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[2/2]【連載】牧野良幸のハイレゾ一本釣り! サイモンとガーファンクル(後編)『明日に架ける橋』〜『セントラルパーク・コンサート』

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第16回:サイモンとガーファンクル(後編)『明日に架ける橋』〜『セントラルパーク・コンサート』

〜ハイレゾが僕の新しい『グレイテスト・ヒッツ』〜

 

 前回は1971年暮れにベスト盤を買って、サイモン&ガーファンクルの世界に踏み込んだことを書いた。翌72年になると、僕はベスト盤だけでは飽き足らずオリジナル・アルバムを揃えるようになった。ちょうど中学2年生から中学3年生に進級した頃である。

 買ったのは『パセリ・セージ・ローズ・マリー・アンド・タイム』『ブックエンド』『明日に架ける橋』。当時は中学生がLPを買うのは大変だったから『水曜日の朝、午前3時』と『サウンド・オブ・サイレンス』は友人から借りて録音した。そのかわりに発表されたばかりのポール・サイモンの初ソロ『ポール・サイモン』とマニアックな『ポール・サイモン・ソング・ブック』も買ったのだから、72年の夏休みが終わるころには、僕の“S&G収集”はほぼ完了したと言っていい(『卒業』だけ見送った)。

 そんなころ『グレイテスト・ヒッツ』が発売されたのだった。収録曲を見て驚いた。それまでCBS・ソニーが出していたベスト盤『サイモンとガーファンクル・グレイテスト・ヒット II』とまったく同じ収録曲、曲順だったからである。これは「ポール・サイモン自身による選曲」と銘打たれた国内企画盤で、日本の洋楽LPチャートではずっと1位を記録していた。古い流行語に例えれば「巨人、大鵬、S&G」と言いたくなるくらい我が国では人気があったレコードだ。

 そこに新しい『グレイテスト・ヒッツ』である。同じ収録曲でもさすがにS&G自身の制作だから凝っていた。ライヴ演奏や新ミックスが含まれていて、新作と呼んでもいい内容だ。この頃は僕のなかでS&G旋風はおさまり、かわってビートルズの大旋風が吹き荒れていたのであるが、ビートルズのレコードを1枚諦めても欲しくなった。かくして72年9月13日に『グレイテスト・ヒッツ』を買ったのだった(LPの解説書に日付を書いたから今も分かるのである)。

 はたして『グレイテスト・ヒッツ』は新鮮だった。なかでもライヴの4曲がスタジオ録音をしのぐ神々しさ。他にも拍手が被せられている曲があり、アルバムとしても聴き飽きなかった。しかし事件はまもなく起きる。ある時、手を滑らせて針をレコード盤の上に落としてしまったのである。バン、バン、バン、ブィ~! 針は豪快なバウンドをしたあと、飛行機が胴体着陸をするようにミゾの上を滑っていった。

 恐る恐る聴いてみると、ライヴの「59番街の歌(フィーリン・グルービー)」でプ、プ、プというキズ音が出る、続く「サウンド・オブ・サイレンス」ではついに針飛びがおきて先に進まない。中学3年生の心がいかに折られたかは、アナログ世代の方なら分かっていただけるだろう。

 にもかからず、僕はこのレコードを聴き続けたのだった。まるで虫歯の痛みを確認するかのように、マゾ的な心でノイズの出る部分を聴く自分がいた。CDや別の中古レコードに買い替えてもよかったのだが、できなかった。大切な小遣いで買ったレコードは可愛いし、傷がついたことで逆にこのレコードから離れられなくなってしまったのだ。

 ここでようやくハイレゾの話になる。そんな病んだリスナー(?)である僕でも『グレイテスト・ヒッツ』はハイレゾだと、まったく自然に聴けるのである。どうしてハイレゾなら聴けるのか。もちろん高音質なところがその大きな理由だろう。しかしそれだけでもないような気がする。ひょっとしたらハイレゾを聴く行為のなかに、アナログ盤を聴く行為に通じるものがあるのかもしれない。そんなわけで今ではハイレゾの『グレイテスト・ヒッツ』が僕の愛聴盤となっている。棚にしまってあるLPもきっと喜んでいることだろう。

 


 

Bridge Over Troubled Water

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 サイモン&ガーファンクルの傑作であるだけでなく洋楽レコードの金字塔。それが『明日に架ける橋』であろう。表題曲「明日に架ける橋」や「ボクサー」など彼らの代表曲と“その他の名曲”からなるアルバムで、ハイレゾでは“その他の名曲”がより高音質となり、アルバムとしての素晴らしさが底上げされている。
 「ベイビー・ドライバー」「ニューヨークの少年」「手紙が欲しい」などが、ふくよかなサウンドで鳴り響くのは、かなり快感だ。ブラスの音も凄い。もちろん「明日に架ける橋」のピアノもイントロから重心の低い音に(僕には)感じられて、ハイレゾで聴く価値が大きいアルバムだと思った。

 

Greatest Hits

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 この『グレイテスト・ヒッツ』については先に書いたので、ハイレゾの話をするなら、「エミリー・エミリー」などのライヴ音源の音質がしっかりした分、アルバムの統一感がいっそうとれた印象になったと思う。スムーズに各曲が流れていく。「ミセス・ロビンソン」や「スカボロー・フェア」などは、なぜかオリジナル盤よりもこのベスト盤で聴く方が好きである。

 

The Concert in Central Park (Live)

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 81年のニューヨーク、セントラル・パークでの再結成コンサート。当時はまだ大物の再結成は珍しかったので、まさか二人が再び一緒に歌うなど夢にも思わなかった。しかし、そんな興奮とはうらはらに演奏はリラックスしたもので、ソロ作品を二人で歌ったりとスタジオ・アルバムにはない魅力がふんだんに含まれている。ジャズ、フュージョン系ミュージシャンのバッキングも時代が80年代になったことを強く感じさせる。
 ハイレゾは野外とは思えないクリアな録音を、やわらかいアナログ風な音で再生してくれる。バンドの各楽器の分離感も良好。「どこがどうハイレゾで良くなった」という力みはなく、それこそ演奏と同じく「リラックスしたハイレゾ化」を感じる音質だと思う。夜な夜な聴くには格好のハイレゾ。

 

 

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【牧野 良幸 プロフィール】

1958年 愛知県岡崎市生まれ。1980関西大学社会学部卒業。

大学卒業後、81年に上京。銅版画、石版画の制作と平行して、イラストレーション、レコード・ジャケット、絵本の仕事をおこなっている。

近年は音楽エッセイを雑誌に連載するようになり、今までの音楽遍歴を綴った『僕の音盤青春記1971-1976』『同1977-1981』『オーディオ小僧の食いのこし』などを出版している。

2015年5月には『僕のビートルズ音盤青春記 Part1 1962-1975』を上梓。

 

マッキーjp:牧野良幸公式サイト

 

 

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