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[1/8]フライングドッグ代表取締役・佐々木史朗さんインタビュー! アニメサントラの歴史を築いた3作品を振り返る

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数々の話題作を世に送り出してきたフライングドッグ。今回はその中でも80年代後半~90年代前半に焦点を当てて、3作品をピックアップ。それらのプロデューサー、ディレクターを務めた、現フライングドッグ代表取締役、佐々木史朗氏に制作秘話を語っていただいた。 取りあげるのはOVA『マクロスプラス』(’94~’95)、劇場作品『MEMORIES』(’95)、OVA『トップをねらえ!』(’88~’89)。当時の現場の雰囲気や、クリエーターたちの息吹を感じてほしい。

取材・構成/鈴木隆詩(ライター)

 


 

 

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制作時のエピソードを語る佐々木さん。

 

 

●菅野よう子が未来の音楽を作った『マクロスプラス』

──『マクロスプラス』のサウンドトラックは、アニメーションでは、菅野よう子さんが初めて一人で手がけられた作品ですね。

佐々木 そうですね。アニメのサウンドトラックでは、まず、溝口肇さんと一緒にやった『ぼくの地球を守って』(’93~’94)があって、その次が『マクロスプラス』です。

──佐々木さんは、菅野さんとどのようにして出会ったのですか?

佐々木 溝口さんのライブに伺って、ピアノを弾いていた菅野さんに「はじめまして」と。その時点で菅野さんはたくさんのCM音楽を手がけられていて、CM音楽界ではすでに有名人でした。才能に溢れた方だったので、『マクロスプラス』の音楽をお願いしようと思って、総監督の河森(正治)さんに菅野さんのCM音楽を聴いていただいたんです。でも、CMには基本的にバトル系の音楽はないじゃないですか。音楽性はすばらしいけど、バトル曲に関しては心配もあるというのが、河森さんの最初の反応で。僕は、他の候補を出すつもりは全くなかったので、ほとんどゴリ押ししたんですね(笑)。

──菅野さんと河森さんは、その後、一緒にいろいろな作品を手がけることになって。

佐々木 もう20年以上の付き合いですよね。『マクロスプラス』はナベシン(渡辺信一郎)が監督で、そこから『カウボーイビバップ』にも繋がっていくわけで。

──菅野さんにとっての『マクロスプラス』は、どのような作品だったのでしょうか?

佐々木 未来の音楽を作るというのが面白かったらしいです。2040年という設定で、バーチャルアイドルが流行っていて。今となっては、バーチャルアイドルはいろいろなアニメ作品に登場しますし、現実でも初音ミクが出てきたりしていますが、当時はかなり先駆的なアイディアでした。ライブでは3DCGを投影した映像が使われるという設定とか、時代をかなり先取りしていたと思います。菅野さんは、いろいろなタイプのシャロンの曲を楽しんで作っていましたね。

──シャロンの曲は4曲入りシングル「The Cream P・U・F」でまとめて聴くことができます。

佐々木 シャロンの曲には観客の洗脳というテーマが明確にあって、それを意識して作られています。山根麻衣と新居昭乃という、全くタイプの違う女性シンガーが、ひとりのキャラとして歌うという形式も珍しいですね。また、シャロンの曲では「Information High」という曲のみ、元電気グルーヴのCMJKさんが作・編曲を担当しており、歌はメロディー・セクストンという女性シンガーが担当しています。

──新居昭乃さんは劇中歌「VOICES」も歌われています。

佐々木 「VOICES」はヒロインのミュン・ファン・ローンが歌手を諦める前に歌っていた曲ということで、物語の重要なモチーフになっていました。昭乃ちゃんは当時うちのアニメの主題歌を何曲も歌ってもらっていたし、菅野さんとも知り合いだった事もあって歌ってもらう事になりました。

──サウンドトラックの演奏はイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団です。

佐々木 イスラエルフィルは、世界的な指揮者ズービン・メータとの関わりも深い有名なオーケストラです。僕らとしては、エモーショナルでいいオーケストラなので使ってみたいという菅野さんの要望もあって、テルアビブまで出かけることにしたんですね。実はレコーディングの少し前に現地で爆弾テロが起きて。今だったら中止になっていたと思うんですけど、当時は緩やかだったというか、結局、現地に向かいました。空港のチェックが非常に厳しかったのを覚えています。

──菅野さんは、オケのメンバーに非常に好かれたそうですね。

佐々木 鳴りのいいスコアを書くので評判が高いですし、本人のキャラクターもあいまって、基本的にどのオケにも好かれていましたね。英語はペラペラというわけじゃないんですけど、雰囲気だったりジェスチャーだったり、言葉以外のものを使って伝えるのがうまいというか、コミュニケーション力はとても高い方です。感覚的かつ本能的で、「どひゃ~」とか「わ~っ」とか擬音語を使って説明するのも、昔も今も変わってないです。

──レコーディングはいかがでしたか?

佐々木 ハードディスクレコーディングがない時代ですし、レコーディングしたホールはマルチテープが使える環境でもなくて、2チャンネルの一発録りでした。もともとオーケストラは、そういう録り方をしていたんですけど。それと、先ほども言った通り、イスラエルフィルは情熱的なオケなので、演奏している時の鼻息が荒いんですよ。ハイレゾでは、オケの鼻息も聴いていただきたいなと(笑)。

──当時ならではの音色もあり、オケの鼻息もありと(笑)。

佐々木 『マクロスプラス』の音楽は、時間もお金もたっぷりかかりましたけど、画期的なものになりました。菅野さんのおかげで『マクロスプラス』が今までにない新しいフィルムになったとも言えるし、手前味噌ですが、この作品によって、アニメの音楽は変わったと思っています。庵野(秀明)さんが原画をやっていて、試写を観に来た時に音楽を誉めていただいたり、業界内からの反響はすごかったですね。

 

MACROSS PLUS ORIGINAL SOUNDTRACK(ハイレゾ)

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●3人の作曲家がこだわり抜いて音楽を作った『MEMORIES』

──『MEMORIES』のサウンドトラックは?

佐々木 『AKIRA』(’88)をやらせていただいた繋がりで、大友(克洋)さんの新しい映画の音楽の制作を、という話がありまして。オムニバスなので、音楽も作品ごとに違う作曲家で、というのがオーダーでした。

──それぞれの作品の作曲家は、どのようにして決まったのでしょうか?

佐々木 『大砲の街』(大友克洋監督)は、こちらに話が来る前から決まっていました。菅野さんに『彼女の想いで』(森本晃司監督)をお願いして、『STINK BOMB/最臭兵器』(岡村天斎監督)は三宅純さんという、CM界の巨匠にやっていただくことになりました。映画版の『彼女の想いで』はオペラの『蝶々夫人』を土台にした作品で、劇中にオペラシーンも出てくるので、それも新たに録って。『最臭兵器』はコメディで、ハードなアクションも出てくるという幅の広い作品だったので、ユルさと激しさの両面を三宅さんにいろいろなジャンルの音楽で表現していただこうと思ったんです。

──さらにプロローグとエンディングを石野卓球さんが担当しました。

佐々木 卓球さんが大友さんの大ファンだということで、快諾していただけました。別のレコード会社からリリースされている方なので、最初はスタッフ同士の話し合いで別名義での参加ということになっていたんです。でも、『MEMORIES』がどれくらい面白いのかとか、その全貌がだんだん分かってきて、石野卓球名義でも構わないという話になって。エンディングの「IN YER MEMORIES」は各作品のサントラをサンプリングしたおもしろい楽曲で、これも当時、庵野さんに「いい仕事してる」って言ってもらいましたね(笑)。

──『彼女の想いで』のサントラは、演奏がチェコ・フィルハーモニー管弦楽団ですね。

佐々木 なぜチェコフィルだったかというと、もちろん弦や金管がすごくうまいオケだというのもあるんですが、5.1chに対応する必要があったからなんです。プラハのドヴォルザーク・ホールはマルチテープで録音できる設備があるので、5.1chに落とせる。それで、日本から西野薫さんという歌姫を伴って、菅野さんたちと一緒にプラハに出かけました。これは、僕は同行していないんですが。

──『最臭兵器』の制作はいかがでしたか?

佐々木 これは国内でのレコーディングで、三宅バンドという感じで、錚々たるミュージシャンが集まっておこなわれました。ドラムが村上“ポンタ”秀一さんと宮本大路さん、ハープが朝川朋之さん、ピアノはポンタさんのバンドPONTA BOXの佐山(雅弘)さん、トランペットはエリック・ミヤシロさん、トロンボーンは村田陽一さん、ベースは(渡辺)等さんと(高橋)ゲタ夫さん、ギターは窪田晴男さんと伊丹雅博さんという知る人ぞ知る豪華メンバーです。なんというか、独特な雰囲気の現場でしたね。

──独特というのは?

佐々木 三宅さんご自身の感覚が、まずは独特で。オシャレで先端を行く音楽をやるんですけど、脱力した感じも得意なんですよね。『最臭兵器』のサウンドトラックは、エレクトリックになったあたりのマイルス・デイビス風のテーマがまずはあって、それに加えてマーティン・デニー風の南国音楽で脱力感を出していただいたり。とにかく、いろいろな音楽が聴けるのが『最臭兵器』なんです。

──『大砲の街』に関しては?

佐々木 これに関しては直接制作にタッチしていないんです。おそらく大友さんと音楽を担当された長嶌寛幸さんが話し合いを重ねて、映像に合わせてオールシンセで音楽を付けていったんだと思います。

──『大砲の街』は全編1カットという、特殊な演出による作品でした。場面が切り替わることなく、カメラが移動していって、物語が進んでいくという。

佐々木 そうですね。フィルム・スコアリング(映像に合わせて音楽を作っていく)をしなければいけない作品だったので、大変だったのではないかと思います。『MEMORIES』のサウンドトラックは、各作曲家さんのこだわりと尽力を感じていただきたいですね。これもお金をかなりかけることになってしまって(笑)、いいものができたと思います。

 

KATSUHIRO OTOMO PRESENTS
『MEMORIES』ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK(ハイレゾ)

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●低予算のスタートから、最後はゴージャズになった『トップをねらえ!』

──『トップをねらえ!』は、今回ピックアップした3作品の中では、一番古い作品ですね。

佐々木 庵野さんの初監督作品です。いろいろなところで話してますけど、OVAということもあって、予算のないところからのスタートでして、音楽も基本的にはシンセで作って、そこに生の弦のカルテットを足すという、なんちゃってオーケストラだったんです。だからこそ、メロディをしっかりしないといけないとか、いろいろな課題がありまして、音楽をお願いした(田中)公平さんには、ご迷惑をおかけしました。

──このインタビューで庵野さんのお名前がすでに何度か挙がってますが、音楽へのこだわりは強い方ですよね。

佐々木 各楽曲に対して、こういうのがほしいと明確なビジョンを持って指示を出される方ですね。たとえば「時の河を越えて…」という曲は小松左京の『さよならジュピター』だったり、過去作品へのオマージュが多く含まれているんです。この曲をパクれというわけじゃなく、あくまでイメージ指定で(笑)。そうすると、公平さんはただ指示通りにやるのではなく、いろいろと考えを盛り込んでくるといった感じで。最初は意思の疎通がうまく行かない部分もありましたが、話数が進み、だんだんお互いの仕事のやり方が分かってくると、うまくキャッチボールできるようになっていきました。

──日高のり子さんと佐久間レイさんが歌ったボーカル曲も、既存曲へのオマージュになっていて。

佐々木 あの頃、庵野さんはおニャン子クラブにハマっていたんですよ(笑)。「トップをねらえ!~FLY HIGH~」はうしろ髪ひかれ隊を意識しているし、「元気でね」は「じゃあね」を意識して、でも、決してパロディという事ではなく。

──遊び心ですよね。

佐々木 そもそもタイトルが『トップガン』と『エースをねらえ!』の合わせ技ですからね。でも、内容はパロディ作品かと思いきや、実はちゃんとしたSFで。最初はとりあえず4話まで作る予定だったのが、6話まで作れることになったんです。しかも売れたので、お金をかけてもいいことになって。4話までは16ミリフィルムだったのが、5話と6話は35ミリなんですよね。

──もちろん音楽にも予算が回ってきて。

佐々木 生のオーケストラが使えるようになりました。ですから、サウンドトラックも後半に行くにつれてゴージャスになっています。あ、ここからお金を使えるようになったんだ、と思って聴いていただければと(笑)。

──『トップをねらえ! 音楽集』の配信版は、当時リリースされた2枚のサントラCDを新たに編集したものです。

佐々木 CDにはドラマパートも収録されていたので、音楽だけを抜き出して編集したのが配信版です。ラスト近くに、交響詩「GUNBUSTER」という曲が収録されていますが、これも聴きどころですね。それまでの曲のメロディが次々に出てきてドラマを振り返る、10分越えの長い曲です。

──最後に、今回語っていただいた3作品に共通するものがあるとすれば、なんでしょうか?

佐々木 音楽でフィルムを盛り上げていく快感が強くあった作品ということですね。『トップをねらえ!』は最初はコミュニケーションがうまくいかなかったのが、映像と音楽のキャッチボールができるようになって、シーンに音楽を当ててぴったりハマった時の快感が本当に大きかった作品です。また、こんな作品をやりたいという思いが、『マクロスプラス』や『MEMORIES』に繋がっていって。それぞれの作品の監督も、音楽に対する感覚が面白くて。そういう方々とたくさん仕事ができたのは幸せでしたね。

 

トップをねらえ!音楽集(ハイレゾ)

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【プロフィール】

佐々木史朗(ささきしろう):株式会社フライングドッグ代表取締役。1982年にビクター音楽産業株式会社に入社。営業部門で3年勤務した後、アニメーション制作のセクションへ。以来、アニメ畑を歩み続ける。2007年にJVCエンタテインメント株式会社内にアニメ専門レーベル、フライングドッグが創立。2009年には社名を変更し、株式会社フライングドッグとなる。

 

 


 

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