最新のトピックスへ Facebook Twitter

[6/27]ジューン・ブライドもあとわずか...ウェディング特集を実施中&スペシャルエッセイを送ります

Tweet(ツイート)    

weddingsong.jpg

 

6月も終盤、今週末に駆け込みで「ジューン・ブライド」を迎える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
moraではウェディングソング特集を実施中。晴れの日に聴きたい楽曲を集めました。

また、今回特別にラッパー/トラックメイカーの佐伯公介さん(三浦大知、松下優也などに曲提供)に、ウェディングをテーマにオススメの10曲を選んでいただきました。プレイリストはまとめて購入できますので、こちらもぜひチェックしてみてください!

 


 

CAM500kb.jpg

佐伯 公介(サエキ コウスケ)

東京出身のラッパー/トラックメイカー。

キャッチーなメロディーと暴れる押韻主義で描き出す歌詞表現で独自の世界観を確立している。

CIMBA,T-SK,ZEROなど数々のミュージシャンが所属するCREW「MASEGAKI CIRCUS」のリーダーであり、2012年ラップグループ"Allies"(エイリーズ)のメンバー/プロデューサーとしてメジャーデビュー。2014年Alliesの解散後、名義を本名の佐伯 公介としてソロ活動をはじめる。

三浦大知、松下優也、X4への作品提供、般若、ZORNへのトラック提供などアンダーオーバーを問わずその評価は高い。

現在は東京・恵比寿のBATICAにて毎月第2土曜日深夜に「YEBIS ODDS(エビスオッズ)」を開催。自身のライブに加えてパーティーのホストとして様々な音楽を提供している。

 

~佐伯 公介の選ぶ10曲~

No matter where you are/US
It Girl/Jason Derulo
THE BEST TEAM/Maia Hirasawa
Marry You/Bruno Mars
I Choose You/Sara Bareills
A Song Foe Mama/BOYZ Ⅱ MEN
A Thousand miles/Vanessa Carlton
骨/黒木渚
Lovelier than you/B.O.B
ダンデライオン/毛皮のマリーズ
 

 

 


 

 

スペシャルエッセイ(文:佐伯公介)

 

 思えば僕は何故ここに居るのか。

 同い年くらいの男女がいくつかのグループに分かれて談笑し、他のグループをチラチラと意識している。しきりに自慢の時計を気にしているエリートサラリーマン風の男性。午前7時から美容院に駆け込んだであろうグルグル頭の女性陣。すでに飲んでいるのか学生みたいに騒いでいる体育会系の一団。銘銘の個性をここぞとばかりに爆発させながらこの状況をハレの日たらしめている。

 僕はと言えば成人の時に作ったグレーの冴えないスーツで、のし袋の記入に不備がないか気にしている。手持ち無沙汰で携帯をいじってみるが、暇つぶしのパズルゲームをとなりのグルーピーに見られたら目も当てられない。しょうがないのでタバコでも吸おうかと待合室を出ようとしたところに係員が入って来てこう告げる。

 「お待たせいたしました。これより式場の方にご案内いたします。ご新郎様のご友人はこちらに、ご新婦様のご友人はこちらにお並びください。」

 約2ヶ月前、数年ぶりに小学校の同級生から連絡が来た。

 今度結婚するので式に来てくれないか、ついては招待状を郵送するので住所を教えてほしい。というものだった。家が近くて何度か一緒に登下校した事があった程度の、携帯を手に入れたばかりの頃には何度か長電話をした事がある程度の、密かに想いを寄せていた女の子からの結婚式への招待だった。

 不遇にも待合室の入り口で係員と出くわしてしまったせいで僕は新婦側の列の筆頭になってしまった。体育会やグルグル頭の”あの人新婦側だったんだね”の視線が背中に突き刺さる。安物のスーツに穴があきそうだ。丁寧に”御”を消して出席に○をつけた2ヶ月前の自分を恨まずにはいられない。グルグル頭どもは”遅刻かっこいい”的理論なのか席を立とうとしない。僕だけが一番前にぽつんとたっている状態が1時間にも1日にも感じられた。

 なるほど、これが相対性理論なのか。するとおばあちゃんの足下を気遣いながら親族たちが現れ、僕の後ろに並んだ。これはやばい。「前へどうぞ」と先手を打つべきか、偽の電話にかこつけて列を離れるか思索していると、案の定係員に「ご友人様はご親族様の後ろにお並びください」と諭された。もう泣きたい。恥ずかしい。披露宴には出席しない決意を固めた。安心してください、お金は幹事の方にお渡ししておきます。

 小学校の登校時、「おはよう」と言ってくれたのは彼女の方からだった。

 その頃クラス内での男女の壁は高かった。ベルリンの壁を知らない僕らは、壁は壊せることを知らなかった。女子と一対一で話そうものならまわりに冷やかされ、”タラシ”(女たらし)の称号が与えられ、市中引き回しの刑が処される暗黒の時代だ。彼女を通学路で見かけても、暗殺を目論む忍者の体で付かず離れずの距離を保ってストーキングまがいのスキルを磨いた。

 しかし往々にして幼稚な男子の虚勢やくだらない体裁を打ち破るのは、女子のふとした行動であったりするものだ。彼女はそんな事おかまいなしに、至って自然に声をかけてくれた。

 なんとか新郎新婦両友人の整列が終わり、係員の案内でチャペルへと向かう。重厚なドアをあけバージンロードの赤い絨毯と両側に並ぶ木製のベンチが晴れがましく並ぶ。後ろの女性陣がその神秘的な光景にため息をもらす。数分後、彼女は人生で一番美しい姿でこの道を父親と歩き、生涯の伴侶と腕を組んで帰っていくのだ。ふと嫌な予感がした。

 そしてすぐにその予感は的中する。左側の通路に案内され一番前から親族が座っていく。その列について進んでいくが係員が僕を制止する。

 「ご友人様はこちらです。」

 やはりか。この係員とは因縁を感じざるを得ない。仕方なく指示に従い3列目のベンチの奥へと進む。そのベンチの一番奥、バージンロードの真横の席が割り当てられた。僕はここで花嫁を迎え、送り出す。超至近距離で。言わずもがなだがバージンロードでの新郎新婦の歩みはすこぶる遅い。ぼくの前を通過するのに10秒弱はかかるだろう。「おめでとう」と拍手しか武器はない我々はひたすらに拍手を送り、「おめでとーう!」と大声で会場を賑やかし、新郎新婦と目が合えば口パクで”エアーおめでとう”を個人的に送り、この入退場をやり過ごすのだ。僕は緊張感を隠すため、足下に固定された用途不明のクッションのようなものを踏み踏みしていた。

 彼女との登下校では色んな事を話した。先生の悪口から、誰が足が速くて、誰が絵がうまい。なにが好きで、なにになりたいか。当時彼女は家をつくりたいと言っていた。家族皆でずっと一緒に暮らせるように。当時は「そうなんだ」と流して聞いていたが、今思えば殊勝な夢である。時代が時代なら将来はキャバクラ嬢になりたいと言ったかも知れないと思うとぞっとする。

 僕たちの登下校も最初のうちは途中からクラスメイトが合流して、学校につく頃には自然と男女別のグループになっていた。帰り道もお互いひとりになったら一緒に帰ったが、約束をするような事はなかった。そのうちクラスの目も気にならなくなって、学校でも話かけたり、教室まで一緒に登校する事も増えた。その肩肘はらないスタンスにほだされて、クラスの男女の壁は自然と崩れていった。それでも僕の中で彼女は唯一話す女子であり、彼女と最後まで一緒に帰るのは僕であった事を特別に思っていた。これが僕の初恋なのだった。

 来賓が席につくと間もなく神父が入場し、新郎がチャペルに入ってくる。さすがにこれには参った。新郎が赤い絨毯のうえを歩いていると、新婦友人席の一番前に見た事もない男性がひとり。知らない人同士が人生の晴れ舞台で顔を合わせる。珍妙なり。とっさに会釈をしてしまったが、新郎は笑顔で返してくれた。ナイスガイっぽい。いい人そうでよかったという安心感と、チクリと胸を刺す嫉妬心。彼女はこの人の奥さんになるのだ。飾らない、家族想いの、笑顔の可愛い彼女はこの男のものになるのだ。思わず

 「なるほど」

 と小声で意味不明の強がりを発していた。強がれていたのかすら定かではない。となりのグルグル頭は節操もなくケータイカメラをパシャパシャとやっていた。新郎が壇上に上がり、振り返り扉に向き直る。神父が「それでは新婦の入場です」と言いチャペルのドアが開く。

 小学校を卒業して僕たちはバラバラになったが、家が近かった事もあり道ばたで会っては立ち話で近況を報告したりした。携帯電話を持ってからは年に2度くらい「元気?」とか「さっき見かけたよ!」とかメールが来て、ぼんやりと連絡をとっていた。20歳を記念した同窓会では普段から会う分そんなに話す事もなかったが、一次会の終わりに「帰るなら久しぶりに一緒に帰ろっか」と声をかけられた。酒の入った同級生達の執拗な誘いを振り切ってふたりで家路についた。

 誰々がかっこ良くなった、あの娘はドコドコの大学に行った、でもみんな結局変わってなくて最高だ。昔と同じようにとりとめもなく話す彼女は、少女から成長し美しい女性になっていた。僕はなんだか居心地が悪くなって、誤摩化すようにはじめて声をかけてくれた日の事を聞いてみた。どうして急に声をかける気になったのか。彼女は事も無げに言った。

 「いつも追いつかないように距離をとってる君が面白くて、気になってたから。忍者みたいで。」

 くそう、バレていたのか。いや、ちょっと待て。気になっていた?それって?

 「それじゃあここで」

 いつもの分かれ道で彼女が言う。

 「あぁ、じゃあ気を付けてね」

 聞けない。勘違いだったらとんでもない醜態だ。でも彼女は確かに言った。僕が気になっていたと。もしかしたら彼女は僕の事が今でも好きで、急に振り向いてやっぱりあなたが好きー!と走ってくるのではないか。という妄想を胸に彼女が見えなくなるまでその後ろ姿を見送った。思えばあの日もこのスーツを着ていたのか。

 チャペルのドアが開くと、溢れ出す光とともに彼女のシルエットが浮かび上がる。真っ白なドレス、何メートルも続くヴェールを携え、父親にエスコートされバージンロードを歩いてくる。さっきまでの詭弁はどこへやら、不覚にも完全に見惚れてしまった。

 ゆっくりと新郎の元へ歩を進める彼女と一瞬目が合った気がしたが、その光景は現実味を失っていてテレビの向こうを見ている感覚だった。

 父親がゆっくり新婦を新郎のもとに送り届けて自分の席に戻る。すこし照れたように目を合わせて微笑み合うふたり。ステンドグラスから差し込む陽光、祝福の拍手、歓声、電子的なシャッター音。その全てがふたりにむかって惜しみなく注がれるなか、僕はただ彼女に見惚れていた。

 男は馬鹿だ。下手な体裁や虚勢に囚われて、目の前で起きている事が見えていない。そしてありもしない妄想を抱えて勘違いを繰り返す。僕が今日ここに来たのは、同窓会の帰り道で彼女が言うはずだった言葉を聞くためなのかも知れないし、ぼんやり彼女が気になる気持ちを断ち切るためだったのかも知れない。そのために着慣れないスーツを引っ張り出し、知らない同世代からの視線に耐え、のし袋の書き方と適正な金額をググって今日ここにきたのだ。しかし、どれだけ妄想を重ね、勘違いをしても一定の距離を必死で保つ忍者とそれが気になっていた少女はもうここには居ない。

 その後の事はよく覚えていない。ただただ眺めていた。祝福の気持ちも、小さな嫉妬もひっくるめて美しい彼女の幸福の形を眺めていた。覚えている事といえば、聖歌を大声で歌い出してしまったことくらいだ。高揚していたのだと思う。

 彼女の幸せを見届けられてよかったと思う。僕も彼女のように快活に、自然体で生きていければ愛する誰かに出会えるのだろうか。女子はいつも男子の先をいくのである。

 ちなみに僕が呼ばれた理由は未だもって謎のままだ。

 

[同じカテゴリの最新トピックス]

コメント(2)


久しぶりにエッセイなるものを夢中で読みました。


この主人公目線の結婚式エピソードを、絶妙なタッチで描かれていますね。

思わず吹き出しそうになるコミカルさ(まさかの新婦側先頭とか、‘'口パクのエアーおめでとう’’とか表現が面白いし、あるある!って感じ)
回想部分には哀愁すら感じ、
その情景が目に浮かぶようで、読み手の心にも
じんわりくるものがありました。


よく本を読まれる方なのでしょうか。

良い音楽を作る方は、こんなにも賢く文才があるのかと
感心致しました。

もっと佐伯さんの文章を読んでみたいです。



Alliesの時も、そしてソロなってからも公介さんの作る音楽が大好きです。
公介さんの書く歌詞が本当に大好きだから、ココでエッセイを読むことが出来て、とても嬉しいです。
ちょっぴり時間かかっちゃったけど、ココに辿り着けて本当によかった。



※現在、新規コメントの投稿は休止しております。

mora TOPIC トップへ
moraに戻る
Facebookページへ
mora公式Twitterページへ
ページトップへ
▲ページの先頭へ戻る