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[2/27]【連載】日高央(THE STARBEMS)の「今さら聴けないルーツを掘る旅」 vol.4

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Vol.4 Theme: 「アメリカの祭典はイギリスに支えられている?

 

 アメリカ全土の音楽産業を盛り上げるために1959年から始まったグラミー賞も、56回目を迎えた現在、世界で最も有名な音楽の祭典となっているのは、皆さんも良くご存知かと思います。

 今年度、最多の4部門を受賞したのはイギリス出身、若干22歳のシンガーソングライター、サム・スミスでしたが、彼の最大のヒット曲「ステイ・ウィズ・ミー」(アルバム『In The Lonely Hour』収録)に盗作疑惑が持ち上がっていたのはご存知だったでしょうか? トム・ペティが1989年に発表した「アイ・ウォント・バック・ダウン」に類似していると、ペティ側の弁護士が指摘した事に端を発します。

 

「アイ・ウォント・バック・ダウン」収録

Tom Petty
「Full Moon Fever」

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 聴き比べると確かに似ているのですが、指摘を受けたスミス側は速やかに類似を認め、作曲クレジットにペティらの名前を盛り込み印税を分配。しかし「トム・ペティ氏の曲は知らなかった、聴いた事がなかった」と主張……迅速な対応の割にシラを切るとは……これは怪しいっ! と誰もが疑い始めたところ、トム・ペティ側も速やかにコメントを発表しました。

 曰く「曲作りではよくある事だし、俺は悪感情は抱いてないよ。訴訟なんて言葉は出なかったし、俺の意図するところでもない」……大人っ! トム・ペティ、大人だわっ! 1976年にトム・ペティ&ザ・ハート・ブレイカーズとしてデビューした当時、セールスに恵まれず破産宣告までしてしまったものの、3rdアルバム『破壊』(原題:Damn The Torpedoes)が全米2位の大ヒットを記録して以来、POPなメロディーの中に泥臭さを感じさせるブルージーな魅力で、アメリカンROCKの代表として永きに渡って愛されているだけあります。

 ビートルズ好きでもお馴染みな彼が、同じくビートルマニアなELOのジェフ・リンと組んで1989年にリリースした初のソロ・アルバム『フル・ムーン・フィーバー』に収録されていたのが「アイ・ウォント・バック・ダウン」。ペティ得意のミドル・テンポなROCKナンバーで、Aメロでのブルージーな渋さが、サビに突入すると一気に明るく突き抜けて、爽やかな開放感が気持ち良い名曲です。ここで面白いのが、類似してしまったサム・スミス「ステイ・ウィズ・ミー」のサビは、この曲のサビに似ているのではなく、Aメロに似ているのです……特大ヒット曲のサビが、既にAメロで出て来て、その後に更に爽快なサビを持ってくるとは……天才っ! トム・ペティ、天才だわっ!

 共同作曲者のジェフ・リンのPOPセンスも手伝っての事かと思いますが、同曲ではビートルズのジョージとリンゴも参加しており、本家まで担ぎ出してしまう才能と人柄は、やはりトム・ペティに負うところが大きいのでしょう。そんな名演・名曲を支えていたのがイギリス出身のビートルズで、その四半世紀後にグラミー賞を騒がせる事になったのも、同じくイギリスのサム・スミス……地理と時代が、音楽を通じて一周してしまったかのような2015年のちょっとした珍事。遥かなる英国に想いを馳せながら聴くと、名曲達の輝きも一層と増すような気がしませんか?

 
 

 
 
【日高央 プロフィール】
 
ひだか・とおる:1968年生まれ、千葉県出身。1997年BEAT CRUSADERSとして活動開始。2004年、メジャーレーベルに移籍。シングル「HIT IN THE USA」がアニメ『BECK』のオープニングテーマに起用されたことをきっかけにヒット。2010年に解散。ソロやMONOBRIGHTへの参加を経て、2012年12月にTHE STARBEMSを結成。2014年11月に2ndアルバム『Vanishing City』をリリースした。
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