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Vol.26 Theme : PUNX達が言った『ヒッピーはイーグルスでも聴いてろ!』でイメージダウンした人も多かったはず

日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」バックナンバーはこちら

 

 70年代の巨星達の訃報が続く2016年初春……レミーボウイと来て、今度はアメリカンROCKの大御所、グレン・フライも遂に……とは言え80’s PUNK/NEW WAVE世代にとっては、ウェストコーストのいなたいROCKはある種の仮想敵だったので(サウンド、ファッション、生き様、全てが真逆なので)、俺がイーグルスをちゃんと聴くようになったのは大学生も後半の頃……先輩達は微妙に70年代に間に合ってるから「オールマンとかドゥービーとか判んねぇ奴ぁダメだ」とか言ってくるわけで……(笑)、俺も負けず嫌いなもんだから、頑張って「ディグりましたよ! 」とか言って背伸びして話を合わすわけで……(笑) というわけで今回は私見イーグルス記をば。

 スタートは70年代の歌姫リンダ・ロンシュタットのバックBAND。フォーク・グループの紅一点としてデビューした彼女は、その後イーグルス全員と関係を持ったとか、ミック・ジャガーと浮名を流したとか、様々なロック伝説を作った稀代のヤリマ……悪女。超面白ぇ……いや、興味深い逸話が沢山あるので、いつかまた単独で掘り下げたい。

 ともかくバックバンドとして集まったメンツが意気投合し、新たなバンドをスタートさせるという、非常に爽やかなスタートがPUNK少年的には気に食わなかったんだけど(笑)、後で知ったイイ話として、当時グレン・フライが住んでたアパートの別の部屋から弾き語りが聴こえてきて、あまりにも良かったので声をかけたところ、それがデビュー前のジャクソン・ブラウンで、彼がその曲をイーグルスに提供した事によって生まれたのが、1stシングルにして最初のヒット「Take It Easy」。その気前の良さや、伝説のニコにも楽曲提供してたりするし、何より繊細で若干ポリティカルな曲を書くジャクソン・ブラウンは、PUNXでも好きな人が多いはず。

 さて順風満帆なスタートを切ったイーグルスは、続く2ndで今やスタンダードとしておなじみ「Desperado」を早くも完成。しかしこれが結果的にイーグルスを<バラードが得意BAND>として認知させる事になり、ハードROCKやPUNK好きから敬遠される原因となっていく……その反省から次作『On The Border』からはROCK色を強める事に。代表曲「Already Gone」や表題曲「On The Border」「James Dean」辺りは、それまでのフォーク、カントリー、ブルーズ色を残しつつも、全員がメインVo.を取れる強みを活かしたコーラスワークでPOPな仕上がりに。続く『One of These Nights』でも表題曲を始めハードかつファンキーな曲を増やすが、ドン・ヘンリーとグレン・フライの2人で独裁的にバンドを仕切り始めてしまったため、バンジョーやマンドリンもこなした創設メンバーのバーニー・レドンが脱退してしまう。この辺はストーンズがブライアン・ジョーンズを失った顛末に似てる気がする……そして、その後どんどんビッグになる展開まで似てる!

 さぁもっとROCKしたるで! と意気込んだイーグルスは、POPなハードROCKをやっていたジェイムズ・ギャングから、新ギタリストとしてジョー・ウォルシュ(大好き! イーグルス本体より好き)を招聘。テクニカルさとユーモアを持ったジョーの加入は、バンドに飛躍的な向上をもたらし、遂に大名作『ホテル・カリフォルニア』を完成。表題曲「Hotel California」はもちろん、ジョーに引っ張られた「Life In The Fast Lane」や「Victim Of Love」等で、前作からの課題であったハードさを完全に獲得。でもジョー本人は超ロッカバラッドな「Pretty Maids All In A Row」を歌っちゃったり……やっぱジョー・ウォルシュ最高!

 しかし成功と共に巨大になり過ぎたイーグルスは、ドン・ヘンリーとグレン・フライの中心メンバーvs残りのメンバーみたいな対立が深まり、結果アルバム『Long Run』リリース後に解散。元メンバー同士の仲の悪さは俺も絶賛経験中なので(苦笑)、しょうがねえよ人間だものとしか言いようがないが、その後1994年にイーグルスは再結成。なんだ仲直り出来たんじゃんと思ってたら、コンスタントに発表した新譜『Hell Freezes Over』と『Long Road Out Of Eden』もバカ売れしたためか、また仲が悪くなって(笑)、メンバーのドン・フェルダーが解雇され裁判沙汰にまで発展……なんだ全然仲直りしてねーじゃん!(笑) な結果に。

 あれ? 今回グレン・フライのイイ話が全然出てこなかったけど(ゴメン)、80年代のソロ期は「The Heat Is On」「You Belong To The City」はじめ数々のヒット曲を残し、そもそもイーグルスでもメインのソングライターだっただけに、ハンパない才能の持ち主なのは間違いない……そもそもグレンがジャクソン・ブラウンと出会ってなければ「Take It Easy」も生まれなかったわけで、彼がアメリカンROCKに残した足跡はとてつもなく大きいはず……この機会に、俺のこのちょっと斜めった視点で? イーグルスに触れてみるのもオススメだよ。とにかく名曲、良曲多し!

 

名曲の数々を収録のベスト盤(試聴可)!

The Studio Albums 1972-1979

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ハイレゾ

 

イーグルス 配信一覧はこちらから(ハイレゾも複数タイトル配信中!)

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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ジャズの楽しさ、面白さ、わかりやすさを、ひとりでも多くの方に知っていただく連載第3回。

編集部のAさんからの今回のお題は、年季の入ったジャズ・ファンなら誰でも知っている定番中の定番であろうオスカー・ピーターソンWe Get Requests』。moraのジャズ作品売上ランキングで昨年末の月間1位を獲得したので、そのお祝いもこめて、改めてこの作品の魅力を紹介してみよう、というのが今回のテーマです。

 

We Get Requests/The Oscar Peterson Trio

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1964年の録音ですから、今から50年以上も前の演奏です。「そんな古いものが今、なぜ1位に?」という疑問は当然あります。現在の日本のヒットチャートで春日八郎や二葉百合子がゲスの極み乙女。や西内まりやより上位に来ることは100%ありません。が、「新しいものだけが売れる」わけではないのがジャズの世界。LPレコードの時代に評価を確立した作品が、CD化されても聴き継がれ、さらにハイレゾになっても愛され続ける……これはジャズがいかに息の長い(いいかえれば人生を通じて楽しめる)音楽であるかを示すものでありましょう。

『We Get Requests』というアルバム・タイトルには、“リクエスト承ります”的なニュアンスが感じられます。そして、この作品を日本で最初に売るにあたって(1965年)、レコード会社のスタッフは『プリーズ・リクエスト』という邦題をつけました。なんと覚えやすい和製英語でしょう。しかも選曲が親しみやすいのです。64年当時の全米シングル・チャートにランクインしていたボサ・ノヴァ「イパネマの娘」に加え、やはりボサ・ノヴァの代名詞的1曲である「コルコヴァード」、“日本には一度も来たことのない世界最高峰のエンターテイナーのひとり”バーブラ・ストライサンドの名声を決定づけた「ピープル」、同名の大ヒット映画の主題歌である「酒とバラの日々」など、64年当時のファンに大いに親しまれ、今でも時おり耳に入ってくることもあるナンバーを、オスカー・ピーターソンは次々と極上のジャズに料理していきます。もちろんジャズですから即興演奏のパートはありますが、原メロディから極端に離れたプレイはしていません。過度な加熱や香辛料で素材のおいしさを奪い去る、などという野暮なことはしないのです。さすが名シェフ、ピーターソン! 64年のアメリカにおける最大の音楽的トピックであったろう“ビートルズ旋風”から距離を取った選曲をしたのも正解だったかもしれません。

でもこのアルバムは表題に反し、有名曲ばかりで構成されているわけでもないのです。ピーターソン自身の書き下ろしナンバーもありますし、スタッフ・スミスというヴァイオリン奏者が作曲した「タイム・アンド・アゲイン」の存在をこれ以前から知っていた、というファンはウルトラ・へヴィーなジャズ狂だと思います。そして本作に収められたことで、一躍ジャズ好きに広まったメロディもあります。それが6曲目の「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」です。

アナログ盤で、この曲はB面トップに位置していました。レコード針が乗せやすい位置になったということもあるのでしょう、60年代中ごろから普及するいっぽうだったステレオ機器のチェックにも頻繁に使われました。弓弾きから指弾きに替わる時のベース奏者のタイミング、ニュアンス豊かなドラマーのブラッシュ(いわゆる“刷毛”)やシンバルの音色の伸び、そして御大ピーターソンの輝かしいピアノ・タッチが2つのスピーカーから生々しく、立体的に浮かび上がってきたら、そのオーディオ・システムは折り紙付き、というわけです。CD、ハイレゾと器は変わっても、『We Get Requests』をシステム・チェック用に使っているリスナーも多いのではないでしょうか。

Aさんからは「タッチの音や吐息まで聴こえるというのが新鮮に感じました。ベースの音も、エレキ(ロック)に慣れた耳からすると微かに響いてるだけ、というバランスが……」という感想をもらいましたが、吐息まで聴こえるのもまた、この場合は生々しさを加味しています。楽器から少し離れたところに必要最小限のマイクを置いて音楽家に同時演奏をさせ、空気もまるごと同時に捉えてしまおうという感覚。これは「異なる場所や時間で録られた音をミキシングで合わせていく」ポップスのサウンド作りに慣れた方には軽いショックかもしれません。

最後にジャケットの話をしましょう。右側にいるのが御大ピーターソンですが、なぜ他のふたりが演奏しているのに彼は笑顔で立っているのでしょうか? 僕がずっと感じていた疑問は、ピーターソンのライヴ(もう生で見ることは叶いませんが)に接した時に解けました。まずドラマーがひとりで演奏し、続いてベーシストがそれにあわせ、盛り上がったところでピーターソンがピアノのところまで歩んで一礼、そしてプレイを始めるのです。つまりこのジャケットは「ステージに登場し、礼を終えて顔をあげた瞬間」のピーターソンを捉えているのです。また彼のライヴでは、大半の奏者と違って、ピアノがステージ上手(客席から向かって右)にセットされていることも特徴です。その理由としては、ピーターソンの楽器が大型で横幅を取るから(通常は88鍵だが、彼のピアノは97鍵)、そしてベース奏者がピーターソンの左手の動きを見ながらベース・ラインを作ることができるように(=低音のぶつかりあいを避けるため)という配慮があった、と聞いたことがあります。

そう考えつつもう一度、「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」の響きに身をまかせてみませんか?

 


 

■執筆者プロフィール

 

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原田和典(はらだ・かずのり)

ジャズ誌編集長を経て、現在は音楽、映画、演芸など様々なエンタテインメントに関する話題やインタビューを新聞、雑誌、CDライナーノーツ、ウェブ他に執筆。ライナーノーツへの寄稿は1000点を超える。著書は『世界最高のジャズ』『清志郎を聴こうぜ!』『猫ジャケ』他多数、共著に『アイドル楽曲ディスクガイド』『昭和歌謡ポップスアルバムガイド 1959-1979』等。ミュージック・ペンクラブ(旧・音楽執筆者協議会)実行委員。ブログ(http://kazzharada.exblog.jp/)に近況を掲載。Twitterアカウントは @KazzHarada

 

 

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■津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介していきます。

 

File12. 夜想曲 第2番(作曲:フレデリック・ショパン)後編

 

※津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています

 

前編に引き続き、名曲としての魅力を確認していきましょう。

 

前回は曲の出だし、「ソミー レミ レードー」というメロディーの説明をしました。

続くメロディーは「ソミー (低い)ラ (低い)ラー ミソー ファー」です。【解説ポイント04】 前のメロディーが穏やかだった分、ここで高い「ラ」まで上がったメロディーが、聴いている人の心を強く打ちます。【解説ポイント05】 そしてその切なさを少し引っ張ってから、「ファ」の音に落ち着きます。

さて、和声はどうなっているでしょう。前のメロディの時と違って、ここではメロディーの高まりを和声がしっかりと支えています。 この連載で何度も解説してきた、マイナー主和音を、あえてメジャーにしてしまうことで、心に強い切なさや震えを感じさせる和音が、見事にメロディーを支えているのです。

このメロディのコード進行は、 B B/D♯ D♯dim/E Em です。 今回はDのキーで説明していますから、本来はBmであるべきところが、Bになっています。 そして「ファ」の音に落ち着くまで、その切なさを引っ張っている和音(D♯dim/E)は、最初のメロディで2つ目に独特の雰囲気を醸し出した、あの和音と同じ構造です。【解説ポイント06】(dim=ディミニッシュドと呼ばれる独特の響きを持つ減三和音で、低音が半音でぶつかっている和音構造) これもまた、ショパンの圧倒的なセンスと才能が光るところです。

 

続くメロディー「レー ミー シ ドーラー」も、聴いている人の心を豊かに揺さぶます。【解説ポイント07】 その前の高まりから一度落ち着きながら、「ミーシ」のところではまた悲しみのような切ない感じが心を動かします。とても美しいメロディです。【解説ポイント08】  コード進行を見るとわかるように、また先ほどのBと似た効果をもたらす和音、つまり本来マイナーコードのF♯mであるべきところがメジャーコードのF♯7 になっています。 これは音楽の不思議なところなのですが、多くの人は、ドレミファソラシドという基本の音階の、ソがソ♯になった瞬間、心が切ない感じになるのです。 その効果がここで活かされているわけです。

さらに「ラー」のところも、何とも言えない不思議な雰囲気がしますね。 実はこれもG♯dim、そう、前編で解説した、あの独特の響きを持つ減三和音です。【解説ポイント09】  そして、この「不思議な感じ」に変化したこの表情は、次のメロディーを鮮やかに引き立たせます。 「(低い)ソ (高い)シ ラ ソファミファラシ ドー」というメロディーです。 ここまでの色々な表情の変化を受け止めて16小節のテーマを締めくくるセクションでありながら、低いソが鳴った直後にこれまでで最も高い音程である「シ」まで一気に上がるメロディーが、とても鮮やかに心を揺り動かしてくれます。【解説ポイント10

さらに、ここでもまた特別な和音が力を発揮しています。 「(低い)ソ (高い)シ ラ」を支えるのは、Asus4というコード。これは、和音の3度が4度に上がっているコードで、移動ドで表現すると「ソ・ド・レ」という音で構成されています。普通なら、Aというコードを使う場所です。Aを構成している音は「ソ・シ・レ」です。 ここでメロディーをよく見てみると、 「(高い)シ」が大事なポイントとなっています。「シ」のメロディーに対して、普通の和音「ソ・シ・レ」であれば、全く問題はありません。ところが、ショパンはあえて「ソ・ド・レ」という和音を使っています

これはとても興味深いことです。 なぜなら、「ソ・ド・レ」の「ド」が、メロディーの「シ」と半音違いなので、音がぶつかってしまうのです。 普通、クラシック音楽ではタブーとされる半音のぶつかり……。それを、ショパンは意図的にやっているのです。その結果、最初のメロディーのところで《減三和音とベース音は音がぶつかっていて、本来は無理のある組み合わせになっている》と解説した時と同じように、見事にこの曲独特の雰囲気を醸し出すことに成功しています。

 

テーマに続く、展開のセクションを見てみましょう。 このセクションのポイントは、キーが「D」と「A」のどちらにも聴こえるため、感覚が「Dのキー」と「Aのキー」を行ったり来たりするところです。 バッハを始めとしてクラシックでは、4度上や5度上のキーへの転調が、場面を変えるような効果としてさりげなく、そして巧みに使われますが、ここではそのような効果が実にうまく使われています。 最初の4小節間のメロディーは本来だと「シドレー ミーレ レーラー」なのですが、キーがAに移って「ミファソー ラーソ ソーレー」と歌っているようにも聴こえるのです。【解説ポイント11】 しかし次の4小節間のメロディー「ラシドドド ド シドレード ドーソ」は、G Gmというコード進行も含め、キーは明確にDなのです。【解説ポイント12】ところが次のセクションでは間違いなくキーがAに移ります。 「ドーシーラ ソーミ」というメロディーが、D♯dim B7/D♯ E F♯m というコード進行にのって歌い、【解説ポイント13】  Aのキーのまま、「ファー ミレミ ドー」と落ち着きます。コード進行は、Bm7 E7 A です。【解説ポイント14】 

さて、キーがAに転調してしまったので、テーマのキー、Dに戻らなければなりません。 普通なら、AからA7に移る、などの施しをして、Aがトニックコードではなく、ドミナントコードであることを匂わせるだけでスムースにDのキーに転調できるのですが、ここでショパンはとんでもないコード進行によるピックアップを経てDへの転調に至ります。 なんと、A A♭7 E♭G B/F♯ E7 A7 というコード進行です。【解説ポイント15】 大学生の私は、この部分を分析した時も、ポップスやジャズでもほとんど見ることのない圧倒的な音楽性に驚嘆してしまったのでした。

 

さて、夜想曲 第2番は、終盤にまだ新たな展開があるのですが、誌面の都合もあって、今回の解説はここまでにしておきます。

その名曲性に打たれた大学生当時の私の驚きも含めて、2回にわたってご紹介しました、ショパンの夜想曲 第2番。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンと並ぶ圧倒的な才能を持ちながら、残念ながら夭逝してしまったショパンの名曲を、ぜひ色々聴いてみて下さい。

オーケストラではなく、ピアノだけで伝わる名曲の素晴らしさ……ここにも、名曲の原点があるのです。

 

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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■津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介していきます。

 

File12. 夜想曲 第2番(作曲:フレデリック・ショパン)前編

 

※津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています

 

今回はショパンが1831年頃に生んだ「夜想曲 第2番」をご紹介します。

ショパンは1810年、ワルシャワで生まれました。ピアノ作品が多く、「ピアノの詩人」と呼ばれたりしますが、ピアニスト、作曲家としての才能はかなり非凡で、7才でポロネーズを2曲作曲、8才の時に公開演奏を行い、「第2のモーツァルト」と呼ばれました。
19才の時ウィーンでデビュー、演奏会をした時には既に数多くの作品を持っていたショパンですが、10代で生んだ作品の数々をもとに、その早熟さがバッハやモーツァルト、ベートーヴェンを超える、と言う音楽学者もいます。

この「夜想曲 第2番」も1981年ですから、ショパンが21才の頃に生んだ作品ですね。確かに若いです。

夜想曲、つまりノクターンは一つの楽章からなる、叙情的なピアノ作品のことですが、ショパンは生涯で21曲の夜想曲を残しています。
その中で最も有名なのが、この第2番です。

ところで音楽学者によると、第2番のような初期の作品は、ショパンより30才ほど年上で、夜想曲というスタイルを生んだとされるアイルランドの作曲家ジョン・フィールドの影響が見られる、ということです。確かに晩年の作品、切なさに満ちた夜想曲第19番などはその複雑さと繊細さがショパンの魅力に満ちています。

 

個人的な話になりますが、12月にリリースした私のアルバム『Anming Piano Songs』も、ある意味、夜想曲集と言えます。 左手でコードワークによる伴奏を、そして右手で切ないメロディーを歌うように奏でる、というスタイルで、バッハからいずみたくまで、色々な作曲家の名曲を単一楽章にてアレンジしているわけですから。
おそらくそのためでしょう、今回のアルバムを構想した時、一番最初に選んだ曲は、私がショパンの曲を聴くきっかけとなった「夜想曲 第2番」でした。
クラシック音楽は、現代のロックやポップスにも大きな影響を与えていますが、ポップスのピアノバラード演奏は、夜想曲というスタイルを受け継いでいる、と言えるかも知れません。

 

さて、ショパンは「英雄ポロネーズ」「革命」「バラード 第1番」「雨だれ」「別れの曲」「子犬のワルツ」などを始めとして、多くの人に愛される作品を数多く生んでいますが、残念ながら1849年の10月、長い間彼を苦しませた肺結核のため、39才の若さでこの世を去りました。
しかしクラシックの、特にピアノ作品においてショパンの存在はとても大きく、後世の作曲家、ピアニストに大きな影響を与え続けました。

 

それでは早速、名曲としての魅力を確認していきましょう。
(※以降、メロディーは移動ドで音階を表します)
(※ 原曲のキーはE♭ですが、コードについては参考音源のキーに合わせ、Dで説明します)

 

ショパンは演奏について、ピアノが「歌う」ことを大事にした、と言われていますが、そんな彼らしい、とても美しく「歌う」メロディーです。 メロディは「ソミー レミ レードー」。穏やかで優しいメロディです。【解説ポイント01

 

メロディは穏やかですが、「レミ」のところで和音が何とも言えない雰囲気を出しています。【解説ポイント02
その理由は、減三和音、コードではdim(ディミニッシュド)と呼ばれるコードにあります。このコードの響きが持つ、不安な感じ、怪しい感じを巧みに使っているのです。

しかもこの和音が響く時、ベース音(低音・根音)は前の和音、つまりメロディー「ソミー」 を支える和音のまま変わりません。実はこの和音とベース音は音がぶつかっていて、本来は無理のある組み合わせになっているのです。音楽理論として考えると、本来はタブーに近い和音構成なのです。ところが結果的には、この和音構成にすることで減三和音が持つ雰囲気に加え、さらにこの曲独特の雰囲気を醸し出すことに成功しているのです。

 

私がまだ大学生で、やっとプロのミュージシャンになったばかりの頃でした。私は大好きだったこの曲を、クラシックの譜面からジャズやポップスのコード譜に起こし直そうと試みました。  そして音を分析し始め、曲の2つ目のコードを調べて驚きました。C♯dim/D……コード進行については相当詳しい私でも、見たことがないコードだったからです。「Gm6/Dの間違いではないか……?」と思い、確認しましたが、音符はやはりEdim/Dなのです。もちろん、実際に音の響きを耳で聴いても、C♯dim/Dというコードが持つ独特の響きは、Gm6/Dのような他のコードでは再現できません。私はその和音をさりげなく使うショパンのセンスに、深く感動しました。

後ほど紹介しますが、分析を続けると、ポップスでは一般的に使わない高度なコードの使い方や、ジャズでもなかなか見かけない複雑なテンションコードの解釈が、他にもありました。150年以上前のクラシック音楽には、ジャズやポップスがほとんど使わない複雑なコード進行をいとも簡単に活用しながら、しかも誰もが自然と耳に馴染んで好きになる、そんな普遍的な楽曲がたくさんある……。ショパンをきっかけに、改めてクラシック音楽家に対する畏敬の念が私の中に生まれたのです。

それ以来、「革命」や「英雄ポロネーズ」を始め、ショパンの曲を研究しては、その和音の使い方の凄さに感動し、自分の音楽へ活かせないか試行錯誤したものです。一部の音楽学者が、ある側面ではショパンがバッハやモーツァルト、ベートーベンよりも才能がある、と評する気持ちも、私にはよくわかります。

 

さて、音の話に戻りましょう。「レードー」の「ド」の時にも、和音の持つ魔法が仕掛けられています。 メロディーが「ド」なのに、ベース音(低音・根音)は「シ」つまり半音、下に下がり始めているのです。【解説ポイント03

曲の流れで聴くと全く気になりませんが、この「ド」が鳴っている時の音だけを響かせると、音楽としては成立し得ないほどの不協和音となっています。しかし、あえてショパンがその音を選んでいる理由は、私にもわかります……音楽が、理論ではなくあくまで、作者の心の震えを音に託したものだからです。

まず美しいメロディーがあって、そのメロディーを支える和音が感情をさらに豊かにする。その姿勢で創ろうとすれば、このメロディーが「ド」に落ち着いた時、既に次の和音に向けてベース音(低音・根音)が半音下がり始めるのはとても自然なことなのです。作曲という行為が理論を超えている、そしてそのことで、音楽に詳しくない、理論がわからない、一般の人たちに、作曲家のイメージが正しく伝わる……そんな「名曲の理由」の神髄が、このショパンの夜想曲には宿っているのです。

 

(後編に続く)

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

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【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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年始の訃報以来、ますますその偉大な足跡に注目の集まるデヴィッド・ボウイ。

moraでは連載陣に特別寄稿を依頼。その追悼記事をまとめました。

 

元ジャズ雑誌編集長、原田和典さんによる『★』レビュー
http://blog.mora.jp/2016/01/18/harada-jazz-02.html

若手ジャズミュージシャンを多数起用したことでも注目を集める新作にして遺作『★』の聴き所を解説。

 

「今さら聴けないルーツを掘る旅」連載中の日高央さんによる『★』レビュー
http://blog.mora.jp/2016/01/28/hidaka24.html

新作からも存分に感じ取ることができる、そのロックスピリット溢れる“生き様”にフォーカスしたレビュー。

 

デヴィッド・ボウイの初期5年間を振り返る。~ベスト盤『Five Years』とともに~
http://blog.mora.jp/2016/02/03/hidaka25.html

日高央さんによる特別寄稿の第2弾。きらびやかなスターとしての絶頂期に至るまでの、フォーク/ロック期のボウイについても知ることができます。

 

 

デヴィッド・ボウイ 配信一覧はこちらから

 

 

 

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