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[1/28]【連載】日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.24

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Vol.24 Theme : デヴィッド・ボウイ追悼『★(Blackstar)』レビュー

日高央の「今さら聴けないルーツを掘る旅」バックナンバーはこちら

 

 TwitterでもInstagramでもFacebookでも、あらゆるSNSのタイムラインがいまだにデヴィッド・ボウイで埋まる1月末……ボウイロスの影響の深さはもちろん、「あんたもボウイ好きだったんかい!?」という驚きもありつつ、特に海外の音楽系サイトはボウイの後日談で持ち切り。

 出会った時期にもよるけど、ニューウェーブ全盛期に『スケアリー・モンスターズ』から入って、直後に映画『戦場のメリークリスマス』とメガヒット『レッツ・ダンス』に遭遇した自分にとっては、これほどまでに過去のアーカイブを掘るのが楽しいアーティストもなかなかいなかっただけに(作品毎の表現の振り幅がとにかく広いので)、やはりボウイロスを埋めるのには時間がかかりそう……。

  今回のニュースで出会った人にとっては、最新作『★(Blackstar)』は大人っぽい落ち着いた印象を与えるアルバムかもだけど、これがまたなかなかどうして、ボウイの歴史を俯瞰すると、これはこれでチャレンジングな一枚なので、その辺の解説を踏まえてご紹介。自分の大好きなアーティストが、ただの爺さんじゃなくて、スーパーエキセントリックな男として生涯を全うした事を、少しでも知って欲しいし。

 初めての人に超ざっくり言うけど、ボウイって大きく分けて2つの音楽性があって……<ロックンロール>か<ファンキー>だと思ってて。もちろんアルバム毎に細かく色んな要素が混ざってるから言い出すとキリがないんだけど、クラシック級の名作『ジギー・スターダスト』辺りのグラムロック全盛期のボウイに対するイメージが<ロックンロール>。グラム期を経てアメリカに接近した『ヤング・アメリカン』や『ステーション・トゥ・ステーション』なんかは<ファンキー>。みたいに、おそらく彼自身の中での大まかなモチーフというか、モードとして<ロックンロール>か<ファンキー>かに振り切った作品が点在してるイメージ。もちろんどれも<POP>な仕上がりに抜かりはないけど。俺個人のイメージだけど。

 んで前作『The Next Day』は割とロックンロール寄りだったと思うから、今回はファンキーに振り切ろうと思ったと想像してて。でもそこで今までみたいなファンキーさに行かない捻くれっぷりもボウイの魅力の一つ。現代のファンキーを体現するHIP HOPもこよなく愛する彼ならではのセンスで、ケンドリック・ラマーの傑作最新作『To Pimp A Butterfly』を参考に、現代のジャズ系ミュージシャンを起用することで、新たなダンサブルさを獲得。70歳を目前に、しかも自分の死期が迫ってるって時に、そんなエッジィなチョイス出来る!?

 エッジィなボウイが選んだジャズ・ミュージシャン達は、世界で初めてデータ音源だけで(アナログやCDを発売せずに)グラミーを獲得した新進気鋭のマリア・シュナイダー・オーケストラの面々。キャリアを総括したベスト盤『Nothing Has Changed (The Best Of David Bowie)』にて先行収録された「Sue (Or In A Season Of Crime)」を聴くと、Jazzのロウ(生)な感じでドラムンベースばりのグイグイなリズムと、ボウイのゴシックな歌とメロディーが気持ち良い。しかもこの時点ではケンドリック・ラマーより先にJazzミュージシャンとセッションしてるんだから、ボウイの千里眼おそるべし!

 そして「Sue (Or In A Season Of Crime)」のアルバムver.は、よりリズムを強調したロック寄りな解釈に。聴き比べると面白い。こうして常に今の自分をアップデートする感覚もボウイならではで最高だし、ハイレゾで聴くと演者の息遣いも聴こえてきそうな臨場感が鳥肌モノで、まるで自分もセッション中のスタジオに放り込まれたような緊張感が味わえるから、チャンスがあればお試しあれ。

 個人的なおすすめトラックは「'Tis a Pity She Was a Whore」と「Girl Loves Me」。前者は80年代ボウイが得意とした、煌びやかなアレンジにEMOい泣きメロが気持ち良い佳曲。後者はボウイの十八番、しゃくり上げる歌唱法“ヒーカップ”を駆使してアヴァンギャルドな緊張感を演出。チラリとクラフトワーク的なテクノっぽいミニマル感もあってカッコイイ。どちらも仕上がりは極上にPOPだし、映画や小説の一場面を想起させるような、聴き手のイマジネーションをバチバチに刺激してくれる。

 そしてここ数年のボウイはなぜか、シングルにしっとりした曲を持ってきて、アルバムだとアグレッシヴな曲もある、みたいな打ち出し方を好んでて……前作『The Next Day』しかり、今回の『Blackstar』しかり。それぞれの先行シングル『Where Are We Now?』も『Blackstar』もそういう作りなので、全体の印象が大人っぽくみられがちですが……アルバムにもしっかりバラード? まで行かないにしても、落ち着いたナンバーを配してバランス感も最高。今作では後半の「Doller Days」の美メロにうっとりしつつ、最終曲「I Can't Give Everything Away」でタイトル含め、ボウイの遺言として聴くと涙を禁じ得ないEMOい展開へ。

 己の死を覚悟しながら新作を準備し、最終曲で“俺は全て諦めるわけにはいかない”と歌い、リリースの2日後ひっそりと天国に召されるなんて……もちろん、ここまでの道のりも決して平坦ではない……相当な覚悟と、表現への欲求。我々には想像もつかない葛藤があったかと思うと、このアルバムの聴き方もより深く味わえるのではないかと……年齢に関係なく、ネガティブな状況に負けるな! と背中を押してくれるステキな作品。この機会に是非お試しあれ。

 

『★(Blackstar)』
David Bowie

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【日高央 プロフィール】

ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。

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