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[3/13]【連載】津田直士「名曲の理由」第6回:特別編 「名曲を生むべく...」

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※今回は都合により、特別寄稿となります。

 

こんにちは。
作曲家・音楽プロデューサーの津田直士です。

現在私は、今月末にリリースとなる全12曲入りのアルバム制作(※)をしております。

作品をいくつも新たに生み、アレンジを施してレコーディングをしているのですが、この「名曲の理由」を連載している私自身も、生み出す作品は常に名曲を…という心構えで臨んでいますから、5週間という限られた制作期間の中、心を傾け、集中して作品を創っています。

またその一方で、この連載「名曲の理由」も、素晴らしい名曲をご紹介したい一心で、動画と文章にじっくりと時間をかけ、充実した内容をお届けできるよう、心がけています。

そういった背景から、音楽制作のスケジュールが非常にタイトな今、配信スケジュールについてmora readingsの編集長に相談したところ、津田さんも真剣に音楽を創っているのだから、今回は閑話休題といった趣で名曲の解説ではなく近況報告的な内容を書いては?というご提案を頂きました。
そんなわけで、今回はこのような特別寄稿をお届けすることに致しました。

 


 

※(3/31 追記)今回制作したアルバムが『Gradation』のタイトルで配信中です!

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DSD専門レーベル「Onebitious Records」第一弾
『Gradation』

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~僕が作曲をした、ある日の様子について~
 
 
現在私が制作を手がけているのは、moraより3月31日にリリース予定の「あなたの人生を映画に・・・」というアルバムで、作品はすべて私の作曲・アレンジによる、インストゥルメンタル曲です。
 
アーティスト物のプロデュース作品とは異なり、私のイメージをそのまま純粋に作品にするため、頼りになるのは自分自身のクリエイティビティのみ、というわけで、日々集中して制作に取り組んでいます。
 
ところで、この連載「名曲の理由」では、歌や楽器演奏、サウンドアレンジなど、様々な要素によって音楽となっている作品を、あえてメロディーと和声という音楽的に最もシンプルな状態に整理した上で、その作品が名曲である理由を解説しています。
 
そしてたまたま、現在私が制作している作品は、インストルメンタル曲ばかり、しかもサウンドについては私の演奏するピアノが基本、というシンプルさ・・・なので、まるで作品自体ちょうど私がこの連載で名曲を解説している状態に近く、私の作品がどれほどのものか、という様子が、一目瞭然となってしまっています。
 
ですから私は今、新たに曲を生む際も制作している際も、自分の作品が果たして名曲といえるのか、という問いかけと常に真剣に向かい合いながら、この数週間を送っているわけです。
 
さて、ちょうどこの連載の前回分が配信された後、このアルバム内容の大まかな方針が決まりました。
 
その方針に基づいて、アルバムの曲を創り始めたのですが、アルバムの内容上どうしても必要な、メインとなる、ある曲調の作品だけが、なかなか生まれません。

核になるメロディーとそれをささえる和声のイメージが、なかなか浮かばないのです。

 
とりあえずその曲は保留のまま、他の曲の作曲やアレンジ、レコーディングなどを進めていたのですが、その作品がないとアルバムの方向性が確定できないので、ずっと気がかりでした。
 

 
そんなある日の朝、その作品のことを気にしながら目が覚めた私は、ベッドの中で寝たまま、何かヒントはないものかと、自分の過去の作品をいろいろ想い浮かべていました。
 
私の場合、作曲は基本的に楽器を使わず、心の中で行います。
 
楽器を使うと楽器の制約が生じますし、そもそもイメージが限定されてしまうからです。
 
ですから、寝ている状態でも作曲はできます。(実際、ほとんどの曲を私は、シャワー中や散歩中、または横になった状態で生んでいます)
 
そうしてふと、三年前、あるアーティストに提供した曲の、サビの終わりのあたりにヒントがあることに気づきました。
 
アップテンポのサウンドの中で、メロディーが下から一気に上がって、そのまま降りてくる、その流れを繰り返しながら、少しずつ形をかえていく・・・そんな漠然としたイメージです。
 
そのイメージに基づいて強く深くインスピレーションを湧かせながら、心の中でメロディーを探っていましたら、突然、サビのメロディーが生まれました。

 
『生まれた!これは間違いない・・・』

 
それはそれは、嬉しい瞬間です。
 
ただ、その段階ではまだ単なるイメージなので、それが消えてしまわないうちに、何かに残さなければなりません。
 
イメージが消えないように意識を集中させながら、そのイメージによる高揚感をさらに膨らませ、核になるメロディーをボイスレコーダーに収録、そしてそのメロディーを支える和声を、再度イメージします。
 
和声をイメージすると、その先が見えて来ます。
 
高揚感がさらに膨らんでいくからです。

いい曲が生まれ始めた瞬間、核になるメロディーを支える和声は、その先に続くメロディーを生み出すためのエンジンの役割を果たすことがよくありますが、この時もそうでした。

メロディーを支える和声が心地よく胸に響き、私はさらに強い高揚感に包まれました。
 
生まれつつある曲が、とても強い生命力を持っているのが、よく分かります。
 
このあと曲がどのように発展していくのか、生まれた曲の生命力に任せて曲を育てるためにも、今度はピアノでもう少し音楽的に確認をすることにしました。
 
幸い、集中制作期間のため、仕事部屋ではいつでもアレンジやレコーディングができる環境が整っています。
 
核になるメロディーをピアノで弾きながら、もう一度注意深く確認します。
 
ほんのちょっとした音程の違いや、譜割り(メロディーのリズム)の違いで、生命力が突然消えたりしますから、ここはとても大事なポイントです。
 
そして、メロディーと心が求めている和声を確認し、さらにそれによってその先どんな風に曲が成長していくのかを、確認します。
 
間違わないよう、慎重にピアノで演奏してみます。
 
心の中で鳴っていた音楽が、より具体的になっていきます。
 
この段階で気をつけるのは、ピアノの音やコード進行によって、イメージがありきたな方向やイージーな方向へミスリードされないようにすることです。
 
そう、オリジナリティの確保ですね。
 
心に生まれた曲の原型はオリジナリティの塊ですが、それを曲として発展させる途中でオリジナリティが薄れたり失われたりしないよう、気をつけます。
 
ここでサビが完成したので、その勢いでAメロも生み、一気に曲を完成させたくなりました。
サビに生命力がちゃんとあると、AメロやBメロも導かれるように生まれることが多いからです。
 
(もちろん、Aメロから生まれてそのままサビまで一気に生まれることもあります。生命力の源がどこのパートから生まれるかは、曲によってまちまちです)
 
何度もサビを弾きながら、心が望む方向を探っているうちに、Aメロの表情が見えてきました。
 
サビが『強い決意と未来の輝きに向うイメージ』だとすれば、どうやらAメロは『心のまま、素直に自分を見つめる感じ』のようでした。
 
その表情に導かれ、メロディーがコード進行と共に生まれ始めます。

途中でよりリアルな感じ、つまり『少し迷ったり未知なものを見つめている表情』も欲しくなったため、それもそのまま曲にしていきます。
 
そうして自然な流れでAメロからBメロが生まれていきました。
 
あとは、それが命あるままサビにつながれば大丈夫。

そこだけは、全体の流れや音楽的なセンスを使って試行錯誤します。

そしてしばらくすると、Bメロからサビにいく力強い流れを見つけることができました。

改めて、Aメロ~Bメロ~サビという流れをピアノで弾いてみます。

メロディーの細かい譜割りはまだ改良の余地はありますが、曲が生まれた瞬間の生命力は全く衰えていません。むしろ、AメロやBメロが生まれたことと、和音の織りなす音楽的な美しさも相まって、より生命力が強くなったようです。
 

成功です。

心から納得のいく曲が、ちゃんと生まれました。
 

音楽に携わる仕事をしていて、本当に良かったな、と思う瞬間です。

そして何より嬉しいのは、この曲が生まれたことで、アルバム全体の方向性がしっかり確定できたことです。
 
生まれた曲をピアノでもう一度弾いて、いつでも聴けるようにラフにレコーディングし、次は全体の構成を考える段階、という状態になったことを確認すると、僕はカーテンを開け窓を全開にして、明るい陽射しと冷たくて気持ちの良い空気を部屋に招き入れ、アルバム全体のイメージをもう一度膨らませました。
 
 

3月31日には、今制作しているアルバムの配信が始まります。
 
それまでにいい曲をたくさん生んで、レコーディングもして間に合わせなければなりません。
 
頑張ってラストスパートをかけ、無事アルバムを完成させたいと思います。
 
ですから、次の「名曲の理由」をお届けできるまで、2週間ほど時間を頂けたら、と思います。
 
 
 
なお、次回は、ある大御所の方の作品を予定していますので、ご期待下さい!
 
 
 

 
 
【著者プロフィール】
 
津田直士 (作曲家 / 音楽プロデューサー)
 
小4の時 バッハの「小フーガ・ト短調」を聴き音楽に目覚め、中2でピアノを触っているうちに “ 音の謎 ” が解け て突然ピアノが弾けるようになり、作曲を始める。 大学在学中よりプロ・ミュージシャン活動を始め、'85年よ りSonyMusicのディレクターとしてX (現 X JAPAN)、大貫亜美(Puffy)を始め、数々のアーティストをプロデュ ース。
‘03年よりフリーの作曲家・プロデューサーとして活動。牧野由依(Epic/Sony) や臼澤みさき(TEICHIKU RECORDS) 、BLEACHのキャラソン、 ION化粧品のCM音楽など、多くの作品を手がける。 Xのメンバーと共にインディーズから東京ドームまでを駆け抜けた軌跡を描いた著書「すべての始まり」や、ドワンゴ公式ニコニコチャンネルのブロマガ連載などの執筆、Sony Musicによる音楽人育成講座フェス『ソニアカ』の講義など、文化的な活動も行う。
 
Twitter : @tsudanaoshi
ニコニコチャンネル:http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi
 
 
moraで 津田直士の音楽を聴くことができます。
 
・プロデューサーとして作曲・編曲・ピアノを手がけた 
DSD専門自主レーベル"Onebitious Records" 『あなたの人生を映画に・・・』 
☆3月31日、同曲とコンセプトを同じくするフルアルバムがリリース予定!
 
・プロデュースを手がける
mora Factory アーティストShiho Rainbow の『虹の世界』『Real』『星空』 
 
 

 
 
津田直士「名曲の理由」バックナンバーはこちらから
 
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