そして京平先生と面識を得て直接ヒットづくりの要諦らしきものを学んだ経験をもとに、「たそがれマイ・ラブ」へのオマージュを捧げる気概で臨んだのが、昨秋リリースしたJUJUの「ラストシーン」です。ぼくは46歳、「たそがれマイ・ラブ」に出逢ってからちょうど干支が3周してましたとさ。長かったなあ。短かったなあ。

 

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今回ご紹介した楽曲「たそがれマイ・ラブ」のご購入は以下から!

ゴールデン☆ベスト 大橋純子 シングルス/大橋純子

 

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松尾 潔 プロフィール

1968 年生まれ。福岡県出身。
音楽プロデューサー/作詞家/作曲家

早稲田大学在学中にR&B/HIPHOPを主な対象として執筆を開始。アメリカやイギリスでの豊富な現地取材をベースとした評論活動、多数のラジオ・TV出演を重ね、若くしてその存在を認められる。久保田利伸との交流をきっかけに90年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。その後プロデュースした平井堅、CHEMISTRYにミリオンセラーをもたらして彼らをスターダムに押し上げた。また東方神起、Kといった韓国人アーティストの日本デビューに関わり、K-POP市場拡大の原動力となる。

その他、プロデューサー、ソングライターとしてEXILE、JUJU、由紀さおり、三代目J Soul Brothersなど数多くのアーティストの楽曲制作に携わる。シングルおよび収録アルバムの累計セールス枚数は3000万枚を超す。
2008年、EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲・プロデュース)で第50回日本レコード大賞「大賞」を、2011年、JUJU「この夜を止めてよ」(作詞・プロデュース)で第53回日本レコード大賞「優秀作品賞」を受賞。
NHK-FM の人気番組『松尾潔のメロウな夜』は放送5年目をかぞえる。

近著に『松尾潔のメロウな日々』(スペースシャワーブックス)。

 
 
 
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「松尾潔のメロウな歌謡POP」バックナンバーはこちらから
 
 
 

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では早速、第一回目にご紹介するのは、X JAPANの「ENDLESS RAIN」です。
作曲はX JAPANのリーダーで、ドラムスとピアノを担当しているYOSHIKIです。
 
 
☆ 曲について
 
この曲はX JAPAN(当時はX)の初メジャーリリースアルバム「BLUE BLOOD」に収録されたバラードです。
先行してシングルカットされた当時のXの代表曲「紅」と共に、テレビなどのメディアを通してXというバンドの認知を広める大きなきっかけとなりました。
 
当時、僕はXのディレクターでした。
YOSHIKIという若いアーティストが、ゼロから名曲を生むことのできる「選ばれた才能」を持っていることに気づき、当時のXというバンドのイメージ、つまり
『見た目が派手でコアファンだけに人気の激しいメタルバンド』
というイメージとは全く違った、
『いずれ日本を代表するバンドとなり、世界中に伝わるような100年残る音楽を生み出すアーティスト』
となるはずだ、と信じ、エネルギーを込めてメンバーと共にアルバムを制作していました。
 
「ENDLESS RAIN」は、メジャーキー(長調)の美しいバラードを生むことを僕が勧めた結果、YOSHIKIが1988年に生んだ、美しいメロディーが光る名曲です。
生まれたばかりの曲を聴かせてもらった時の感動は、今でも忘れることはありません。
 
この連載で皆さんにご紹介していこうと思っている名曲はみな、圧倒的で素晴らしい共通点があります。
それは
心を打つメロディーと、それを支える美しい和声が相まって、多くの人に感動を与える曲
であり、
何のマネでもなくオリジナリティの塊で、過去にはない新しいメロディーと和声の関係が光る曲
であり、
意図して作為的に作られた曲ではなく、作曲家の心の震えがそのまま曲となって生まれた、ピュアな曲
です。
 
そんな名曲を生める、選ばれた才能の持ち主なんだ、とYOSHIKIに伝えていた僕は、「ENDLESS RAIN」のサビを聴いた時、改めて驚きました。
これだけ多くの音楽が溢れている今(1988年当時)、まだこれだけシンプルかつ大きなメロディーでどんな曲
にも似ていない魅力ある曲が、新たに生めるのか・・・!
そんな風に驚き、感動したのです。
 
 
 
☆ 和声について(下降進行の和声進行)
 
「ENDLESS RAIN」のサビのメロディーを支える和声は、一般的に『下降進行』と呼ばれるものです。
この和声進行について少し説明してみましょう。
 
① 主要3和音
ひとつのキー(調)に対して、ポップス等でごく一般的に使われる和音は、少なくとも20以上はありますが、
これらの和声の中で、特に重要な役割を果たすのは、主要3和音といわれる3つの和音です。
その響きは、世代や人種を問わず誰もが同じような「感じ」を受ける特性を持っています。
 
トニック」と呼ばれる和声(キーがCの場合、C=ドミソ)
ドミナント」と呼ばれる和声(キーがCの場合、G=ソシレ)
サブドミナント」と呼ばれる和声(キーがCの場合、F=ファラド)
の3つです。
 
そして、マイナーキー(短調)の場合でも同じように3和音はあります。
Cのキーで使われるメロディーをそのままマイナーキー(短調)で支える場合は、Amというキーになるのですが、それぞれ
トニック」(キーがAmの場合、Am=ラドミ)
ドミナント」と呼ばれる和声(キーががAmの場合、Dm=レファラ)
サブドミナント」と呼ばれる和声(キーががAmの場合、E=ミソ#シ またはEm=ミソシ)
となります。
 
 
 
② 下降進行の和声進行
 
これらの和声を、より豊かで複雑な響きにしてバリエーションを増やしていくと、先ほど書いたようにひとつのキー(調)に対して20以上の和声になっていくのですが・・・どんな和音も基本はやはり3和音なんですね。
ですから、どんなに複雑かつ豊かな和声の響きも、分解していくと主要3和音に行き着くのです。
 
そこで今回の「ENDLESS RAIN」で使われている、とても豊かな和声進行『下降進行』を、あえて主要3和音をもとにして解説してみましょう。
 
実は、基本にある和声は、
《 C G Am Am F C F G 》の基本3和音なんですね。
この和声に対して、和声を根元で支えている低音(これはbass音=ルート音といって、1つの音となります)が、
《 C B A G F E D 》と下がっていくんですね。最後はGに上がり、また繰り返しのCへと続きます。
低音が下がっていくから、『下降進行』と呼ばれるんです。
 
この「下がっていく感じ」が心に心地よく響くために、この和声を使用した曲はたくさんあります。
(例:「青い影」プロコルハルム 「青春の影」チューリップ 「妹よ」かぐや姫)
 
 
 
☆ 特徴のある和声にささえられながら・・・美しいメロディー
 
そんな風に心地の良い『下降進行』ですが、和声が心地よくても、メロディーに感動を伝えたり心を打ったりする強いエネルギーというか、生命力のようなものがなければ、名曲とはなりません。
 
では「ENDLESS RAIN」のサビのメロディーを見てみましょう。
 
メロディーは、「ミ」を3拍伸ばした後、「シ」に上がって1拍、そしてに「ド」へ上がり、また3拍伸ばします。
とてもシンプルで大きなメロディーですね。
にもかかわらず、下降進行の和声と相まって、とても胸に響きます。
もちろん、あえて分析をすれば、明るいCの和声で「ミ」が始まり、和声が下がる中メロディーが逆に「シ」と上へ上がり、「ド」へ辿り着いた時に、和声は暗めのAmに落ち着く・・・ので、胸に響く。
とも解釈できますが、これは美味しい料理を分子レベルで分析したり、恋している好きな人のことを細胞やDNAで分析するのと同じで、大した意味はありません。
 
それよりも、人の心を打つ曲をゼロから生むことのできる作曲家の「心」に注目した方が良いでしょう。
 
 
このサビのメロディー、「ミ」を3拍「シ」を1拍、「ド」を3拍 と同じようにとてもシンプルな、誰でも知っている、あるパッセージと比べると、名曲の深淵が見えてきます。
その例は、小学校の授業などで始まりの際にお辞儀をする、あれです。
「ド」を2拍「シ」を2拍「ド」を3拍。
このパッセージを聴きながらお辞儀をする際に、果たして人々は深く感動するでしょうか。
 
「お辞儀の伴奏」と同じくらいにシンプルなのにも関わらず、「ENDLESS RAIN」のサビが聴く人の心を打つのは、作曲したYOSHIKIの心の震えや感情が、そのまま音になっているからです。
 
そして心の震えや感情を、そのまま音楽にするために、メロディーと和声を作的な過程を一切経ず、形にすることができたからです。
 
これは『名曲の理由』の大きなひとつです。
 
作曲をする人が数多くいても、名曲がその数だけ生まれないのは、作曲する人の心の震えや感情を、そのまま音にすることが、とても難しいことを意味しています。
 
そして、この難しいことを、音楽的な素養と、ある心の状態によって実現する方法を自分なりに会得した人だけが『名曲を生む』という素晴らしい行為をものにできるわけです。
 
それは、作曲家の心の中と非常に深い関係があるのです。
 
 
次回も、引き続き「ENDLESS RAIN」が名曲である理由を解説していきたいと思います。
 
 
 
(つづく)
 
 
 
※ 今回ご紹介した和声や和声進行の解説は、音楽理論などに馴染みのない方にも理解しやすいよう、詳細を省いています。実際には下降進行は、
 
C-Gsu4/B-Am-Em13/G-Fadd9-F/E-Dm7-Dm7/G
 
という和声進行や、マイナーキーの
 
Am-AmMaj7/A♭-Am9/G-F#m7♭5-FMaj7-Am/E-B7/D#-Esus4-E7
 
という和声進行など、多様にありますし、「ENDLESS RAIN」の和声進行も、正確に記述すると
 
【C-Em/B-Am-Am/G-F-C/E-Dm7-Gsu4 G7】
 
であったりします。このような詳細については、機会がありましたら、いずれご紹介します。



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【著者プロフィール】
 
津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
 
小4の時 バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “ 音の謎 ” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX (現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。
‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony) や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS) 、BLEACHのキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書「すべての始まり」や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス『ソニアカ』の講義など、文化的な活動も行う。
 
Twitter : @tsudanaoshi
ニコニコチャンネル:http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi
 
 
moraで 津田直士の音楽を聴くことができます。
 
・プロデューサーとして作曲・編曲・ピアノを手がけた 
DSD専門自主レーベル"Onebitious Records" 『あなたの人生を映画に・・・』 
 
・プロデュースを手がける
mora Factory アーティストShiho Rainbow の『虹の世界』『Real』『星空』 
 
 
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津田直士「名曲の理由」バックナンバーはこちらから
 
 
 

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「DTM」は「デスク・トップ・ミュージック」。
「EDM」は「エレクトロニック・ダンス・ミュージック」。
 
では「DTDM」とは?
はい、お分かりですね。
「デスク・トップ・ダンス・ミュージック」です!
 
「DTDM」、これ僕の造語なんですが、音楽製作の現場から発信するこのコラムのテーマはずばり「デスク・トップ・ダンス・ミュージック」! 「良い音で卓上で踊れ!」です♪
 
と言っても「こう作れば良い音だよ〜」とか「ハイレゾ対応の現場はこうだぁ~」とか知識ひけらかし系……あ、いや情報発信系ではなく、「こうすれば良い音になるんだぁ~」とか「ハイレゾってすげぇな!」とか僕自身が良い音を学んでいく場にしたいと思っています。なので「踊れ!」という命令形は自分に対してであって、クラブよりも家で仕事しながら踊ってる自分が、より良い音質で、より高いモチベーションで踊れるように……という願いが込められています(笑)。
 
っていうかぶっちゃけ、僕はまだハイレゾ環境での音楽制作のメリットとかよく分かってません(笑)。
 
もっと正直に言うと、ダンスミュージックを愛する自分が現時点で抱いている「音質」に対する意見はちょっとヘンというか、語るとちょっと問題発言になるかもしれません。
 
だって、ダンスミュージックってそんな音良くなくてもいいと思っちゃてるんです(笑)。
 
だって踊るんですもん(笑)。低い音から高い音まで分離の良い綺麗な音よりも、ひとかたまりのダンゴような迫力のある音で体を揺らして欲しいのです。そのためにダンスミュージックを作る人はわざと音を汚します。ディストーションやコンプレッサーをかけて音を歪ませ、音をデカくし、他の音と混ぜこぜにして一つの音にして迫力をだします。例えば、30~60ヘルツくらいの重低音のサイン波をmp3ファイルで鳴らしたとしてもダンスミュージックとしての機能は変わらないのでは?と思っています。
 
っていうのが現時点での僕の意見なんですが、別に決めつけてる訳ではなくて、興味をもってやる限りは勉強したいし、最初に書いたように「より良い音で踊りたい!」という気持ちにハイレゾという選択肢が増えることを期待しています。
 
もし、ディストーションやコンプレッサーによる歪んだ音も、解像度が上がることで良い音になるとしたら?
 
もし、サイン波の重低音もハイレゾによって迫力あるグルーブが出せるとしたら?
 
もし、低い音から高い音まで美しく分離再現することによって、ひとかたまりのダンゴ・ダンス・ミュージックと同じように、いやそれ以上に迫力のあるサウンドを作り出せるとしたら?
 
そしたらもう、Macのモニターを前に卓上でガンガン踊っちゃいますね。もしこれを読んで下さった皆さんも、ハイレゾを学べて僕と同じように卓上で踊ってくれたら嬉しいです。
 
あ、「卓上で踊る」っていうのは正しく言うと「卓上の音楽で踊る」ってことなので、盛り上がり過ぎて机の上に上がって踊らないで下さいね!危ないので♪
 
………。
 
というわけで! 次回から実際に、実験&研究的なアプローチで曲を作っていきたいと思います。皆さんにも楽しんでもらえるようにゲストミュージシャンやカワイイ女の子にも登場してもらう予定です…。って、え?カワイイ女の子ってめちゃめちゃ重要なんですよ! 踊るためのモチベーションとしては(笑)! 一緒にいるだけでテンション上がりますからね♪ そんなカワイイ女の子の写メや、無料のサンプル曲、サンプル音などもアップしていきますのでお楽しみに〜!



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pal@pop プロフィール
 
作詞・作曲・編曲・演奏、MIX、マスタリングなど全てを自身で手掛ける。エレクトロを基調とした繊細かつハイブリッドなサウンドメイキングと深大な「ことば」に対する愛情を武器に日本語の響きにこだわった独特のグルーブ感、浮遊感のある楽曲を生み出す。pal@pop名義のプロデュースワークと、高野健一名義のシンガーとしての活動を、平行して精力的に行う。手がけたアーティストはゴスペラーズ、ノースリーブス、HALCALI、RSP、Tiara、牧野由依他多数。CX「とくダネ!」「Mr.サンデー」など多くの番組テーマソングも手掛ける。
 
 
 
 
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初めまして。作曲家・音楽プロデューサーの津田直士です。
 
名曲が大好きで、たくさんの名曲を探し、見つけ、聴いてきた僕が、これからこの連載で皆さんに心動かされる名曲をご紹介し、さらに作曲家ならではの視点で、なぜその曲が心を打つのか、解説していきたいと思います。
(曲には歌詞と曲という2つの要素がありますが、この連載では基本的に【曲】にスポットをあてていきます)
 
僕は30年以上音楽の仕事に携わっていますが、そもそも僕がこのような「音楽に生きる人生」を選んだきっかけは、いくつかの名曲との出会いでした。
 
 
☆ 衝撃の事件
 
小さな頃に「バラが咲いた」を聴いて何となく『曲に惹かれる感じ』に気づき、家にあったクラシックのレコードを聴いていると、何となく『音楽の魅力』に気づき・・・。
やがて、決定的な事件が僕の身の上に起きたのは、小学4年の音楽の授業でした。
 
その日は音楽鑑賞で、バッハの「小フーガト短調」を聴いたのですが、聴き始めた途端、僕は胸が苦しくなって、机に突っ伏してしまいました。
そして、生まれて初めての感覚を、はっきりと意識しました。
「心臓から涙が流れている!体が感動で泣いている・・・!!」
 
音楽で、体が変わるほどの感動を得ることを初めて知った日でした。
 
それからは、大好きだったベートーベンやチャイコフスキーのレコードの聴き方も、少し変わっていきました。
聴きながら、何となく「心が泣く」ような瞬間を探すようになったのです。
そうすると、今まで気がつかなかったところに、そのポイントはいくつもありました。
そして、その切なく美しいメロディーや、心を震わせる和音の響きが、自分の心を浄化してくれて、おまけに強いエネルギーで満たしてくれることに気づきました。
 
その力を持っているのは、クラシック音楽だけではありませんでした。
 
「Let It Be」がリピートで流れていたのは、ラジカセを選びに行った家電屋さんの店頭でした。
僕は目的を忘れ、聴いたことのないその曲を繰り返し聴き、そのメロディーの持つ魔力に取り憑かれ、その場を動けなくなりました。そう、あの感覚が、延々と続くのです。
その曲がビートルズというアーティストの作品だと知るのは、それから半年以上も先のことでした。
何しろ、まだ小学生でしたから・・・。
 
 
☆ 音楽人生と名曲マニアの始まり
 
やがてそれから3年ちょっと経った中学2年のある日、それまで弾いたことのなかったピアノをどうしても弾きたくなって、家にあったピアノを触っているうちに突然音楽の謎が解け、それをきっかけに、音楽と共に歩んでいく人生を、僕は始めました。
 
そんな僕にとって最も幸せな瞬間は、「初めて聴くのに心が泣く曲」と出会うことでした。
だから、そんな曲を探して、見つけたらゆっくり味わう、といったことをずっと続けていきました。
『名曲マニア』としての人生の始まりです。
 
中学生にもなると、ヒット曲や流行といった世の中の動きも分かるようになっていきます。
そうすると、ヒットして世の中では盛り上がっているのに、僕の耳には恐ろしくチープに響き、中身がないように感じる曲がたくさんあることに気づきます。
 一方で、アメリカやイギリスのヒット曲の場合は、ビートルズにつながる、強い力を持った曲がたくさん流行っているように見えます。
 
そして、僕の耳には恐ろしくチープに響き中身がないように感じる曲が日本ではなぜかちゃんと流行ってしまう、その背景には、作品の力ではなくその曲を流行らせる何か別の力が存在すること、また結局そういった曲は、一時的に流行ってもやがて廃れてあっという間に古くなっていくことに、気づきました。
 
 
☆ 名曲の鍵、作曲家
 
だから、僕は流行とは関係なく、心を揺さぶるメロディーや楽曲を色々な角度から探し求め、その鍵を握っているのが作曲者であることに興味を覚え、あらゆる名曲を自分の中に取り入れながら、作曲や作曲家への興味と強い想いをどんどん深くしていきました。
それはもちろん、自分自身が名曲を生みたくて、毎日作曲をしていたことと、無縁ではありませんでした。
 
そうして巡り会った、僕の心を揺さぶる曲を創る人達が、ポールマッカートニー、ポールサイモン、スティービーワンダー、ドンヘンリー、エンニオモリコーネ、バート・バカラック、中村八大、いずみたく、浜口庫之助、小林亜星、坂田晃一、大野克之、財津和夫、伊勢正三、松任谷由美、中島みゆきといった、ゼロから全く新しい名曲を生む、選ばれた才能の作曲家です。
 
彼らの名曲を聴きながら、その曲以前には存在しなかったメロディーが新しく生まれ、世界中に広まり、多くの人達の心を動かして幸せにしていくことの素晴らしさと、そういった名曲の持つ、計り知れない可能性について、僕は想いを強くしていきました。
 
 
☆ 名曲ナビゲーター
 
さて、そんな名曲マニアの僕はSony Musicの音楽ディレクターとなり、X JAPANのYOSHIKIと出会って音楽プロデューサーという立場で、そして更にその後、自分も作曲家となって名曲を送り出す立場になりました。
時代の流れと共に、僕が感動する名曲を生む作曲家も、YOSHIKIに加え、小室哲哉、槇原敬之、Mr.Childrenの桜井和寿、スピッツの草野マサムネ、aiko、BUMP OF CHICKENの藤原基央、 元Superflyの多保孝一、藍坊主
の藤森真一、dustbox・・・と増えていきました。
 
こういった背景を元にこの連載では、世の中にある名曲をどんどんご紹介しながら、名曲を生む現場にいる作曲家・音楽プロデューサーという立場を生かし、その曲がなぜ名曲なのか、といった秘密を、分りやすくご紹介していきたいと思います。
この連載をきっかけに、僕は『名曲ナビゲーター』という新たな役割で名曲をお伝えしていこうと思うのです。
 
 
それでは次回から、具体的に名曲を取り上げながらお話を進めていきたいと思いますので、ご期待下さい。
最初に取り上げる名曲は、X JAPANの「ENDLESS RAIN」です。

 
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【著者プロフィール】
 
津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
 
小4の時 バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “ 音の謎 ” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX (現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。
‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony) や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS) 、BLEACHのキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書「すべての始まり」や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス『ソニアカ』の講義など、文化的な活動も行う。
 
Twitter : @tsudanaoshi
ニコニコチャンネル:http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi
 
 
moraで 津田直士の音楽を聴くことができます。
 
・プロデューサーとして作曲・編曲・ピアノを手がけた 
DSD専門自主レーベル"Onebitious Records" 『あなたの人生を映画に・・・』 
 
・プロデュースを手がける
mora Factory アーティストShiho Rainbow の『虹の世界』『Real』『星空』 
 
 
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