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第17回:マイケル・ジャクソン『オフ・ザ・ウォール』

~一夜にしてハイレゾの怪物アルバムに~

 

 

 マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』がついにハイレゾで登場した。FLAC(96kHz/24bit)での配信。アルバムへの思いはいろいろあるが、まずはハイレゾを聴いてみよう。

 1曲目の「今夜はドント・ストップ」から猛烈な音がシャワーのように飛び出してきた。ひとつひとつの楽器音に張りがあり、まるで駿馬の筋肉をもつような音である。そのせいか細かいパーカッションの音があちこちでよく聞える。これは「粒立ちがいい音」というよりも「生命感のある音」と言ったほうがふさわしい。続く「ロック・ウィズ・ユー」も同じくらいパワフルだ。加えてバッキング・コーラスの繊細な響きにも耳を奪われた。

 

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 この2曲を聴いただけで、『オフ・ザ・ウォール』のハイレゾがこれまでのハイレゾとは一線を画す仕上がりだというのが分かる。これ以上言葉で説明すると、とんでもない形容詞を使いかねないので、ここは僕なりにハイレゾの音をイラスト化したので、そちらをご覧いただきたい。実際のハイレゾの音はこのイラストでも十分に描けなかったくらい精緻でパワーあふれる音、生命力のあふれる音である。

 

 一般にマイケル・ジャクソンといえば『スリラー』が最高傑作とされている。しかし音楽的な好みなら『スリラー』よりも『オフ・ザ・ウォール』を好む人も多い。かくいう僕もそうだ。『オフ・ザ・ウォール』には、丁度ビートルズの初期がそうであるように、エヴァー・グリーンなマイケル・ジャクソンを感じるからである。若いマイケルの音楽性に脂の乗りきったクインシー・ジョーンズがマジックを施したアルバム。それが『オフ・ザ・ウォール』であろう。

 ただ音質的にはやはり『スリラー』のほうが上という思いはあった。というか『スリラー』があまりに高音質すぎたのであるが。その『スリラー』が15年以上も前にSACDという高音質ソフトでリリース(現在はハイレゾでも配信中)されたのにたいして、『オフ・ザ・ウォール』はずっと音沙汰なしだったのだ。

 そんなところにようやく届いた『オフ・ザ・ウォール』のハイレゾなのである。嫌でも期待は高まるのであるが、そんな期待を軽々と越えるほどハイレゾの音質は、それこそ想定外だった。エヴァー・グリーンなマイケルやクインシー・ジョーンズのマジックと張り合うほどに、ハイレゾの高音質がバシバシと押し寄せてくるのである。これらが三位一体となって、ハイレゾで聴く『オフ・ザ・ウォール』は『スリラー』なみの怪物アルバムになった気がする。

 

 ここ数年ハイレゾを聴く機会が多くなったのであるが、次から次へと配信されるハイレゾを聴いていると、正直、最初の感動が薄れてきて耳が慣れてしまったところがある。同時に音の良し悪しを判断するハードルが上がってきたことも実感していた。要するに、好むと好まざるにかかわらず、少々の高音質では感動しない体質になってしまったのである。

 しかしこの『オフ・ザ・ウォール』のハイレゾは、そんな僕の麻痺しかけていた耳に一撃を与えた。「今夜はドント・ストップ」が始まるや、まるで生まれて初めてハイレゾを聴いたような衝撃だったのだから。たぶん僕だけでなくほとんどの方が同じ感想をもたれると思う。ここのところ「ハイレゾのおススメは?」と訊かれると、あれもこれもと浮かんで何も選べなかった状態であったが、これからは『オフ・ザ・ウォール』を上げることに躊躇しないであろう。そう考えると『オフ・ザ・ウォール』は一夜にしてハイレゾの代表作になった。その意味でもやはり怪物アルバムだ。さすがマイケル・ジャクソンと言うほかはない。

 


 

☆大好評配信中!☆

Off the Wall/Michael Jackson
(FLAC|96.0kHz/24bit)

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【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
 

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Vol.27 Theme : ワッキーの半分マンより四半世紀も先に半分マンを実践していた偉人

日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」バックナンバーはこちら

 

 モーターヘッドのレミー、デヴィッド・ボウイ、イーグルスのグレン・フライ、そして今回追悼するのは……アース・ウィンド&ファイア(以下アース)のVo.モーリス・ホワイト。音楽界の進撃の巨人たちが次々と逝去してしまうので、なんか2016年ももう半分ぐらい過ぎたような気がするけどまだ初春。濃い一年になることは間違いなさそう!

 リアルタイムでアースを知ったのは、まさにお茶の間のイメージを決定した「Let’s Groove」の80年代アース(特大ヒット作『Raise!』収録)。ホーンや女性コーラス隊も交えた大所帯のバンド編成で、シンセもフィーチャーした派手なアレンジとラメッラメの衣装、当時の最新合成技術によるMVもド派手で、小林克也大先生MCの『ベストヒットUSA』にチャートインしてきた映像が初対面かしら? キャッチーな楽曲の魅力もさることながら、何より御大モーリス・ホワイトの半分アフロ……溢れんばかりのアフロが、頭の後ろ半分、後頭部にしかないという衝撃の髪型! の絶大なインパクトが今でも鮮明に焼き付いている……むしろ曲よりもルックスのパンチで忘れられなくなったというか(笑)。

 その後モーリス・ホワイトとダブルVo.というスタイルで歌ってたフィリップ・ベイリーが(最初はモーリス御大のインパクトが強すぎて彼の存在に気付いてなかった、すまん!)、ソロを出したり、フィル・コリンズとのデュエット「Easy Lover」をヒットさせる等して存在感を出してくると、なるほどモーリスの太い声と、フィリップの繊細なファルセットの組み合わせがアースの真骨頂なのか! と気付き、過去の代表作も積極的にディグるように。

 すると70年代アースは、自分が思っていたようなド派手なだけのグループではなく、当時の最先端であるプログレやブラスROCKを融合した、全く新しいファンクBANDであることが判明! しかも御大モーリス・ホワイトは、幼少の頃ブッカーTと幼馴染で、元々はJAZZドラマー出身でエタ・ジェームズやラムゼイ・ルイスの作品で叩いてたりと、カッコイイ経歴が続々出てくる、出てくる……ごめん、メチャクチャ腕のあるミュージシャンだったのね……「半分アフロ」とか呼んでてゴメン!(笑)

 しかもソロでもセルフ・タイトルな『Maurice White』を大ヒットさせてるし(これまた当時最先端のA.O.R.風味な、大人のR&Bアルバム。大名曲「Stand By Me」のアフロなカヴァーもカッコイイ好盤)、「Best Of My Love」のヒットを放った女性Vo.グループのエモーションズや、大ヒット映画『フットルース』のサントラで「Let's Hear It For The Boy」を歌ったデニース・ウィリアムズのプロデュースなんかも手がけてて、メチャメチャ多彩! っつうか天才レベルじゃん……マジで「半分アフロ」呼ばわりゴメン!

 晩年はパーキンソン病や神経症を患って、アースのLIVEにも不参加だったりで表舞台からは姿を消していたものの、裏方としてプロデュース業務には携わっていたようで、やはり根っからのミュージシャン。真のミュージック・ラヴァーな姿勢を貫きながらも今年永眠……激動の70~80年代を生き抜いてきた音楽魂は、きっと天国でもファンキーな音楽を奏でていることでしょう……そんなモーリス・ホワイト大先生に、とっておきの情報を一つ……YOUR SONG IS GOODのGt.、ヨシザワ "モーリス" マサトモは、学生時代パーマかけた時にあなたそっくりのルックスになってしまったので、あだ名が<モーリス>になったそうです……多分、半分アフロみたいになっちゃったんだと思います!(笑)

 

名曲の数々を収録のベスト盤!

The Best Of Earth, Wind & Fire Vol. 1

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↓Earth, Wind & Fire 配信一覧はこちらから↓

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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■津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介していきます。

 

File13. 「ベンのテーマ」(作曲:ウォルター・シャーフ)

 

※津田氏が実際にピアノを弾きながら解説しています

 

 

今回は ウォルター・シャーフが生んだ名曲 「ベンのテーマ」をご紹介します。

「ベンのテーマ」は、映画音楽やTVドラマ音楽、クラシック音楽などの作曲家、ウォルター・シャーフが1972年頃、映画「ベン」の主題歌として作曲しました。当初はドニー・オズモンドが歌う予定でしたが、彼がツアー中でレコーディングが難しかったことから、まだ若かった頃のマイケル・ジャクソンが歌うことになりました。

結果的に、この曲はマイケルジャクソンの2ndソロアルバムに収録され、アルバムは全米チャートで5位を記録、さらにシングルでは1位を記録、当時14才だったマイケルは、全米で3番目の若さでNo.1ヒットシングルを獲得したソロアーティストとなりました。(ちなみに1番目は13才でNo.1を記録したスティービー・ワンダー、2番目は奇遇ですが14才の誕生日にNo.1を記録したドニー・オズモンドです) また、「ベンのテーマ」は、1972年のゴールデングローブ賞 主題歌賞を受賞、そして翌年のアカデミー賞候補にもノミネートされ、マイケル・ジャクソンはステージでライブパフォーマンスを披露しました。

映画「ベン」では、ラストシーンでこの曲が流れます。動物が大好きで優しい心の持ち主であるマイケル・ジャクソンが、彼らしい気持ちを込めて歌う「ベンのテーマ」は、素晴らしい名曲として、世界的に有名なバラードとなりました。

 

それでは早速、名曲としての魅力を確認していきましょう。
※ メロディーは移動ドで音階を表します
※ 原曲のキーはF# ですが、コードについては参考音源のキーに合わせ、Eで説明します

 

動物(ネズミ)に愛情を注ぐ主人公の心情が反映された、優しい音世界がこの曲の特徴です。 その優しさは、どのようにして聴く人に伝わってくるのでしょうか。

 

【パート1】 (0:07)

まず、出だしのメロディーのリズムを見てみますと、「ターーン・タ/タ・タ・タ・タ/タ・タ・ターン」となっています。 前の「ターーン・タ」 と 後の「タ・タ・ターン」がほぼ対称形で、真ん中の「タ・タ・タ・タ」を挟んでいます。

また、そのメロディーは、「ソーーラ ソファ#ソラ ソレレー」です。リズムが対称形に近いため、安定したシンプルさが優しさを醸し出し、またメロディーの「ソファ#ソラ」の「ファ#」も同じく優しさを誘導しています。

この時、和音はどうなっているのか見てみると、E B/D#のくり返しであることがわかります。主要三和音のうちの2つで構成されているシンプルさに、B/D#、つまり低音が最初のEというコードの半音下の音を出すことで、繊細な優しさが聴く人に伝わってきます。

 

【パート2】 (0:16)

続きを見てみますと、メロディー最後の音程が「レ」ではなく「ファ」になっている以外、まったく同じです。

優しいメロディーと和音を繰り返すことで、子どもと動物というこの映画のもつ優しい世界が、聴く人に伝わってきます。

 

【パート3】 (0:24)

さて、次はこの曲の魅力とオリジナリティが強く伝わってくる、とても大事なセクションです。

こちらもまずメロディーのリズムを見てみますと、「ターーン・タ/タ・タ・タ・タ」つまり、この前のメロディーの最初の部分(1小節目)と同じリズムですね。これが続けて4回繰り返されます。ここでもまた「シンプルさが呼ぶ優しさ」が聴く人に伝わってくるわけです。

さて、ここから、この曲を名曲にしている、とても大事なポイントの説明を始めたいと思います。

先ほどから説明しているように、この曲はシンプルさに溢れていますが、シンプルなだけでは、単調になってしまう恐れがあります。しかしこの曲は、『半音の力』が、シンプルでも単調になることなく、むしろ聴く人に深い切なさと感動を与えてくれているのです。

すでに先ほどのメロディーでは、半音の力として「ファ#」が優しさを表現していましたが、このセクションでも、同じ場所、つまりメロディーの4番目の音がすべて半音になっています。
移動ドのメロディーで表記すると、「ミーーファ ミレ#ミファ」「ミーーファ ミレ#ミファ」「ミーーファ ミレ♯ミファ」「レーーミ レド#レミ……」となっています。4番目の音がシャープしていますね。半音シャープしている、ということは、「ドレミファソラシド」というシンプルなメロディー(音階)に『無い音』が鳴っているわけですから、聴いている人の心に何らかの「引っかかり」を生むのです。その「引っかかり」が、メロディーのリズムやメロディーのくり返しによるシンプルさに対して、特別な表情を与えているわけです。

さらに和音を見てみると、そこでも『半音の力』が強く働いていることがわかります。まず、コード進行はこうなっています。

E G♯sus4/D♯ G♯/D♯ D9(11) C♯7 C9(11) B

これだけを見ても、ジャズ理論に詳しい人でなければ、なかなかわかり辛いですよね。そこで、この和音の進行で『半音の力』が働いている音だけを取り出して移動ドで表してみます。

2小節目 / G♯sus4/D♯ G♯/D♯ ⇒ 『ソ♯』
3小節目 / D9(11) ⇒ 『ソ♯』
3小節目 / C♯7 ⇒ 『ド♯』
4小節目 / C9(11) ⇒ 『ファ♯』

となります。 さらに、ベース(低音)も E D# D C# C Bと、すべて 『半音ずつ下がっていく動き』 をしているのです。「メロディーの半音」 「和音の半音」 「ベース音の半音」と、3つの要素で『半音』の力が働いているわけですね。

 

【パート4】 (0:49)

さて、次のセクションではまた、さらにダイナミックなことが起きます。 それは、突然『長調から短調へ変化』することです。

最初の4小節間だけ、突然暗くて悲しい世界に変化します。メロディーも和音も、すべてが『短調』にチェンジしてしまうのです。長調だった元の世界が陽だまりのような優しい明るさに満ちていた分、暗くなった表情は聴いている人に強く伝わってきます(またこれは、この曲が流れる映画のシーンにもうまく合っています)。

そしてその後(1:05)に、もう一度 【3】 (0:24)と同じセクションが6小節間あり、続いて新たなセクションが展開します。

 

【パート5】 (1:29)

こちらは『半音』的なアプローチはなく、メロディーや和音の雰囲気もこれまでと違い、あっさり、ゆったりとした感じになっています。

メロディーは「ド」「レソソーー」「シミミーー」「ラレレーー」「ソドドーー」と、同じリズムを繰り返しながらだんだん下へ下がっていく、シンプルなもの。コード進行も、F♯m7 B/D♯ E△7 のくり返しです。

このセクションがあっさり、ゆったりしていることで、『半音』の力が強く、印象的なこれまでのセクションを引き立たせる効果が生まれています。

 

いかがでしょうか。

映画のラストシーンに向けて創られた「ベンのテーマ」……。

この美しい名曲バラードは、シンプルでありながら半音の力を巧みに使うことで、少年と動物の心温まる触れ合いを表現し、聴いている人の心を優しく震わせてくれるのです。

 

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

試聴・購入はこちら
FLAC / DSD

<<スペシャルインタビューも掲載中>>

 


 

【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

FB(Fan Page) : https://www.facebook.com/tsudanaoshi
Twitter : @tsudanaoshi
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Vol.26 Theme : PUNX達が言った『ヒッピーはイーグルスでも聴いてろ!』でイメージダウンした人も多かったはず

日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」バックナンバーはこちら

 

 70年代の巨星達の訃報が続く2016年初春……レミーボウイと来て、今度はアメリカンROCKの大御所、グレン・フライも遂に……とは言え80’s PUNK/NEW WAVE世代にとっては、ウェストコーストのいなたいROCKはある種の仮想敵だったので(サウンド、ファッション、生き様、全てが真逆なので)、俺がイーグルスをちゃんと聴くようになったのは大学生も後半の頃……先輩達は微妙に70年代に間に合ってるから「オールマンとかドゥービーとか判んねぇ奴ぁダメだ」とか言ってくるわけで……(笑)、俺も負けず嫌いなもんだから、頑張って「ディグりましたよ! 」とか言って背伸びして話を合わすわけで……(笑) というわけで今回は私見イーグルス記をば。

 スタートは70年代の歌姫リンダ・ロンシュタットのバックBAND。フォーク・グループの紅一点としてデビューした彼女は、その後イーグルス全員と関係を持ったとか、ミック・ジャガーと浮名を流したとか、様々なロック伝説を作った稀代のヤリマ……悪女。超面白ぇ……いや、興味深い逸話が沢山あるので、いつかまた単独で掘り下げたい。

 ともかくバックバンドとして集まったメンツが意気投合し、新たなバンドをスタートさせるという、非常に爽やかなスタートがPUNK少年的には気に食わなかったんだけど(笑)、後で知ったイイ話として、当時グレン・フライが住んでたアパートの別の部屋から弾き語りが聴こえてきて、あまりにも良かったので声をかけたところ、それがデビュー前のジャクソン・ブラウンで、彼がその曲をイーグルスに提供した事によって生まれたのが、1stシングルにして最初のヒット「Take It Easy」。その気前の良さや、伝説のニコにも楽曲提供してたりするし、何より繊細で若干ポリティカルな曲を書くジャクソン・ブラウンは、PUNXでも好きな人が多いはず。

 さて順風満帆なスタートを切ったイーグルスは、続く2ndで今やスタンダードとしておなじみ「Desperado」を早くも完成。しかしこれが結果的にイーグルスを<バラードが得意BAND>として認知させる事になり、ハードROCKやPUNK好きから敬遠される原因となっていく……その反省から次作『On The Border』からはROCK色を強める事に。代表曲「Already Gone」や表題曲「On The Border」「James Dean」辺りは、それまでのフォーク、カントリー、ブルーズ色を残しつつも、全員がメインVo.を取れる強みを活かしたコーラスワークでPOPな仕上がりに。続く『One of These Nights』でも表題曲を始めハードかつファンキーな曲を増やすが、ドン・ヘンリーとグレン・フライの2人で独裁的にバンドを仕切り始めてしまったため、バンジョーやマンドリンもこなした創設メンバーのバーニー・レドンが脱退してしまう。この辺はストーンズがブライアン・ジョーンズを失った顛末に似てる気がする……そして、その後どんどんビッグになる展開まで似てる!

 さぁもっとROCKしたるで! と意気込んだイーグルスは、POPなハードROCKをやっていたジェイムズ・ギャングから、新ギタリストとしてジョー・ウォルシュ(大好き! イーグルス本体より好き)を招聘。テクニカルさとユーモアを持ったジョーの加入は、バンドに飛躍的な向上をもたらし、遂に大名作『ホテル・カリフォルニア』を完成。表題曲「Hotel California」はもちろん、ジョーに引っ張られた「Life In The Fast Lane」や「Victim Of Love」等で、前作からの課題であったハードさを完全に獲得。でもジョー本人は超ロッカバラッドな「Pretty Maids All In A Row」を歌っちゃったり……やっぱジョー・ウォルシュ最高!

 しかし成功と共に巨大になり過ぎたイーグルスは、ドン・ヘンリーとグレン・フライの中心メンバーvs残りのメンバーみたいな対立が深まり、結果アルバム『Long Run』リリース後に解散。元メンバー同士の仲の悪さは俺も絶賛経験中なので(苦笑)、しょうがねえよ人間だものとしか言いようがないが、その後1994年にイーグルスは再結成。なんだ仲直り出来たんじゃんと思ってたら、コンスタントに発表した新譜『Hell Freezes Over』と『Long Road Out Of Eden』もバカ売れしたためか、また仲が悪くなって(笑)、メンバーのドン・フェルダーが解雇され裁判沙汰にまで発展……なんだ全然仲直りしてねーじゃん!(笑) な結果に。

 あれ? 今回グレン・フライのイイ話が全然出てこなかったけど(ゴメン)、80年代のソロ期は「The Heat Is On」「You Belong To The City」はじめ数々のヒット曲を残し、そもそもイーグルスでもメインのソングライターだっただけに、ハンパない才能の持ち主なのは間違いない……そもそもグレンがジャクソン・ブラウンと出会ってなければ「Take It Easy」も生まれなかったわけで、彼がアメリカンROCKに残した足跡はとてつもなく大きいはず……この機会に、俺のこのちょっと斜めった視点で? イーグルスに触れてみるのもオススメだよ。とにかく名曲、良曲多し!

 

名曲の数々を収録のベスト盤(試聴可)!

The Studio Albums 1972-1979

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ハイレゾ

 

イーグルス 配信一覧はこちらから(ハイレゾも複数タイトル配信中!)

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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ジャズの楽しさ、面白さ、わかりやすさを、ひとりでも多くの方に知っていただく連載第3回。

編集部のAさんからの今回のお題は、年季の入ったジャズ・ファンなら誰でも知っている定番中の定番であろうオスカー・ピーターソンWe Get Requests』。moraのジャズ作品売上ランキングで昨年末の月間1位を獲得したので、そのお祝いもこめて、改めてこの作品の魅力を紹介してみよう、というのが今回のテーマです。

 

We Get Requests/The Oscar Peterson Trio

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1964年の録音ですから、今から50年以上も前の演奏です。「そんな古いものが今、なぜ1位に?」という疑問は当然あります。現在の日本のヒットチャートで春日八郎や二葉百合子がゲスの極み乙女。や西内まりやより上位に来ることは100%ありません。が、「新しいものだけが売れる」わけではないのがジャズの世界。LPレコードの時代に評価を確立した作品が、CD化されても聴き継がれ、さらにハイレゾになっても愛され続ける……これはジャズがいかに息の長い(いいかえれば人生を通じて楽しめる)音楽であるかを示すものでありましょう。

『We Get Requests』というアルバム・タイトルには、“リクエスト承ります”的なニュアンスが感じられます。そして、この作品を日本で最初に売るにあたって(1965年)、レコード会社のスタッフは『プリーズ・リクエスト』という邦題をつけました。なんと覚えやすい和製英語でしょう。しかも選曲が親しみやすいのです。64年当時の全米シングル・チャートにランクインしていたボサ・ノヴァ「イパネマの娘」に加え、やはりボサ・ノヴァの代名詞的1曲である「コルコヴァード」、“日本には一度も来たことのない世界最高峰のエンターテイナーのひとり”バーブラ・ストライサンドの名声を決定づけた「ピープル」、同名の大ヒット映画の主題歌である「酒とバラの日々」など、64年当時のファンに大いに親しまれ、今でも時おり耳に入ってくることもあるナンバーを、オスカー・ピーターソンは次々と極上のジャズに料理していきます。もちろんジャズですから即興演奏のパートはありますが、原メロディから極端に離れたプレイはしていません。過度な加熱や香辛料で素材のおいしさを奪い去る、などという野暮なことはしないのです。さすが名シェフ、ピーターソン! 64年のアメリカにおける最大の音楽的トピックであったろう“ビートルズ旋風”から距離を取った選曲をしたのも正解だったかもしれません。

でもこのアルバムは表題に反し、有名曲ばかりで構成されているわけでもないのです。ピーターソン自身の書き下ろしナンバーもありますし、スタッフ・スミスというヴァイオリン奏者が作曲した「タイム・アンド・アゲイン」の存在をこれ以前から知っていた、というファンはウルトラ・へヴィーなジャズ狂だと思います。そして本作に収められたことで、一躍ジャズ好きに広まったメロディもあります。それが6曲目の「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」です。

アナログ盤で、この曲はB面トップに位置していました。レコード針が乗せやすい位置になったということもあるのでしょう、60年代中ごろから普及するいっぽうだったステレオ機器のチェックにも頻繁に使われました。弓弾きから指弾きに替わる時のベース奏者のタイミング、ニュアンス豊かなドラマーのブラッシュ(いわゆる“刷毛”)やシンバルの音色の伸び、そして御大ピーターソンの輝かしいピアノ・タッチが2つのスピーカーから生々しく、立体的に浮かび上がってきたら、そのオーディオ・システムは折り紙付き、というわけです。CD、ハイレゾと器は変わっても、『We Get Requests』をシステム・チェック用に使っているリスナーも多いのではないでしょうか。

Aさんからは「タッチの音や吐息まで聴こえるというのが新鮮に感じました。ベースの音も、エレキ(ロック)に慣れた耳からすると微かに響いてるだけ、というバランスが……」という感想をもらいましたが、吐息まで聴こえるのもまた、この場合は生々しさを加味しています。楽器から少し離れたところに必要最小限のマイクを置いて音楽家に同時演奏をさせ、空気もまるごと同時に捉えてしまおうという感覚。これは「異なる場所や時間で録られた音をミキシングで合わせていく」ポップスのサウンド作りに慣れた方には軽いショックかもしれません。

最後にジャケットの話をしましょう。右側にいるのが御大ピーターソンですが、なぜ他のふたりが演奏しているのに彼は笑顔で立っているのでしょうか? 僕がずっと感じていた疑問は、ピーターソンのライヴ(もう生で見ることは叶いませんが)に接した時に解けました。まずドラマーがひとりで演奏し、続いてベーシストがそれにあわせ、盛り上がったところでピーターソンがピアノのところまで歩んで一礼、そしてプレイを始めるのです。つまりこのジャケットは「ステージに登場し、礼を終えて顔をあげた瞬間」のピーターソンを捉えているのです。また彼のライヴでは、大半の奏者と違って、ピアノがステージ上手(客席から向かって右)にセットされていることも特徴です。その理由としては、ピーターソンの楽器が大型で横幅を取るから(通常は88鍵だが、彼のピアノは97鍵)、そしてベース奏者がピーターソンの左手の動きを見ながらベース・ラインを作ることができるように(=低音のぶつかりあいを避けるため)という配慮があった、と聞いたことがあります。

そう考えつつもう一度、「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」の響きに身をまかせてみませんか?

 


 

■執筆者プロフィール

 

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原田和典(はらだ・かずのり)

ジャズ誌編集長を経て、現在は音楽、映画、演芸など様々なエンタテインメントに関する話題やインタビューを新聞、雑誌、CDライナーノーツ、ウェブ他に執筆。ライナーノーツへの寄稿は1000点を超える。著書は『世界最高のジャズ』『清志郎を聴こうぜ!』『猫ジャケ』他多数、共著に『アイドル楽曲ディスクガイド』『昭和歌謡ポップスアルバムガイド 1959-1979』等。ミュージック・ペンクラブ(旧・音楽執筆者協議会)実行委員。ブログ(http://kazzharada.exblog.jp/)に近況を掲載。Twitterアカウントは @KazzHarada

 

 

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