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[3/25]【連載】牧野良幸のハイレゾ一本釣り! シュガー・ベイブ『SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition- <2015 REMIX>』

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第18回:シュガー・ベイブ『SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition- <2015 REMIX>』

~ハイレゾで、デビュー盤にしてプロフェッショナルなアルバムに~

 

 

僕がシュガー・ベイブという名前を初めて知ったのは高校生の時だ。兄貴が買ってきた荒井由実の『MISSLIM』に収められていた「12月の雨」という曲でだった。「12月の雨」にはそれまで、邦楽はおろか洋楽でも聴いたことがないようなコーラスが加えられていた。それを歌っていたのがシュガー・ベイブだったのである。

『MISSLIM』はユーミンの最高傑作と言っていいアルバムだと思う。その中でも「12月の雨」はアルバムの白眉である。言ってみれば、ユーミンのキャリアの頂点で、ユーミンを食ってしまったのがシュガー・ベイブということになる。もちろんそれくらいで、いささかも動じないユーミンであるが、かの荒井由実の背後に埋もれないほどシュガー・ベイブにも存在感があったということだ。僕にしてみればちょっとした事件だった。

しかしクレジットには「シュガー・ベイブ」という名前が載っているだけ。これも同じ頃兄貴が買ってきた、はっぴいえんどの解散コンサートのライヴ盤にもシュガー・ベイブの名前を発見したが、それでもまだ彼らの顔は見えてこなかった。いったいどんなコーラス・グループ(!)なんだ? 気にしていたのは兄貴も同じだったのだろう、やがて兄貴が1枚のレコードを購入する。それが『SONGS』だった。

 

僕もさっそく聴いた。「ユーミンのバックからアルバムを出せるまで出世したんですね」という、生意気に言えば、おめでとう、という気持ちで『SONGS』に針を落としたのである。はたして、流れてきたは「12月の雨」のコーラスと同じく、それまでの邦楽や洋楽で聴いたことがないような音楽だった(シュガー・ベイブがコーラス・グループではなくバンドであることはすぐに修正した)。

「素敵なショーのはじまりだよ〜」と歌うシュガー・ベイブは、当時70年代ロックにどっぷりだった僕には、ちょっとアマチュアぽい音楽に思えたが、そこには「我が道を行く」ゆるぎない自信を感じた。しかし同時に「僕たちの音楽も聴いてくれ!」という自意識も痛いほど感じた。『SONGS』は何度針を落としても、若者の自信と不安、両方が入り混じった蒼い時間が流れたものだった……。

 

長々と昔のことを書いたのは、今回のハイレゾが、かつて聴いたLPとかなり違う印象、また違う音になっているなあと感激したからである。もっともあの頃、やや回転の鈍ったターンテーブルのステレオで聴きこんだLPと、今日の大きなトールボーイ・スピーカーで音量を上げて聴くハイレゾとを比べるのは正確さにかけるかもしれない。しかしそれを差し引いても、今回のリマスタリングとハイレゾ自体の効果というのはすごくあるなあ、と思ってしまったのである。

 

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ハイレゾで聴く『SONGS』は頑強な音である。いってみれば、その後の山下達郎の『RIDE ON TIME』や『FOR YOU』のような“タツロー・サウンド”と互角に渡り合う音になっている気がする。だからブラスのアクセントの部分には「とっくに“タツロー”してたんだ」と、ニヤリとする。またドラムも小気味良い。小回りのきくオカズが前へ前へと曲を進めていくところが快感だ。このロック的な推進力は、FLACの「48kHz」という低めの周波数が合っているのか、若々しく伝わってくる。

ハイレゾは力強いだけではない。コーラスの重なりや、音の減衰する“きわ”も綺麗だなあと思う。加えて楽器や声の分離感(描き分け)がすごく出ているように思う。音のまわりに空気感を感じるところも随所にあった。こうなると『SONGS』にはオーディオ・マニアの好む、いわゆる“優秀録音盤”という肩書きを与えてもいいような気さえした。

 

40年前のLPで感じた「我が道を行く」精神はハイレゾでも健在だけれど、「僕たちの音楽を聴いてくれ!」という声はもう聞えてこない。同時に「アマチュアっぽい」という印象も消えた。かわりに思うのは、デビュー盤にもかかわらず作り込まれた「プロフェッショナルなアルバム」という思いである。というか、これが当時のシュガー・ベイブを伝える真の音なのだろう。ジャケットに描かれた老婦人もこれには「おやまあ」と驚いているのではないだろうか。

 


 

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シュガー・ベイブ
『SONGS』
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(FLAC|48.0kHz/24bit)

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【牧野 良幸 プロフィール】
 
1958年 愛知県岡崎市生まれ。
1980関西大学社会学部卒業。
大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。
近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。
2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。
 
 
 
 
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