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日高央のトピックス

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Vol.26 Theme : PUNX達が言った『ヒッピーはイーグルスでも聴いてろ!』でイメージダウンした人も多かったはず

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 70年代の巨星達の訃報が続く2016年初春……レミーボウイと来て、今度はアメリカンROCKの大御所、グレン・フライも遂に……とは言え80’s PUNK/NEW WAVE世代にとっては、ウェストコーストのいなたいROCKはある種の仮想敵だったので(サウンド、ファッション、生き様、全てが真逆なので)、俺がイーグルスをちゃんと聴くようになったのは大学生も後半の頃……先輩達は微妙に70年代に間に合ってるから「オールマンとかドゥービーとか判んねぇ奴ぁダメだ」とか言ってくるわけで……(笑)、俺も負けず嫌いなもんだから、頑張って「ディグりましたよ! 」とか言って背伸びして話を合わすわけで……(笑) というわけで今回は私見イーグルス記をば。

 スタートは70年代の歌姫リンダ・ロンシュタットのバックBAND。フォーク・グループの紅一点としてデビューした彼女は、その後イーグルス全員と関係を持ったとか、ミック・ジャガーと浮名を流したとか、様々なロック伝説を作った稀代のヤリマ……悪女。超面白ぇ……いや、興味深い逸話が沢山あるので、いつかまた単独で掘り下げたい。

 ともかくバックバンドとして集まったメンツが意気投合し、新たなバンドをスタートさせるという、非常に爽やかなスタートがPUNK少年的には気に食わなかったんだけど(笑)、後で知ったイイ話として、当時グレン・フライが住んでたアパートの別の部屋から弾き語りが聴こえてきて、あまりにも良かったので声をかけたところ、それがデビュー前のジャクソン・ブラウンで、彼がその曲をイーグルスに提供した事によって生まれたのが、1stシングルにして最初のヒット「Take It Easy」。その気前の良さや、伝説のニコにも楽曲提供してたりするし、何より繊細で若干ポリティカルな曲を書くジャクソン・ブラウンは、PUNXでも好きな人が多いはず。

 さて順風満帆なスタートを切ったイーグルスは、続く2ndで今やスタンダードとしておなじみ「Desperado」を早くも完成。しかしこれが結果的にイーグルスを<バラードが得意BAND>として認知させる事になり、ハードROCKやPUNK好きから敬遠される原因となっていく……その反省から次作『On The Border』からはROCK色を強める事に。代表曲「Already Gone」や表題曲「On The Border」「James Dean」辺りは、それまでのフォーク、カントリー、ブルーズ色を残しつつも、全員がメインVo.を取れる強みを活かしたコーラスワークでPOPな仕上がりに。続く『One of These Nights』でも表題曲を始めハードかつファンキーな曲を増やすが、ドン・ヘンリーとグレン・フライの2人で独裁的にバンドを仕切り始めてしまったため、バンジョーやマンドリンもこなした創設メンバーのバーニー・レドンが脱退してしまう。この辺はストーンズがブライアン・ジョーンズを失った顛末に似てる気がする……そして、その後どんどんビッグになる展開まで似てる!

 さぁもっとROCKしたるで! と意気込んだイーグルスは、POPなハードROCKをやっていたジェイムズ・ギャングから、新ギタリストとしてジョー・ウォルシュ(大好き! イーグルス本体より好き)を招聘。テクニカルさとユーモアを持ったジョーの加入は、バンドに飛躍的な向上をもたらし、遂に大名作『ホテル・カリフォルニア』を完成。表題曲「Hotel California」はもちろん、ジョーに引っ張られた「Life In The Fast Lane」や「Victim Of Love」等で、前作からの課題であったハードさを完全に獲得。でもジョー本人は超ロッカバラッドな「Pretty Maids All In A Row」を歌っちゃったり……やっぱジョー・ウォルシュ最高!

 しかし成功と共に巨大になり過ぎたイーグルスは、ドン・ヘンリーとグレン・フライの中心メンバーvs残りのメンバーみたいな対立が深まり、結果アルバム『Long Run』リリース後に解散。元メンバー同士の仲の悪さは俺も絶賛経験中なので(苦笑)、しょうがねえよ人間だものとしか言いようがないが、その後1994年にイーグルスは再結成。なんだ仲直り出来たんじゃんと思ってたら、コンスタントに発表した新譜『Hell Freezes Over』と『Long Road Out Of Eden』もバカ売れしたためか、また仲が悪くなって(笑)、メンバーのドン・フェルダーが解雇され裁判沙汰にまで発展……なんだ全然仲直りしてねーじゃん!(笑) な結果に。

 あれ? 今回グレン・フライのイイ話が全然出てこなかったけど(ゴメン)、80年代のソロ期は「The Heat Is On」「You Belong To The City」はじめ数々のヒット曲を残し、そもそもイーグルスでもメインのソングライターだっただけに、ハンパない才能の持ち主なのは間違いない……そもそもグレンがジャクソン・ブラウンと出会ってなければ「Take It Easy」も生まれなかったわけで、彼がアメリカンROCKに残した足跡はとてつもなく大きいはず……この機会に、俺のこのちょっと斜めった視点で? イーグルスに触れてみるのもオススメだよ。とにかく名曲、良曲多し!

 

名曲の数々を収録のベスト盤(試聴可)!

The Studio Albums 1972-1979

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ハイレゾ

 

イーグルス 配信一覧はこちらから(ハイレゾも複数タイトル配信中!)

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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Vol.25 Theme : デヴィッド・ボウイの初期5年間を振り返る

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 そのあまりにもドラマのような完成された人生や才能を惜しむ声が後を絶たず、逆にこれからボウイに出会おうとする人達には狭き門になっていないかが心配な2016年初春。そんなボウイにも青き時代、未完成ながらも模索し、己の芸術道を極めんとしていた時代が当然あったわけで、今回はそのドラマチックな半生の序章とも言うべき初期5年間を振り返ったコンピ『Five Years』を紐解きながら、あらためて彼の魅力に迫ってみよう。

 

『Five Years』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 ビートルズなんかもそうだけど、現代の感覚で考えるとちょっとにわかには信じ難いような……そう、2~3年のスパンで……いや、ヘタすれば1~2年のスパンで目まぐるしく表現のベクトルを変えることが珍しくなかった60年代や70年代。とはいえリスナーの反応は双刃の剣で、やりようによってはそっぽを向かれてもおかしくないわけで……そこら辺は現代よりシビアかも? そんな振り幅を見事にやり遂げた稀有なアーティスト、デヴィッド・ボウイ。プロとしてのキャリア自体は60年代のモッズBANDとしてスタートしつつも、ヒットに恵まれ英国のリスナー達に広く知られるようになったのは<フォーク期>。

 

  ボブ・ディランのイギリス上陸の影響もありつつ、モッズBANDでプロデビューしたがゆえに複数人数でなければ成し得ない音楽表現への反動なのか? 一人でアコギを抱え、自由に表現することのクールさと利便性を(日本での弾き語りブームも大体バンドブームと入れ替えだし)、ボウイがいち早く察知したことは想像に難しくない。しかしおおよそのフォーク・アーティストが、サイケやブルース等、より泥臭い方向へ進化していく中で、ボウイはフォークとSFを合体。ちょうどアポロ11号が人類初の月面着陸をする5日前にリリースされたのが名曲「Space Oddity」で、アポロ号の快挙を伝えるテレビのニュースや特番で繰り返し使用されることでヒット。まさに英国リスナー達にボウイの名前を刻んだ記念碑的楽曲。

 ヒットを受けてアルバム制作に乗り出したため、アルバム『Space Oddity』は全体的にストーリーテリングな叙情的フォーク・アルバム。しかしSF要素よりはファンタジー的な物語が強く、後年のLIVEでも度々披露していた「Wild Eyed Boy from Freecloud」を代表に、ハリー・ポッターさながらの冒険譚が美しく語られる。

 

『Space Oddity』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 そしてビックリするのが次のアルバム『The Man Who Sold the World』。レッド・ツェッペリンやブラック・サバスの台頭を受けてか、何とハードロックな一枚に! とは言ってもツェッペリンやサバスもアコースティック曲があるだけに、泥臭いセブンスのドライブ感と叙情的なアコギの音色は、意外と親和性が高い。結果ニルヴァーナのカヴァーでより認知を広げた隠れ名曲「The Man Who Sold the World」を始め、その後<ハードなギターにPOPな歌物>というグラムロックへの土台が見え隠れする。

 

『The Man Who Sold The World』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 その礎感が一番大きいのが次作『Hunky Dory』で、マニアの中では最高傑作と評する人が少なくない、メロディアスな隠れ名盤。冒頭の「Changes」から変化を恐れぬ宣言を高らかに歌い上げ、名曲「Life On Mars?」ではフランク・シナトラの大スタンダード「My Way」のコード進行をそのまま借用しながらも、全く新しいメロディーとSF的な価値観を加えて、見事オリジナルに昇華(ボウイマニアだったシド・ヴィシャスが「My Way」をカヴァーしたのも頷ける)。そんな代表曲達や「Quicksand」「Kooks」(かのThe KooksはここからBAND名を拝借)といった曲達がフォーク感を、ドライヴィンな「Andy Warhol」や「Queen Bitch」がハードロック感を引き継いでいるものの、POP度がグンと増している。そして佳曲「Oh! You Pretty Things」や「Fill Your Heart」ではボードヴィル風なストーリーテリングが綴られており、これが次作の最高傑作への布石となる……。

 

『Hunky Dory』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 そう、言わずと知れた大名盤『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』、通称『ジギー・スターダスト』。これまでのボウイの音楽性を全て内包しながらも、他の追随を許さぬほど激POPな仕上がりに。<5年後に破滅を宣告された地球(「Five Years」)を救いに、火星より舞い降りたロックスター(「Starman」「Ziggy Stardust」)>……というコンセプトもあり、映画のサントラのようにストーリーが断片的に語られ、それを彩るメロディやアレンジの素晴らしさにグイグイと引き込まれてしまう……客観的に聴いても大名盤なのは間違いないが、おそらく映画や演劇的な風景描写や(「Moonage Daydream」「Suffragette City」)、その後のLIVEでのシアトリカルな表現で(「Rock 'N' Roll Suicide」)、ジギーの良さがリスナーの中でもどんどん上書きされてしまうのが、このアルバムのスゴイところ。ハイレゾの高音質なら、その豊潤なアレンジをたっぷりと堪能出来る。機会があればお試しあれ。

 

『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 そしてそのジギーのツアーで訪れたアメリカから大いなるインスパイアを受けた『Aladdin Sane』は、さながら米国版ジギーの様相。SF色は影を潜め、代わりに語られるのは探偵小説のようなハードボイルド(「Watch That Man」)、郊外の狂気(「Drive-In Saturday」「Panic in Detroit」)、ドラッグ漬けのスター(「Aladdin Sane」「Cracked Actor」)etc……それらがハードなギターとジャジーなピアノという、一見ミスマッチな組み合わせながら、絶妙なトリップ感を味合わせてくれる傑作。名曲「Time」や「Lady Grinning Soul」でのメロウなバラッド感も良いアクセントとなり、お子様向けと思われていたグラムロックを芸術の域に押し上げたのは間違いない。

 

『Aladdin Sane』
(FLAC|192.0kHz/24bit)

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 結果ショービズ界のカルトヒーローとして君臨したボウイは、トリックスターな振る舞いに疲れ果て、若き日に慣れ親しんだ名曲カヴァー集『PinUps』を制作して一息つく。お馴染みThe Whoを2曲も取り上げるのはさすがモッズ出身(「I Can't Explain」「Anyway, Anyhow, Anywhere」)。同じく2曲取り上げたヤードバーズ始め(「I Wish You Would」「Shapes Of Things」)、英国ビートBANDの歴史を凝縮したアルバムで原点を確認したボウイは、その後また怒涛の70年代後半へと旅立つことになる……。

 

 ざっと振り返ったボウイの初期5年間……もちろん彼の代表作『ジギー・スターダスト』の冒頭を飾る「Five Years」から命名されたコンピレーションだが、たった5年でこの振り幅の広さよ!

 飽きっぽいということではなく、おそらくメディアに祭り上げられることで短命に終わるショービズの掟を、自らを刷新することで打ち破ろうと模索したのだろう。そんな若き日々の記録が克明に刻まれ、アルバムのみならず、その生涯を通じて<変化を恐れない>ことを発信し続けたデヴィッド・ボウイ。支持されるということは、表現者としては同じ物を求められてしまうという宿命も理解した上で、周到に、時に大胆に、その期待を見事に裏切り続けてきた。もちろん90年代頃には時代の変化に上手く対応しきれない時期もあったが、後輩達のバックアップや、かつての盟友ミック・ロンソン(初期5年間を支えた名ギタリスト。彼についてはいずれ単独で掘り下げたい)や、トニー・ビスコンティ(初期5年間と後期10数年を支えたプロデューサー)との再会など、数々のドラマを経て健在ぶりを示し、そして文字通りスターマンとなってしまった彼の、試行錯誤した若き日々は、必ずや多くの人に生きるヒントをもたらす作品揃い。この機会に青きボウイもチェックしていただきたい。

 


 

【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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Vol.24 Theme : デヴィッド・ボウイ追悼『★(Blackstar)』レビュー

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 TwitterでもInstagramでもFacebookでも、あらゆるSNSのタイムラインがいまだにデヴィッド・ボウイで埋まる1月末……ボウイロスの影響の深さはもちろん、「あんたもボウイ好きだったんかい!?」という驚きもありつつ、特に海外の音楽系サイトはボウイの後日談で持ち切り。

 出会った時期にもよるけど、ニューウェーブ全盛期に『スケアリー・モンスターズ』から入って、直後に映画『戦場のメリークリスマス』とメガヒット『レッツ・ダンス』に遭遇した自分にとっては、これほどまでに過去のアーカイブを掘るのが楽しいアーティストもなかなかいなかっただけに(作品毎の表現の振り幅がとにかく広いので)、やはりボウイロスを埋めるのには時間がかかりそう……。

  今回のニュースで出会った人にとっては、最新作『★(Blackstar)』は大人っぽい落ち着いた印象を与えるアルバムかもだけど、これがまたなかなかどうして、ボウイの歴史を俯瞰すると、これはこれでチャレンジングな一枚なので、その辺の解説を踏まえてご紹介。自分の大好きなアーティストが、ただの爺さんじゃなくて、スーパーエキセントリックな男として生涯を全うした事を、少しでも知って欲しいし。

 初めての人に超ざっくり言うけど、ボウイって大きく分けて2つの音楽性があって……<ロックンロール>か<ファンキー>だと思ってて。もちろんアルバム毎に細かく色んな要素が混ざってるから言い出すとキリがないんだけど、クラシック級の名作『ジギー・スターダスト』辺りのグラムロック全盛期のボウイに対するイメージが<ロックンロール>。グラム期を経てアメリカに接近した『ヤング・アメリカン』や『ステーション・トゥ・ステーション』なんかは<ファンキー>。みたいに、おそらく彼自身の中での大まかなモチーフというか、モードとして<ロックンロール>か<ファンキー>かに振り切った作品が点在してるイメージ。もちろんどれも<POP>な仕上がりに抜かりはないけど。俺個人のイメージだけど。

 んで前作『The Next Day』は割とロックンロール寄りだったと思うから、今回はファンキーに振り切ろうと思ったと想像してて。でもそこで今までみたいなファンキーさに行かない捻くれっぷりもボウイの魅力の一つ。現代のファンキーを体現するHIP HOPもこよなく愛する彼ならではのセンスで、ケンドリック・ラマーの傑作最新作『To Pimp A Butterfly』を参考に、現代のジャズ系ミュージシャンを起用することで、新たなダンサブルさを獲得。70歳を目前に、しかも自分の死期が迫ってるって時に、そんなエッジィなチョイス出来る!?

 エッジィなボウイが選んだジャズ・ミュージシャン達は、世界で初めてデータ音源だけで(アナログやCDを発売せずに)グラミーを獲得した新進気鋭のマリア・シュナイダー・オーケストラの面々。キャリアを総括したベスト盤『Nothing Has Changed (The Best Of David Bowie)』にて先行収録された「Sue (Or In A Season Of Crime)」を聴くと、Jazzのロウ(生)な感じでドラムンベースばりのグイグイなリズムと、ボウイのゴシックな歌とメロディーが気持ち良い。しかもこの時点ではケンドリック・ラマーより先にJazzミュージシャンとセッションしてるんだから、ボウイの千里眼おそるべし!

 そして「Sue (Or In A Season Of Crime)」のアルバムver.は、よりリズムを強調したロック寄りな解釈に。聴き比べると面白い。こうして常に今の自分をアップデートする感覚もボウイならではで最高だし、ハイレゾで聴くと演者の息遣いも聴こえてきそうな臨場感が鳥肌モノで、まるで自分もセッション中のスタジオに放り込まれたような緊張感が味わえるから、チャンスがあればお試しあれ。

 個人的なおすすめトラックは「'Tis a Pity She Was a Whore」と「Girl Loves Me」。前者は80年代ボウイが得意とした、煌びやかなアレンジにEMOい泣きメロが気持ち良い佳曲。後者はボウイの十八番、しゃくり上げる歌唱法“ヒーカップ”を駆使してアヴァンギャルドな緊張感を演出。チラリとクラフトワーク的なテクノっぽいミニマル感もあってカッコイイ。どちらも仕上がりは極上にPOPだし、映画や小説の一場面を想起させるような、聴き手のイマジネーションをバチバチに刺激してくれる。

 そしてここ数年のボウイはなぜか、シングルにしっとりした曲を持ってきて、アルバムだとアグレッシヴな曲もある、みたいな打ち出し方を好んでて……前作『The Next Day』しかり、今回の『Blackstar』しかり。それぞれの先行シングル『Where Are We Now?』も『Blackstar』もそういう作りなので、全体の印象が大人っぽくみられがちですが……アルバムにもしっかりバラード? まで行かないにしても、落ち着いたナンバーを配してバランス感も最高。今作では後半の「Doller Days」の美メロにうっとりしつつ、最終曲「I Can't Give Everything Away」でタイトル含め、ボウイの遺言として聴くと涙を禁じ得ないEMOい展開へ。

 己の死を覚悟しながら新作を準備し、最終曲で“俺は全て諦めるわけにはいかない”と歌い、リリースの2日後ひっそりと天国に召されるなんて……もちろん、ここまでの道のりも決して平坦ではない……相当な覚悟と、表現への欲求。我々には想像もつかない葛藤があったかと思うと、このアルバムの聴き方もより深く味わえるのではないかと……年齢に関係なく、ネガティブな状況に負けるな! と背中を押してくれるステキな作品。この機会に是非お試しあれ。

 

『★(Blackstar)』
David Bowie

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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Vol.23 Theme : 「そろそろ肉食の時代に揺り返すんじゃね?
 

 

 遅ればせながらあけおめ。遂に4度目の年男を迎えてしまう2016年の一発目は、レミー・キルミスターの訃報を受けてMotörhead(モーターヘッド)をご紹介。そもそもロックを語るのにこんなにふさわしい男はなかなかいないって事に、亡くなってから気付くとは……どんな物でも失ってあらためて気付かされる事ばかり……日々を大事にしなければ。

 そんなシンミリが似つかわしくない輩レミーは、ジャック・ダニエルのコーラ割りを愛飲するアル中にして、天龍や長州力もびっくりのハスキーボイスでスピーディな轟音を奏でる、英国を代表するロックンロールBAND、モーターヘッドのベースVo.にして創始者。歯に絹着せぬ物言いや破天荒な生き様なのに、どこか飄々としたユーモアも忘れない、まさにロックンロールの生きる伝説(だった)。

  そんな彼はもともと、1970年代半ばにサイケデリックでプログレなBAND、HAWKWIND(ホークウインド)のBa.としてシーンに降臨(正確には60年代にROCKIN’ VICKERSというモッズBAND、SAM GOPALというジミヘン的サイケBANDの一員としてデビュー済み)。イギリス版グレイトフル・デッドと称され、サイケでスペイシーなサウンドでなかなかの人気を博したホークウインドだが、北米ツアー中にレミーがコカイン所持の容疑で逮捕され、ツアーをキャンセル。その責任を取らされつつ「そもそも素行が悪い」との理由でレミーは解雇……さすがロックンローラー(笑)。

 ホークウインドが代わりのベーシストとして、同郷ロンドンのサイケBANDピンク・フェアリーズのメンバーを迎え入れると、レミーはここぞとばかりにピンク・フェアリーズの他のメンバーと新BAND、Motörheadを結成。そもそも「モーターヘッド」というBAND名も、レミーがホークウインドとして書いた最後の曲のタイトルから取っており、復讐する気満々。さすがだわレミー(笑)

 そこから2015年まで40年間、紆余曲折ありながらも一貫してラウドで性急で、ハードにドライヴィンするロックンロールを、モーターヘッドとして奏で続けたレミー・キルミスター。ハードロックでもパンクでも、ましてやメタルでもない、でもその全てを内包したかのようなサウンドは充分に革新的だったし、後輩BANDをツアサポに付けてフックアップしたり、大好きなラモーンズに捧げる曲を作ったり、音楽愛に溢れた義理人情っぷりも含めて、全世界のロックンロール・ラヴァーを虜に。代表曲「Ace of Spades」は言わずもがな、ストーンズのカヴァーとかしちゃう意外なセンスも含め、未聴の人は必聴。そして追悼。ありがとうレミー!

 

最大のヒット作にして名盤!
『Ace of Spades』
Motörhead

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【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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Vol.22 Theme : 「音楽家は政治を語るべきなのか、語らざるべきなのか
 

 

 2015年はどんな年だった? 世間的には決してハッピー一色ではなかった……ってのが皆の共通認識なのかな……グッドニュースよりは悪い知らせの方が印象に残ったんじゃない? オリンピックを巡るドタバタや、イデオロギーの衝突、海外でもイデオロギーや宗教の軋轢が連鎖してる印象だし、ここ日本でも政治に関するニュースでほっこりしたり喜んだりした記憶はほぼ無かったかもね……。

 そんな政治不信をひっくり返すべく始まったのがPUNKの一つのきっかけでもあるんだけど、今回はアメリカで最初にポリティカル(政治的)なメッセージを発信したPUNKバンド、デッド・ケネディーズを紹介するよ。バンド名からしてポリティカルな匂いがプンプンしてるでしょ?

  1978年にサンフランシスコで産声を上げた彼ら、通称デッケネは、元々ロカビリーをやっていたギタリスト、イースト・ベイ・レイが、当時勃発したPUNKに触発されてスタートしたので、いわゆるストレートなPUNKっぽさ……性急な8ビートにシャウト気味なVo.……っていうスタイルとはちょっと一線を画していたというか……どこかキッチュでキャンプな、まるでB級映画のサントラのようなまがまがしさを放ってるんだよね。勿論ビートは早いんだけど、サーフ/ガレージのようなエコーたっぷりのギター(「Holiday In Cambodia」)や、ウェスタン映画のようなギャロップ・ビート(「When Ya Get Drafted」)を、PUNKという解釈で倍以上のスピードで演奏したかのような前のめり感が超気持ち良い。

 そして常に半裸でのたうち回るVo.ジェロ・ビアフラの独特の声……高いダミ声にビブラートたっぷりなスタイルは、その後のフェイス・ノー・モアとかガンズ&ローゼスに影響大な個性。アンセム的名曲「Kill The Poor」冒頭の歌い上げから畳み掛けるバンドインの気持ち良さ、「Drug Me」やこれまた大名曲「Too Drunk To Fuck」等の早口言葉みたいなカタルシスはデッケネの象徴。空恐ろしいタイトルなのに、どこか飄々としたユーモアを漂わせる効果も絶大。勿論タイトルや歌詞、そもそもバンド名も政治的なブラックユーモアだらけなので、アメリカよりも先にブラックジョーク好きなイギリスでチャートインするという逆転現象が起こったり、LIVEではビアフラが客に殴られながら歌ったりと、まさにPUNXらしいカオスに包まれていたのもデッケネらしさ。

 しかし80年に発表された1stアルバム『フレッシュ・フルーツ・フォー・ロットン・ベジタブルズ』は名曲揃いの大名盤なのは間違いなく、その鮮烈なサウンドはキッズから、ブラックユーモア好きのインテリ層まで同時に虜にするという離れ技を見せ、一気に全米アングラ・シーンにその名を轟かせたんだけど……エイリアンのデザインでお馴染み天才画家H.R.ギーガーの卑猥なポスターを封入したことで猥褻罪を巡る裁判沙汰になり、その辺からバンド内の人間関係にも不協和音を生み出してしまったというか……裁判の疲弊や、ビアフラ以外のメンバーへの印税未払い等、数々のトラブルが巻き起こり、ビアフラvsイースト・ベイ・レイの間に決定的な溝が出来てしまい、バンドは86年にあえなく解散。2001年にはレイを中心に、ビアフラ以外のメンバーで再結成を果たし、現在も全世界をツアー中。当のビアフラはレーベルを運営しながら数々の音楽プロジェクトに参加しつつ、サンフランシスコの市長選からアメリカの大統領選挙までチャレンジし、現在もポリティカルな活動に余念がない……どんな状況にあろうともブレないPUNK魂、この機会に是非チェックせよ。

 

 さて、俺にとっての2015年は、ザ・スターベムズのメンバーチェンジがあり、勿論それはバンドにとっては苦境に立たされたような状況だったけど、メンバーやスタッフ、そして勿論リスナーやLIVEで実際に観てくれたオーディエンスに支えられて、スターベムズとしての新たなサウンドやパフォーマンスを体得できたような……うまく言えないけど「雨降って地固まる」みたいな一年だったかも。ひとまずありがとう、来年はもっと精進して更にスゴい音を届けるように頑張ろ。良いお年を!

 

今回ご紹介した作品!
『Fresh Fruit For Rotting Vegetables』
Dead Kennedys

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【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。
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