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[12/17]【連載】津田直士「名曲の理由」 第10回「白鳥」~組曲『動物の謝肉祭』より

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津田直士プロデュース作品『Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~』に収録の名曲たちをご紹介しています。

 

File06. 「白鳥」(作曲:サン=サーンス)

 

 

 

 

※動画内に表示される《X段目》という表記に文中の《X段目》が対応します。

 

 今回は サン=サーンスが生んだ名曲 「白鳥」をご紹介します。

 

 「白鳥」は1886年に作曲された組曲「動物の謝肉祭」14曲の中の1曲です。14曲の中ではチェロの独奏曲として特に有名で親しまれている名曲です。

 シャルル・カミーユ・サン=サーンスは、その名前でわかるようにフランス人の作曲家です。 この「白鳥」を生んだのが1886年ですから、クラシックといっても比較的最近の作曲家ですね。 「白鳥」を聴いているとその曲調からもう少し昔の世代の作曲家の様に感じますが、どうやらサン=サーンスは保守的な作風を大事にしていたようで、その理論的な音楽に反発した、彼より若い世代のドビュッシーやラヴェルが「印象派」と呼ばれる新しい音楽を確立していくことにつながったようです。 とはいっても、やはりこの曲が生まれた時代は1800年代の終盤、「動物の謝肉祭」の他の曲を聴くと、調性や音のとらえ方がベートーベンから始まったロマン派の中でも、新しく聴こえる部分がたくさんあります。 第7曲「水族館」や第8曲「耳の長い登場人物」などでは、映画音楽などでよく耳にする、機能和声の制約から解き放たれた自由で神秘的な音の世界を感じとることができます。 第11曲「ピアニスト」に至っては、聴いているとその遊び心に笑ってしまう程の自由さが展開されます。

 とはいえ、その一方でこの「白鳥」のように美しさに溢れた普遍的な名曲も生むのですから、やはり世界に残る天才といえるでしょう。 それでは早速「白鳥」の名曲性を見てみましょう。《1段目》

 

 伸びやかで美しく自由に上下するメロディーがこの「白鳥」の最大の魅力です。まさに水面を優雅に泳ぐ白鳥のように……。まず最初から(以降、移動ドで音階を表します) 「ドーシーミーラーソードーレーーーーミファーーーー」 と、シンプルでありながら誰もが心に快感を感じるメロディーが展開していきます。

 作曲をする私たちのような人間にとって、このメロディーは美しいメロディーの見本のような輝きをもっていると感じます。 高い音から低い音へ下がっていく最初の「ドーシーミー」を「ラーソードー」というメロディーが追いかけるように登場し、「レーミファー」と少し上がって終わる、この一連のメロディーを聴くと、私は美しいメロディーがどんな時代のどんな国の人にも伝わり、心を動かすという事実を改めて確信してしまいます。《2段目》

 続くメロディーも、下から上へ 「ラーシドレミファソラシ……」 と綺麗に昇っていくのですが、 最後が「ド」ではなくもう少し離れた上の「ミ」て着地するのです。 この瞬間、聴いている人の心はその音の高さの快感に打たれるわけです。《3段目~4段目》

 続いて再び 「ドーシーミーラーソードー」と 《1段目》と同じメロディーが展開しますが、その次の音は「レ」ではなく 「ミ♭」から始まるのです。 何故なら、この瞬間、キーが本来の「G」から5度上の「D」(=「Bm」)に転調しているからです。

 

 そして、それまで比較的穏やかな雰囲気を醸し出していた和音が、この辺りで少し悲しみを帯びた和音に変わります。 この和音の表情の変化も、この曲の素晴らしい魅力のひとつです。《5段目~6段目》

 その「D」のキーが2小節目でいとも簡単に「G」のキーへ変化します。 それはG/Bの次に来るB♭dimというコードのおかげです。 そして6段目では5段目と同じメロディー、同じコード進行がちょうど一度(全音)分、下のキーで展開します。 つまり移動ドで表すと、 「ドーラーファーラーシードーソーーーーラシーーーーー」 というメロディーが、一度分、下に降りてそのまま繰り返されているわけです。《7段目~8段目》

 このセクションは、それまで「F」だったキーがまた「C」に変わり、 「ミーラーシードーーーレミファ♯ーーーーーミーーーーー」といった暗さと明るさが中間で漂うようなメロディーと和音で展開し、8段目の2小節目で和音がAmの代わりにAというメジャーコードに変わることでドラマティックな雰囲気に変わり、その後のDmが続いてまたメジャーコードのDに変化することでさらにドラマティックになりつつ、ごく自然に「G」のキーに戻っていきます。《9段目~10段目》

 ちょうど繰り返しのように、《1段目~2段目》と同じメロディー、コード進行が展開するのですが、 最後の和音で一気にドラマティックな世界がに変化します。 それは、ちょうどこのキーの5度の和音であるというコードが本来「Em」であるべきなのに、マイナーコードではなくメジャーコードの「E」になるからです。 この和音は本当に不思議な力を持っていて、誰もが切なく感動的でドラマティックな気持になるのですが、それがここでとてもうまく使われています。そしてその後、優しいメロディーと落ち着いた和音に支えられて曲は終わりを迎えます。

 

いかがでしょうか。 「動物の謝肉祭」という、曲によってはユーモラスだったり皮肉さに満ちていたり、全体的に生まれた時代を反映して「機能和音」から解き放たれ「全音音階」を取り入れる印象派的なアプローチも使われている組曲の中、純粋な名曲性が光る「白鳥」を聴いて、夢の中にいるような幸せを味わってみて下さい。

 


 

■津田直士プロデュース作品のご紹介■

DSD配信専門レーベル "Onebitious Records" 第3弾アルバム
Anming Piano Songs ~聴いてるうちに夢の中~

1. G線上のアリア / 2. 白鳥~組曲『動物の謝肉祭』より / 3. ムーン・リバー / 4. アヴェ・マリア / 5. 見上げてごらん夜の星を / 6. 心の灯 / 7. ブラームスの子守歌 / 8. Over The Rainbow / 9. 夜想曲(第2番変ホ長調) / 10. 優しい恋~Anming バージョン / 11. ベンのテーマ /12. LaLaLu

試聴・購入はこちら

 


 

【プロフィール】

津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
小4の時、バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “音の謎” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX(現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。 ‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony)や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS)、アニメ『BLEACH』のキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書『すべての始まり』や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス「ソニアカ」の講義など、文化的な活動も行う。

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Twitter : @tsudanaoshi
ニコニコチャンネル:http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi

 

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