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[12/22]堀内 護(マーク from GARO)『時の魔法』レコーディング秘話

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■それぞれの“GARO愛”が結集して生まれた新作『時の魔法』

 

──今回は、マークさんの復帰作でもあり、また惜しくも遺作ともなってしまったアルバム『時の魔法』ハイレゾ配信に寄せて、制作ディレクターを担当されたEPICレコードジャパン寺尾拓海さんと、ミックスや録音の大半を務められたエンジニア原田孝一さんに話を伺いたいと思います。まず、お二方とも20代ということなのですが、GAROはもちろんリアルタイムではないですよね?

 

寺尾 リアルタイムでは無いのですが、自分はもともとGAROのフリークだったこともあって、マークさんとは2006年ぐらいから交流をさせて頂いていました。今回このアルバムを制作するのにあたっては、ベテラン勢と若手の化学反応みたいなものを期待して、自分と同世代の若きエンジニア、原田さんにお願いしました。懐古趣味的な感じにするつもりは、一切ありませんでしたから。

 

原田 僕は寺尾さんからこの話を受けて、J-POPのルーツ、レジェンドとも呼べるGAROの音源を研究するところから始めました。寺尾さんの言葉の端々には“GARO愛”みたいなものが溢れていて…ユーザー目線を強く意識したアルバムになっているんじゃないかなと思います。

 

──なるほど。新鮮な座組みでスタートしたわけですね。アルバム制作の流れはどのように進んで行ったのですか?

 

寺尾 今回、監修をして頂いた音楽評論家の富澤一誠さんとマークさん、僕の3人で企画を立ち上げた時には、まずマークさんの新曲デモを聴くところからスタートしました。マークさんにはデモを20曲ほど用意して頂き、その中から3曲がピックアップされて、作詞家の松井五郎さんに歌詞を書いて頂きました。この3曲は松井さんによって「虹色のラベンダー」「ガラスの涙はもういらない」「アビーロードの青い空」と名付けられました。「ガラスの涙はもういらない」など、GAROファンの心をくすぐるネーミングセンスには、松井さんの強い“GARO愛”を感じました。

 

──GARO時代のセルフカバーも絶妙なセンスで選曲されていますよね。代表曲である「学生街の喫茶店」「ロマンス」に加えて、ファンに根強い人気の「地球はメリーゴーランド」「四つ葉のクローバー」、タイトル曲にもなった「時の魔法」、そして最後の一曲がGAROのデビューシングル「たんぽぽ」なのは、何とも胸に迫るものがあります。

 

寺尾 選曲に関してはかなり悩みました。フォークロックグループとしてのGAROの真価を問う意味では、最大のヒット曲でもあり、そして歌謡路線への転機ともなってしまった「学生街の喫茶店」との向き合い方に非常に慎重になりました。編曲を務めて頂いた三沢またろうさんには、GAROの本質でもあるCSN&Y(Crosby, Stills Nash & Young)流れのアコースティックロックなアレンジを施して頂いて、初期からのGAROファンの方にも喜んで頂ける仕上がりになったと思います。

またろうさんは、音楽業界でも大のGAROフリークで有名ですから。

それと曲順に関して言えば、実はアナログ盤を想定していて、「学生街の喫茶店」~「四つ葉のクローバー」までがA面、「ロマンス」~「たんぽぽ」までがB面という作りになっています。本当は最初、歌詞カードにも「A SIDE」「B SIDE」という表記を入れていたのですが、紛らわしいということで外さなければならなくなってしまって、その代わりにマスタリングの際にA面~B面へ切り替わる部分にレコードノイズを入れるという悪あがきをしました。マークさんにも喜んでもらえたので良かったです(笑) このタイミングでアナログ盤も出したいですね。

 

──このアルバムではディティールへのこだわりが随所にみられますよね。マークさんとは濃密な制作期間を過ごされたと思いますが、印象に残るエピソードなどはありますか?

 

寺尾 マークさんはレコーディングの開始時間より前に必ず到着して、最初にお弁当を食べてから携帯をチェック。短期集中型でレコーディングを終えると、颯爽と帰って行きました。わりとミュージシャンの方ってレコーディングの後もスタジオでのんびり雑談する方が多いんですけど、マークさんはそういうタイプではありませんでしたね。自宅に帰ってレコーディング中の音源を何度も聴き返していたようです。

 

原田 スタジオの近所にあった洋食屋さん「かおり」のお弁当は本当によく食べていらっしゃいましたね。マークさんは揚げ物が好きでよく食べていた印象があります。

 

■天才メロディーメイカーの強いこだわり

 

──音楽家としてのマークさんはいかがでしたか?

 

寺尾 メロディーとコーラスに対するこだわりは凄まじかったです。本当に、毎日が戦いでした。アルバム『時の魔法』やGARO時代の作品を聴いて頂くと分かると思うのですが、マークさんの楽曲では主旋律とコーラスが同等の存在として楽曲に登場します。普通のJ-POPですと、あくまでもコーラスは主旋律のわき役になるのですが、マークさんの中ではハモというかコーラスも含めてその歌のメロディーだったんですよね。

 

原田 ミックスの時に「メイン(主旋律)と同じくらいコーラスを大きくしてね。」と、何度も言われました。普段の仕事ではこんなにコーラスを大きくミックスすることが無いので、最初は慣れるまで時間がかかりましたが、作品が完成に近づくにつれてとても良い感じになって行ったのを覚えています。

 

寺尾 歌のメロディーに限らず、コーラスの一本一本、ギターソロやオブリガートに至るまで本当に素敵な旋律を生み出す人で…。“天才的”と感じることが何度もありました。ハーモニーに関しても厳密でしたね。アレンジの段階でほんの少しコード感が変わっただけでも、直しが入りました。ブルーノートが入ったり、ジャズやブルースっぽいニュアンスになる演奏はすべて、マークさんからNGが出ましたね。

 

■ハイレゾで蘇るマークの息遣い

 

──今回、ハイレゾで生まれ変わった『時の魔法』を聴いてみて、いかがでしたか?

 

原田 マークさんは、歌の“味が濃い”というか、本当に素敵なニュアンスのある歌い方をする人でした。ハイレゾで聴くとその繊細なニュアンスや、息遣いがよく分かると思います。個人的には「Pale Lonely Night」が思い出深いです。何重にもコーラスのトラックをダビングしました。

 

寺尾 ボーカル・ディレクションに関しましては、自分の中にある「GAROのマーク像」に最大限近づける形で歌を録音させて頂きました。マークさんも本当に久しぶりのレコーディングでしたから、例えばマークさんの特徴ともいえるビブラートのニュアンスなど、GARO時代の音源を何度も聴き返しながら録りました。ハイレゾで聴くと、その細かいこだわりがより明瞭に見えてきますね。また、スリリングなギターサウンドもかなり生々しく響きます。スタジオで我々が聴いていた音に近いというか。レコーディングスタジオで過ごした日々を思い出しますね。

 

原田 これは今回のアルバムの狙いでもあったんですけど、正直言ってほとんどの楽器が現代風のハイファイなサウンドには録れていないんです。もちろん、現代技術的に行けば、ハイファイに録ることは出来ました。けれども、まずは求められている音像が基本にあるわけですから。GARO時代の作品のことも踏まえながら、レジェンドとしてのマークさんの存在を守ることにはとても敏感になりました。

特にヒューマンな雰囲気は尊重して、Fairchild 670などのアナログ機材も積極的に導入しました。とにかくディレクターである寺尾さんはGAROが大好きですから、愛がある人たちが何を求めているか、そういうところを意識してサウンドメイキングも進めて行きました。それがハイレゾになることによって、それこそコーラスの微細なニュアンスまで含めてリアルに聴こえてくるんですよね。ある種の“いなたさ”ですら、空気感と共にハイレゾにはおさまっていると思います。

 

寺尾 マークさんはある意味、70年代に一度スタジオを離れてから2010年代のスタジオにタイムスリップしたような部分もあって、現代のレコーディング技術には感心されていましたね。70年代には有りえなかったことが簡単に出来たりもするので。『時の魔法』の制作においてマークさんのイメージは、ほぼ完璧に具現化されたんじゃないかと思います。当時はトラック数も限られていましたから。GAROのファーストは4トラックぐらいでやっていたんじゃないでしょうか。今はほとんど、無限大ですからね。

 

原田 当時はどうしても“ピンポン(※限られたトラックの間で、ソースを追加しながら交互にオーバーダビングする録音方法)”する時にある種の決断が必要でしたよね。その時々で判断したものが積み重なってこれまでのGAROサウンドは出来あがって来たと思うんです。それが今回では、例えば「Stranger in the City」の1A~2Bにかけてのコーラスの積み方。

 

寺尾 あれはGARO時代の知られざる名曲「夜間飛行機」へのオマージュでもあるんですけど、今回は現場で「次は9th、次は11thかな?」という感じで次々とテンションコードをコーラスで重ねて行ったのが凄かったですよね。

 

──興味深いレコーディング秘話をありがとうございました。最後に、マスタリングに関するエピソードはありますか?

 

寺尾 今回マスタリングを担当して頂いた内藤哲也さんは、2006年のGARO BOXの時もマスタリングを担当されたほか、大滝詠一さんのレコーディングやマスタリングでも知られる大ベテランの方なんです。若手のわがままもたくさん聴いて頂き、原音を大切にした暖かみのある素晴らしい音で仕上げて頂きました。そういえば2013年の10月、大滝さんにはスタジオでお会いする機会があって『時の魔法』をお渡ししたんです。ジャケットを眺めながら「凄いメンバーだね。(鈴木)茂も参加してるんだ。」って嬉しそうにされていたのが印象的でした。

レコーディングに参加して頂いたミュージシャンの皆さんをはじめ、このアルバムを応援して下さった大勢の方々には、改めて感謝の気持ちを伝えたいです。

誰もが、「マークさんが久々にやるなら、是非参加したい。」という風に言ってくださって。これはもう、マークさんの人柄ですよね。

皆さんの愛情やリスペクトの気持ちが結集して出来た、集大成がこのアルバムだと思います。2014年、ハイレゾで生まれ変わった『時の魔法』を是非、お楽しみください。

 

12/26~moraで『時の魔法』ハイレゾ配信開始!

 

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